サムスンの折りたたみ新技術「Flex Titanium」、薄型化を支えた日本企業との協業

2026年9月4日 23:31

サムスン電子は、折りたたみスマートフォン「Samsung Galaxy Z Fold8」シリーズに採用した新しいディスプレイ技術「Flex Titanium」の開発に、日本企業との協業が重要な役割を果たしたことを明らかにした。

Flex Titaniumは、チタン合金フィルムとチタンプレートを組み合わせ、折りたたみディスプレイの薄さ、柔軟性、強度を両立させる技術である。サムスンによると、開発は何度も頓挫しかけるほど難航し、社内では映画になぞらえて「プライベート・ライアン・プロジェクト」と呼ばれていたという。

■7世代の開発経験を新しい構造へ

サムスン電子でGalaxyの技術開発を担う副社長兼Core Component Technology Team副チーム長のヤン・ビョンドク氏は、2019年に発表した初代Galaxy Fold以来、折りたたみスマートフォンの開発に携わってきた。

ヤン氏は、折りたたみ端末ではディスプレイ、ヒンジ、バッテリー、放熱機構、本体内部の構造が相互に影響すると説明する。ディスプレイを薄くすれば端末内部に余裕が生まれる一方、折り曲げに必要な柔軟性や、画面を安定して支える強度も維持しなければならない。

サムスンは、過去7世代の実使用データ、衝撃試験、サービスデータなどを分析し、折り目の長期的な変形を抑えながら、より薄いディスプレイを実現する素材と構造を検討した。その結果、支持部材にチタンを用いるFlex Titaniumの開発に至った。

ヤン氏は2026年5月、ディスプレイ分野の学会であるSociety for Information DisplayのSpecial Recognition Awardを受賞している。9月に東京で開かれた取材会では、Flex Titaniumについて「私が関わった中で最も困難で、最も革新的なプロジェクトだった」と振り返った。

■薄さと強度を支える2つのチタン部材

Flex Titaniumは、OLEDパネルの下に配置するチタン合金フィルムと、その下でディスプレイモジュールを支えるチタンプレートで構成される。

チタン合金フィルムには、チタンにバナジウム、アルミニウム、クロムなどを加えた合金を採用した。サムスンによると、従来のポリマーフィルムと比べて機械的剛性が約20倍に高まる一方、厚さは人間の髪の毛の約3分の1に抑えられている。

チタンは強度と構造安定性に優れるが、折りたたみ端末に搭載できるほど薄く、均一な品質に加工することが課題だった。サムスンは世界各地のチタン関連企業と協議し、要求する素材と加工技術を実現できる企業として日本企業に行き着いたという。協業先の社名は公表していない。

開発は順調に進んだわけではなかった。ヤンによると、プロジェクトが何度も頓挫しかけるほど困難な局面に直面したが、日本企業と課題を一つずつ解決し、求めていた技術を実現した。

チタンプレートには、大きな穴を形成するウェットエッチングと、上部の微細なパターンを形成するレーザーカッティングを組み合わせた製造工程を採用した。折り曲げ部分に精密なマイクロパターンホールを設けることで、画面を支える強度と、繰り返し折り曲げるための柔軟性を両立させている。

ディスプレイモジュールと接着層の間に生じる空気の層も抑え、展開時に画面を安定して支えられる構造とした。チタン合金フィルムとチタンプレートを組み合わせることで、折り目を目立ちにくくするとともに、ディスプレイモジュールの厚さを従来比で約10%削減したという。

■薄型化を端末全体の設計に生かす

折りたたみ端末では、ディスプレイを薄くすることで生まれた空間を、バッテリーや放熱機構などに振り向けられる。サムスンはFlex Titaniumを単独の部材変更ではなく、ヒンジやバッテリーを含む端末全体の再設計に組み込んだ。

Samsung Galaxy Z Fold8は、展開時の厚さが約4.5mm、重量が約201gで、4,800mAhのバッテリーを搭載する。日本では2026年8月7日に発売され、SamsungオンラインショップにおけるSIMフリー版の価格は、256GBモデルが26万9,880円からとなっている。

上位モデルのSamsung Galaxy Z Fold8 Ultraは、展開時の厚さを約4.1mmに抑えながら、5,000mAhのバッテリーを搭載する。重量は約215gで、日本でのSIMフリー版は256GBモデルが29万6,780円から販売されている。

本体を薄くすると、閉じた端末に指をかけにくくなり、開きにくさにつながることもある。サムスンはヒンジ機構、マグネットの磁力、ディスプレイの張力を調整し、折り曲げ部の端に微細な溝を設けることで、端末を開く際の操作性を改善した。

Flex Titaniumが目指したのは、支持部材を強くするだけでなく、折りたたみ部分が開閉後に形状を回復しやすい構造をつくることである。サムスンは、長期間の使用に伴う折り目の変形を抑え、従来よりも平坦な表示面を維持しやすくしたとしている。

