NATO飛行場阻止技術コンテスト、ウクライナのAI自律化モジュールが3位

2026年9月9日 15:44

GPSや通信を利用しにくい環境で無人航空機の航法や目標認識を支援する、社名非公表のウクライナ企業製AI自律化モジュールが、NATOのイノベーション課題で3位に選ばれた。今後は追加評価を経て、実際の作戦環境を想定した試験や技術開発に進む可能性がある。今回の選出は調達決定ではなく、後続の開発・検証プロセスへの入口に当たる。

■飛行場の継続的な使用阻止を目指す課題

ウクライナ国防省が2026年9月7日に発表したところによると、ウクライナ企業が開発した人工知能(AI)ベースの自律化モジュールが、NATOの「Persistent Airfield Denial Innovation Challenge」で3位となった。日本語では、敵の飛行場運用を長期的に制限する技術を募る課題と位置付けられる。

この第19回NATOイノベーション課題は、NATO変革連合軍司令部(ACT)とNATO・ウクライナ共同分析・訓練・教育センター(JATEC)が共同で実施した。60件を超える応募があり、9チームが9月3日にポーランドのワルシャワで最終提案を行った。

課題の焦点は、飛行場を一度だけ使用不能にすることではなく、航空機の運用を継続的に難しくすることにあった。飛行場は滑走路だけでなく、燃料、弾薬、整備、航空防御、物流、指揮施設、地上支援設備などから構成される。滑走路が修復されたり、航空機や物資が別の場所に移されたりしても、航空作戦の再開を困難にする方法が求められた。

応募案には、GPSを利用できず電子戦の影響を受ける環境でも機能することや、操縦者から継続的な指示を受けられない場合に自律的な代替動作を行えることが求められた。費用、拡張性、電子戦への耐性、既存システムとの統合性、実用段階へ移行するまでの速さも審査対象となった。

■航法と目標認識にAIを利用

3位となったウクライナ企業は、電子戦下で運用される無人航空機向けのAI自律化システムを提案した。NATOとウクライナ国防省が公表した情報によると、耐妨害性を意識した航法、目標認識、複数のプラットフォームへの統合に重点を置いたシステムである。

ウクライナ国防省は、このモジュールについて、攻撃システムの自律性と精度を高めることが期待されると説明している。一方、使用するセンサー、位置推定アルゴリズム、画像認識モデル、具体的な誘導手順などの詳細は公表されていない。

NATOによると、コンテストには自律航法、機上センサー、代替的な測位方法、耐妨害通信、機体側で実行する任務機能などを組み合わせた提案が寄せられた。AIは航法やセンシング、任務管理、目標認識などに利用されていた。

各提案では、操縦者の指示と自律動作を異なる形で組み合わせており、人間による制御もシステムの構成要素として残されていた。通信が不安定になった場合に、機体がどの範囲まで自律的に任務を継続できるかが、実用面での評価点となった。

■チェコ、ポーランド、ウクライナの3チームが入賞

1位はチェコのLPP Holdingだった。同社は、GPSを利用できず電子戦の影響を受ける環境での運用を想定した、長距離の自律型無人攻撃システムを提案した。機上での自律動作と代替航法を組み合わせ、飛行場の複数の施設に対する精密な効果を拡張可能な形で提供する構想である。

2位はポーランドのSuperclusterだった。同チームの「StratoAIM」は、高高度気球を利用して自律滑空システムを配置し、遠方の飛行場に対する継続的な使用阻止を目指す。通常の発射設備への依存を抑えながら、低コストで規模を拡大できる構想としている。

3位のウクライナ企業は、電子戦環境で活動する無人航空機向けのAI自律化モジュールを提案した。開発企業の名称は公表されていない。

NATOは、上位案について、技術の新規性だけでなく、現実的な戦場環境で求められる効果を発揮できるかを評価したと説明している。短期間での実用化につながる道筋や、複数のシステムへ展開できる拡張性も重視された。

