サムスン・SKハイニックスのメモリ在庫が10日分未満―AI需要で供給逼迫の懸念

2026年9月8日 11:57

KB証券は9月7日、サムスン電子(Samsung Electronics)とSKハイニックス(SK hynix)のメモリ在庫が2026年第3四半期時点で10日分未満に低下したとの推計を示した。AIインフラ投資に伴い、HBMだけでなくサーバー向けDRAMやエンタープライズSSDの需要も拡大しており、2027年にはメモリ供給が一段と逼迫する可能性がある。

■メモリ在庫が10日分未満に

KB証券によると、Samsung ElectronicsとSK hynixのメモリ在庫は10日分を下回った。両社は、TrendForceが集計した2026年第2四半期のDRAM売上高で合計64.3%のシェアを占める。

KB証券リサーチ部門責任者のキム・ドンウォン氏は、単なる需要回復を超え、販売可能な製品そのものが不足する可能性が高まっていると指摘した。同社は2027年について、過去に例のない厳しい供給環境になる可能性があるとみている。

在庫日数は、メーカーが現在の出荷ペースを続けた場合に完成品在庫が何日分に相当するかを示す指標である。10日分未満という水準では、生産や物流に障害が生じた際に、在庫で影響を吸収できる余地が限られる。

9月7日の韓国株式市場では、SK hynix株が8.3%、Samsung Electronics株が5.7%上昇した。供給不足がメモリ価格やメーカーの収益を下支えするとの見方が買い材料になった。

■DRAM売上高は前四半期比59.5%増

TrendForceによると、2026年第2四半期の世界DRAM市場の売上高は1547億3000万ドル(約23兆8000億円、1ドル=154円換算)となり、前四半期から59.5%増加した。従来型DRAMの契約価格上昇に加え、AIサーバー向けのHBM3E、LPDDR5X、大容量RDIMMの出荷増加が市場を押し上げた。

Samsung ElectronicsのDRAM売上高は前四半期比63.4%増の609億8000万ドルとなり、市場シェア39.4%で首位だった。SK hynixは37.9%増の385億9000万ドルで、シェア24.9%の2位となった。

Micron Technologyは、供給能力を価格の高いサーバー向けDRAMへ重点的に振り向けた。売上高は65.5%増の360億ドルとなり、市場シェアは23.3%に上昇した。

成熟プロセスのDRAMを手掛ける台湾メーカーにも需要が流入した。Nanya Technologyの売上高は前四半期比68.3%増、Winbond Electronicsは75.8%増となった。主要メーカーが先端製品への移行を進めるなか、これまで十分に対応できなかった需要を取り込んだ。

■HBM4への生産移行が汎用DRAMを圧迫

HBMは複数のDRAMダイを垂直方向に積み重ね、TSV(シリコン貫通電極)で接続する高帯域幅メモリである。一般的なDRAMよりも複雑な製造工程と先端パッケージングを必要とするため、同じ容量を供給する場合でも、より多くの生産資源を使う。

KB証券は、HBM4の生産には従来型DRAMの約3倍に相当するウエハー生産能力が必要になると試算している。HBM4の増産に生産設備を振り向けるほど、サーバー、パソコン、スマートフォンなどに使われる汎用DRAMの供給余力は縮小しやすくなる。

HBM4には12層と16層の構成がある。Samsung Electronicsが2026年2月に量産と出荷を発表した製品は12層で、容量は24~36GBである。同社は今後、16層化によって最大48GBまで拡張する計画を示している。

Samsung ElectronicsはHBM4のデータ入出力端子をHBM3Eの1024本から2048本へ倍増させ、スタック当たりの帯域幅を高めた。SK hynixも2048本の端子を採用したHBM4について、2025年9月に開発完了と量産体制の準備を発表している。

こうしたHBMへの移行は、DRAMの前工程だけでなく、ダイの積層や接続、検査を担う先端パッケージング設備にも負荷をかける。供給能力を考える際には、ウエハー投入量だけでなく、製造歩留まりや後工程の処理能力も重要になる。