■シリコンカーボン負極でバッテリー容量を確保

Galaxy Z Fold8シリーズでは、限られた内部空間により大きな容量を収めるため、Galaxyスマートフォンとして初めてシリコンカーボン負極材を採用した。

一般的なリチウムイオン電池の負極には主にグラファイトが使われる。シリコンを組み合わせると、同じ体積でより多くのリチウムを保持できるため、電池のエネルギー密度を高めやすい。

Galaxy Z Fold8 Ultraのバッテリー容量は、前世代に当たるGalaxy Z Fold7の4,400mAhから5,000mAhへ増加した。ディスプレイモジュールの薄型化と高密度のバッテリーを組み合わせることで、端末を薄くしながら容量を増やしている。

サムスンは、シリコン粒子に薄いカーボンコーティングを施したほか、電解液、正極、セパレーターを含むセル全体を設計し直したとしている。シリコンは充放電に伴って体積が変化するため、その影響を抑えながら安全性と長期安定性を確保することが重要になる。

Galaxy Z Fold8とGalaxy Z Fold8 Ultraは、最大45Wの有線充電にも対応した。従来のGalaxy Z Foldシリーズが対応していた最大25Wから引き上げられている。充電時の熱を管理するため、電力を複数の経路に分けてセルへ送る設計も採用したという。

Tom's Guideの同一条件によるバッテリーテストでは、Galaxy Z Fold8 Ultraが14時間9分、Galaxy Z Fold8が12時間20分を記録した。実際の駆動時間は通信環境、画面の明るさ、アプリの利用状況などによって変わるが、同媒体のテストでは前世代から改善した。

■充電サイクルは前世代より少ない評価

EUの製品データベースに登録されたエネルギーラベルでは、Galaxy Z Fold8、Galaxy Z Fold8 Ultra、Galaxy Z Flip8のバッテリーは、容量が初期値の80%になるまでの耐久性能が1,200充電サイクルと評価されている。

Galaxy Z Fold7とGalaxy Z Flip7は2,000サイクルだったため、ラベル上の評価は前世代を下回る。1日に1回分の完全な充電サイクルを消費すると仮定した場合、1,200サイクルは約3年3カ月に相当する。ただし、実際の劣化速度は充電方法、温度、使用状況などによって異なる。

新世代でシリコンカーボン負極が採用された時期とサイクル評価の低下は重なるものの、EUの登録情報は評価が変わった理由を示していない。薄型化と容量増加の一方で、長期間使用する購入者にとっては確認しておきたい仕様となる。

■材料技術を競争力につなげるサムスン

折りたたみOLEDをめぐっては、BOE、TCL CSOT、Visionoxなどの中国メーカーが超薄型ガラスや無色ポリイミドを含む技術を発展させ、サムスンディスプレイとの差を縮めている。TechInsightsは、競争の焦点がヒンジや基本的な信頼性から、材料技術やディスプレイ積層構造へ広がっていると分析する。

Flex Titaniumは、コストだけでなく、材料と構造の設計でプレミアム市場における差別化を図る取り組みと位置付けられる。日本企業との協業で蓄積した加工技術も、その競争力を構成する要素になる。

一方、加工条件や製造ノウハウの詳細、協業先との知的財産の帰属は公表されていない。競合他社が同様の構造を採用する難易度や、この技術がどの程度の期間にわたって優位性を保つかは、今後の製品と量産動向によって明らかになる。

■Appleの折りたたみ端末参入も焦点に

Appleは米国時間2026年9月9日、日本時間10日午前2時から、新製品発表イベント「Surprise and shine.」を開催する。2026年9月1日にCEOへ就任したジョン・ターナスの下で初めて開かれる大規模な製品発表イベントとなる。

Appleは発表する製品を事前に明らかにしていないが、複数の報道では、同社初の折りたたみiPhoneが披露される可能性が伝えられている。「iPhone Ultra」と呼ばれるとの観測や、ブック型のデザイン、7.6~7.8インチ前後の内側ディスプレイ、電源ボタンに組み込んだTouch IDなどの予想が出ているものの、名称や仕様、価格はいずれも正式発表前の情報である。

ヤン氏は2026年7月、競合他社の折りたたみ市場参入について、「噂にはコメントできない」としたうえで、「他の競合が市場に参入すれば、市場が拡大し、認知度も高まるため大いに歓迎する」と述べた。

Appleが実際に折りたたみiPhoneを発表すれば、プレミアム折りたたみ市場では、ディスプレイの折り目、薄さ、耐久性、バッテリー容量、ソフトウェア体験をめぐる比較が一段と活発になるだろう。

元記事: Samsung Needed Japanese Partner to Build Galaxy Z Fold 8 Flex Titanium, and It Nearly Didn’t Work

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