NVIDIAのAI、非公式ながらIOI 2026の人間最高点を上回る535.4点

2026年9月6日 14:24

NVIDIAの研究チームは、競技プログラミング向けAIシステム「Nemotron-3-Ultra-CC」が、国際情報オリンピック(IOI)2026の問題で600点中535.4点を獲得したと報告した。大会に出場した人間の最高得点498.27点を上回るが、AIは公式参加者ではなく、評価もIOIの監督下では行われていない。大会の公式順位には含まれない非公式の評価結果として捉える必要がある。

■IOI 2026の人間最高点を上回る535.4点

NVIDIAの研究者は9月2日、競技プログラミング向け言語モデルの学習方法と評価結果をまとめた論文をarXivに公開した。論文によると、Nemotron-3-Ultra-CCは、ウズベキスタンのタシケントで8月9日から16日まで開催された第38回IOIの問題に取り組み、600点中535.4点を獲得した。

IOIの公式統計では、2026年大会の金メダル基準は361.12点、人間の最高得点は498.27点だった。NVIDIAが報告したスコアは人間最高点を約37.1点上回る。研究チームは、把握している限り、AIシステムがIOIの一大会の全問題を対象とした評価で最高得点の人間を上回った初の事例だとしている。

一方、論文は、このシステムがIOIの公式参加者ではなく、実行もIOIの監督下ではなかったことを明記している。535.4点は大会の公式順位に記録された競技成績ではなく、NVIDIAによる非公式かつ監督外の評価結果である。

■アルゴリズム設計から実装までを測るIOI

IOIは、中等教育段階の生徒を対象とする国際科学オリンピックの一つである。公式統計には2026年大会の参加者として375人が掲載されている。競技は2日間にわたり、各日5時間、合計6問の課題に取り組む形式で実施された。

参加者には問題の分析だけでなく、適切なアルゴリズムやデータ構造の設計、C++による実装、計算時間やメモリー制限への対応が求められる。問題は複数の部分問題に分かれており、通過したテストケースに応じて部分点が与えられるため、採点は単純な合否の二択ではない。

NVIDIAの論文によると、AIの評価では、人間の参加者と同じ時間、インターネット接続、提出回数に関する制約を採用した。インターネット接続は禁止し、ローカルでのコード実行を認め、各問題への提出は最大50回としたという。もっとも、IOIの運営組織が評価条件や実行過程を監督したものではないため、同じ制約を適用したとの説明も研究チームの報告に基づく。

■GenCorrectで解答の生成、評価、修正を反復

研究チームは、推論時に解答を改善する手法として「GenCorrect」を導入した。これは、最初に生成したプログラムをそのまま最終解答とせず、複数の候補を生成し、実行結果や採点フィードバックを基に評価、選別、修正を繰り返す手法である。

競技プログラミングでは、生成したコードを実行して出力を確認できるほか、提出した解答について自動採点システムから得点などのフィードバックを受け取れる。このため、候補を試しながら解答を改善する推論時の探索と組み合わせやすい。

GenCorrectの意義は、一度の生成で正解を出せるかだけでなく、検証結果を次の生成に反映する情報処理の流れにある。問題の理解、候補解の生成、コードの実行、結果の評価、修正というループを構成し、限られた時間と提出回数の中で、より高い得点を得られる解答を探す。

この構造は、結果を機械的に評価しやすい課題でAIの出力を改善する手掛かりになる。一方、評価基準が一意に定まらない文章作成や、判断に専門家の解釈を要する領域では、同じ形式のフィードバックループをそのまま構成できるわけではない。今回の結果は、明確な採点規則を持つ競技プログラミングに特化したシステムの性能を示したものだ。

■2万2000問で競技向けモデルを学習

NVIDIAは、2万2000問の競技プログラミング問題と合成した推論過程を使い、規模の異なる2種類のモデルを学習させた。

Nemotron-3-Nano-CCは、総パラメータ数300億、推論時に有効になるパラメータ数30億のモデルである。教師ありファインチューニング(SFT)に加え、正解や得点などの報酬を利用する強化学習(RL)を適用した。

Nemotron-3-Ultra-CCは、総パラメータ数5500億、推論時の有効パラメータ数550億で、教師ありファインチューニングのみを適用した。両モデルはMixture of Experts(MoE)と呼ばれる構造を採用し、入力に応じてモデル内の一部の専門的なネットワークを選択して動作させる。