■AI需要はDDR5やSSDにも波及

現在の供給逼迫は、AI向けHBMだけに限られない。大規模言語モデルの学習や推論に使われるサーバー向けDDR5に加え、データセット、モデルのチェックポイント、検索拡張生成システムなどを保存するエンタープライズSSDの需要も増えている。

KB証券は、2027年のDRAMとNANDのビット需要成長率が、供給成長率を10ポイント以上上回ると予測している。また、世界のハイパースケーラーによるAIインフラ投資は、2027年に約1兆3000億ドルへ拡大するとの見通しを示した。

Samsung ElectronicsとSK hynixは2025年10月、OpenAIのAIインフラ構想「Stargate」に関連する戦略的提携を発表した。両社は、OpenAIの将来的な需要に対応するため、月間90万枚のDRAMウエハー投入を目標に生産能力を拡大する計画である。これは直ちに同量を供給する契約ではなく、需要拡大を前提とした生産目標として示されたものだ。

OpenAIは9月3日、新たなAIモデル「GPT-6 Astra」を発表した。複雑な複数段階の作業を処理するAIエージェントの利用が広がれば、演算処理を支えるHBM、サーバー向けDRAM、ストレージの需要がさらに増える可能性がある。

■供給拡大には時間が必要

メモリ各社は生産能力の拡大を進めているが、新設備が供給量へ本格的に寄与するまでには時間がかかる。

SK hynixは清州のM15Xで、HBMを含む次世代DRAMの生産能力を拡大している。同施設では2025年10月にクリーンルームが稼働し、2026年第1四半期にウエハー投入が始まった。

同社は清州に先端パッケージング施設「P&T7」も建設している。2026年4月に着工し、2027年末までの完成を目指す。P&T7はM15Xで製造したDRAMをHBMとして積層、パッケージング、検査する後工程拠点となる。

Samsung Electronicsについては、HBMの月間生産能力を2026年末までに約25万枚へ増やす計画が報じられている。既存設備の転換や平沢P4ラインの拡張が中心となる見通しだが、この数値は同社の正式な生産実績ではなく、サプライチェーン情報に基づく計画値である。

TrendForceは、主要DRAMメーカー3社が2026~2027年、ウエハー投入量の大幅な増加よりも先端プロセスへの移行を通じてビット供給量を増やすとみている。このため、設備投資が増えても、短期的な供給増加は限定的になる可能性がある。

■価格上昇は続くが製品ごとに差

TrendForceは、従来型DRAMの契約価格上昇率が2026年第3四半期には前四半期比13~18%へ鈍化すると予測している。PCやスマートフォンのメーカーが追加の値上げを受け入れにくくなっているほか、一部のサーバー需要が容量の小さいRDIMMへ移っているためである。

一方、供給各社が生産能力をサーバー向けやHBMへ優先的に配分していることから、民生機器向けDRAMでは強い価格上昇が続くとみられている。

AI向け需要が成長しても、設備投資の継続性やメモリ価格への顧客の抵抗、各社の増産ペースによって需給見通しは変化する。10日分未満という在庫推計は、現時点で供給余力が乏しいことを示す一方、在庫が直ちにゼロになることや、あらゆる種類のメモリが一律に不足することを意味するものではない。

■買い手には早めの需給確認が必要

AIインフラを構築するクラウド事業者、サーバー更新を計画する企業、パソコンや民生機器のメーカーにとって、メモリの供給状況と価格は調達計画を左右する重要な要素となる。

NVIDIAのVera RubinプラットフォームはHBM4を採用しており、2026年に本格的な生産段階へ入った。次世代AIシステムでHBM4の採用が進むにつれ、HBM向け生産能力と汎用DRAM向け能力の配分は引き続きメモリ市場の焦点となる。

企業は特定のリードタイムや見積有効期間を市場全体の固定値として扱わず、製品の種類、容量、契約規模、供給元ごとに最新の条件を確認する必要がある。新設備の立ち上げには時間を要するため、2027年分の大口調達では、供給元との早期協議や複数の調達経路の確保が重要になりそうだ。

元記事: Memory Runs Dry: Samsung and SK Hynix Drop Below 10-Day Supply as HBM4 Devours Capacity

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