■ウクライナの作戦経験を評価に反映

今回の課題では、ウクライナの作戦経験が問題設定と評価に取り入れられた。ウクライナの専門家は、課題の作成、応募案の評価、電子戦下でシステムが耐えるべき条件の検討に参加した。

ウクライナ側の審査には、同国軍と国防省の代表者が加わった。参加者には、空軍司令部、無人システム部隊、国家親衛隊の特殊部隊「オメガ」の関係者が含まれる。NATO側では、連合軍司令部と北大西洋防衛イノベーション促進機関(DIANA)の代表者が評価を担当した。

JATEC司令官のChristian Brejner Ishøj少将は、ウクライナでの戦争から得られる教訓を通じて、現在の戦場から学び、迅速に適応し、実用的な解決策へ変える必要があるとの考えを示した。

飛行場を継続的に使用しにくくするという課題は、単一の目標を破壊するだけでなく、飛行場を一つのシステムとして捉える考え方に基づく。複数の無人システムによる連携、分散型の意思決定、代替的な投射方法、航法や通信を支える基盤技術など、異なる方向からの提案が集まった。

■NATOとウクライナを結ぶJATEC

JATECは2025年2月17日、ポーランドのブィドゴシュチュで正式に発足した。NATOの指揮機構に置かれた初のNATO・ウクライナ共同組織で、NATO変革連合軍最高司令部の傘下にある。

同センターは、ウクライナで得られた作戦上の知見をNATOの訓練、能力開発、相互運用性の向上に反映する役割を担う。今回もACTと協力し、実際の作戦上の需要を課題の要件や評価に取り込んだ。

ACTのマルチドメイン戦力開発担当副参謀長Gaugers Sandris准将は、ACTの役割について、作戦上の需要を具体的な行動へ移し、課題を抱える側と技術開発者を結び付けることだと説明した。有望な技術をNATOに関連する試験や実験へ進め、実用可能な能力への移行を速めるとしている。

■調達決定ではなく、追加評価への入口

NATOイノベーション課題での入賞は、製品の調達や部隊配備が決まったことを意味しない。NATOの発表では、入賞チームは追加評価を受けた後、ACTの実験基盤における開発、実験、試験へ進む可能性がある。JATECも、作戦に関連する条件下での検証に向けて関与を続ける。

ウクライナ国防省は、次の段階として入賞案の試験と実戦的な条件での評価を行い、有効性や、より広い規模で利用できる可能性を調べるとしている。具体的な試験日程や、ウクライナ製AIモジュールに対する資金提供の有無は公表されていない。

今回の課題に設定された資金は最大25万ユーロで、最大3チームに均等に配分される可能性がある。支払いは条件付きで、選出後の実演や試験を完了することなどが求められる。NATOは、利用可能な資金やNATOの需要への適合性によっては、入賞者に資金を交付しない場合があるとしている。

■自律性をめぐる議論との関係

AIや自律機能を備えた兵器システムについては、国際人道法、法的責任、人間が武力行使に果たす役割などをめぐり、国際的な議論が続いている。国連総会は2023年12月、致死性自律兵器システムに関する初の決議を採択し、各国や関係組織の見解を集約するよう国連事務総長に求めた。

今回のコンテストでは、GPSや通信が利用できない状況で、自律的な代替機能を備えることが要件とされた。一方、NATOの説明では、応募された構想には人間による制御が組み込まれ、操縦者の指示と自律動作の配分は提案ごとに異なっていた。

ウクライナ製モジュールが目標の選択や攻撃判断をどの範囲まで自律的に行うのかは、公表情報からは確認できない。このため、特定の自律兵器区分に該当するかを判断する材料は現時点では限られている。今後の評価では、技術的な性能だけでなく、運用方法や人間による監督の仕組みも重要な論点となる。

元記事: Ukrainian AI Targeting Module Advances to NATO Combat Testing After Jamming-Zone Win

関連記事

最新記事