研究チームは、問題の選別、合成推論過程の作成、教師ありファインチューニング、Nano-CCへの強化学習、GenCorrectによる推論時の探索を組み合わせ、競技プログラミング向けの専門化パイプラインを構築した。

Ultra-CCが教師ありファインチューニングだけで高得点を記録したことから、研究チームは、モデルの規模を拡大すると、高品質な訓練例からの教師あり学習だけでも強い性能を引き出せる可能性があるとみている。ただし、Nano-CCとUltra-CCではモデル規模や学習条件が異なるため、今回の結果だけから強化学習の効果や必要性を一般化することはできない。

■IOI 2025では小型モデルも金メダル基準超え

研究チームは、開発段階の評価としてIOI 2025の問題も使用した。Nano-CCの得点は、基礎モデルの130点から、後学習後には291点へ上昇した。さらにGenCorrectを加えると468点となり、同大会の金メダル基準438.3点を上回った。

Ultra-CCはIOI 2025の問題で502点を記録した。いずれの数値も過去の問題を使った評価であるため、2026年大会の開催中に新しい問題へ取り組んだ前向き評価とは条件が異なる。

IOI 2026では、研究チームが大会向けに構成したUltra-CCシステムを使用した。論文によると、推論環境には最大で760基のNVIDIA GB300 GPUが割り当てられた。これは今回の得点が、大規模なモデルだけでなく、多数の候補を生成して評価する相当量の推論時コンピューティングに支えられていたことを示している。

論文では、実験に使ったシステム全体の再現に必要な詳細や総計算コストがすべて示されているわけではない。異なる研究機関が同じ条件で結果を再現できるかは、今後の検証課題となる。

■公式記録ではなく研究チームによる評価

IOIでは提出コードが自動採点されるため、採点基準は比較的明確である。2026年大会の人間最高点498.27点と金メダル基準361.12点は公式統計で確認でき、NVIDIAはこれらの数値と自らの評価スコアを比較している。

しかし、AIの535.4点については、IOIが認定した成績ではない。実行時の操作、制約の適用、使用した計算資源、提出の選択過程をIOI側が監督した評価でもなく、問題ごとの得点内訳も論文では示されていない。

したがって、「AIがIOIで優勝した」「公式大会で人間を破った」と表現するのは正確ではない。現時点で確認できるのは、NVIDIAの研究チームが、IOI 2026と同様の時間や提出条件を設定した監督外の評価で、人間最高点を上回るスコアを報告したという点である。

それでも、開催中に公開された新しい問題を対象に、競技向けに専門化したAIが高得点を記録したとの報告は、競技プログラミングにおけるAIの能力向上を示す重要な研究結果となる。特に、コードを生成するだけでなく、自動評価から得られる情報を使って解答を反復的に改善する構成が中核となっている。

■競技プログラミング教育に問われる役割

IOI 2026では、AIの普及が競技や教育へ及ぼす影響も議論された。イタリア代表団のチームリーダーであるGiorgio AudritoはEuronewsに対し、学生がAIを利用できるようになったことで大会の運営方法も変化しており、IOIのコミュニティはまだ適応の途上にあると語った。

Audritoは、AIの出力を導き、修正するためにもプログラミング経験が必要だとの考えを示した。中国の金メダリストであるQiwen Xuも、AIが問題へ取り組む方法を自身の問題解決に役立てていると説明し、AIを超えて考える各自の推論が違いを生むと述べた。

競技プログラミングでは、問題の構造を読み取り、適切なアルゴリズムを選び、制約に収まる実装へ落とし込む能力が問われる。AIが同種の問題で高得点を取れるようになっても、アルゴリズムやデータ構造に関する基礎知識の必要性が直ちになくなるわけではない。むしろ、AIが生成した解法の妥当性や計算量を理解し、修正できる能力の重要性が高まる。

今回の結果は、AIがあらゆるプログラミング作業で人間を上回ったことを示すものではない。明確な問題文、時間とメモリーの制限、自動採点、反復可能なフィードバックを備えた競技環境で、大規模な計算資源と専門化した学習、推論時の探索を組み合わせたときに、どこまで得点を伸ばせるかを示した結果である。

同時に、競技成績を人間の分析能力やプログラミング能力の指標としてどう位置付けるかという課題も浮かび上がる。今後の教育では、コードを一から記述する技能に加え、問題の定式化、設計、検証、AIが生成した解答の評価といった能力をどのように育てるかが、より重要な論点となりそうだ。

元記事: NVIDIA AI Outscored Every Human at IOI 2026: How GenCorrect Made It Possible

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