ノルウェー政府系ファンド、米国債を約12.2兆円削減へ―社債やMBSに資金移す案
2026年9月9日 09:25
ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG)を運用するノルウェー銀行投資運用部門(NBIM)は、債券運用の基準となる指数で政府債の比率を引き下げ、米国債の保有を大幅に減らす案をノルウェー財務省に提出した。社債や住宅ローン担保証券(MBS)などに資金を振り向け、債券市場のリスクプレミアムをより幅広く取り込む。
運用資産が約2兆3000億ドル(約352兆6400億円)に上るGPFGは、世界最大の政府系ファンドである。NBIMは、債券のベンチマーク指数に占める政府債の比率を現在の70%から50%に引き下げるよう提言した。
提案に基づくと、債券ベンチマークに占める米国債の比率は34.1%から21.9%に低下する。ユーロ圏の政府債も16.8%から14.1%に下がる一方、日本国債は4.6%から7.4%に上昇する。
同基金は6月末時点で約2150億ドル(約32兆9600億円)の米国債を保有していた。ロイター通信の試算では、提案が実施されれば、米国債の保有額は約800億ドル(約12兆2600億円)減少する可能性がある。
ただ、今回の提案は米国資産全般からの撤退を意味しない。米国債から移す資金の一部は、米国の社債やMBSなどに振り向けられる見通しである。
NBIMは、債券ベンチマークに占める米国の非政府系債券の比率を16.2%から27.6%へ引き上げることを提案した。新たな指数には社債に加え、政府系住宅金融機関が保証するエージェンシーMBSや政府関連債を組み入れる。
ノルウェー中央銀行のイダ・ウォルデン・バッケ総裁とNBIMのニコライ・タンゲン最高経営責任者(CEO)は、政府債の比率を50%に引き下げても、市場混乱時に必要な流動性を十分に確保できると説明した。政府債以外への投資を増やすことで、信用リスクや期限前返済リスクなどに伴うプレミアムをより幅広く獲得できるとしている。
政府債市場では、インフレや政府の資金調達増加、高水準の金利を背景に、主要国の長期金利が上昇している。中東情勢に伴う原油高もインフレ圧力を強めており、米国の長期国債利回りは近年の高水準で推移している。
米国では8月、政府機関間債務を含む連邦政府の総債務残高が初めて40兆ドル(約6133兆円)を突破した。米財務省の8月18日時点の集計では、総債務残高は40兆470億ドル(約6140兆円)で、このうち市場などが保有する公衆保有債務は32兆2660億ドル(約4947兆円)、政府機関間債務は7兆7820億ドル(約1193兆円)だった。
金利上昇と債務残高の拡大により、米政府の利払い負担も増えている。2026会計年度の利払い費は8月時点で1兆ドル(約153兆円)を超える規模に達している。
NBIMは政府債の国別配分方法も変更するよう提案した。現在の指数は各国の国内総生産(GDP)を基準に配分比率を決めているが、これを債券の市場価値に応じた時価総額加重方式に切り替える。
NBIMによると、先進国で政府債務の拡大が広くみられるようになったため、GDP加重が財政リスクの分散に特に優れているとはいえなくなった。時価総額加重に切り替えれば、世界の債券市場の構成をより適切に反映し、指数の透明性や検証可能性も高まるとしている。
新しい債券指数は、世界の投資適格債を広く対象とするブルームバーグ・グローバル総合指数に近づける。新興国債券は引き続き対象外とし、物価連動国債は政府債の指数に残す方針である。
GPFGの資産構成は株式の比率が債券を大きく上回る。6月末時点で株式が運用資産の72.1%、債券が25.8%を占めた。残る資産は非上場不動産が1.6%、非上場の再生可能エネルギーインフラが0.5%だった。
2026年上半期の運用収益率は9.4%で、会計上の運用収益は1兆7530億ノルウェークローネとなった。株式の運用収益率は13.0%で、通信、テクノロジー、エネルギー分野が特に高い収益を上げた。債券の収益率は0.9%、政府債は0.5%だった。
同基金は6月末時点で、米宇宙開発企業スペースXの株式0.05%を保有しており、評価額は約12億2000万ドルだった。主要なテクノロジー株では、エヌビディアを約620億ドル、アップルを約520億ドル、アルファベットを約500億ドル保有していた。
一方、大型テクノロジー企業への投資集中は、基金全体のリスクを高めている。NBIMのストレステストでは、AI関連投資が期待した生産性向上につながらず、関連株の評価が大幅に調整するシナリオで、基金全体の価値が約35%減少する可能性が示された。CNBCは、この減少額を約7400億ドル(約113兆円)と報じている。
債券指数の変更案は今後、ノルウェー財務省が検討する。NBIMは、市場への影響や取引費用を抑えるため、新たな指数への移行は段階的に進めるべきだとしている。