欧州主要株価指数からVWが初の除外、AI・クラウド需要で成長するノキアが復帰

2026年9月3日 18:11

指数算出会社のSTOXXは、ユーロ圏の主要企業50社で構成する株価指数「EURO STOXX 50」の定期見直しで、フィンランドの通信機器大手ノキアとフランスのエネルギー大手エンジーを採用すると発表した。フォルクスワーゲン(VW)の優先株と、オランダの情報サービス大手ウォルターズ・クルワーは除外する。

変更は2026年9月21日の欧州市場取引開始時から有効となる。VWが同指数から外れるのは、1998年2月の算出開始以来初めてとなる。ノキアは2025年の定期見直しで除外されており、1年での復帰となる。

EURO STOXX 50は、ユーロ圏の主要企業を浮動株調整後の時価総額などに基づいて選ぶ指数である。連動するETFやインデックスファンドは、新しい構成に合わせてノキアとエンジーの組み入れ、VW優先株とウォルターズ・クルワーの売却を進めることになる。

■AI・クラウド需要を取り込むノキア

ノキアの株価はSTOXXの発表までの1年間で2倍以上となり、2026年6月には約18年ぶりの高値を付けた。携帯電話メーカーとして知られた同社は現在、通信事業者向け設備に加え、AIデータセンターやクラウド事業者向けの光ネットワーク、IPネットワークなどを成長分野に位置付けている。

2026年第2四半期の売上高は前年同期比8%増の48億1500万ユーロとなった。為替変動の影響を除いたベースでは9%増だった。ネットワークインフラストラクチャ部門の売上高は同12%増え、このうち光ネットワークは為替影響を除いて20%増、IPネットワークは16%増となった。

AI・クラウド関連顧客向けの売上高は前年同期比105%増加した。第2四半期の同顧客からの受注額は28億ユーロで、ノキアは約半分が今後12カ月間に売上高へ転換すると見込んでいる。第1四半期もAI・クラウド関連顧客向け売上高が49%増え、受注額は10億ユーロに達していた。

ノキアは、同社が事業を展開するAI・クラウド市場について、2025年から2028年まで年平均27%で成長すると予測している。従来予測の16%から引き上げたもので、ネットワークインフラストラクチャ部門の2026年の成長率見通しも12~14%としている。いずれも同社による市場予測と業績見通しである。

■AIデータセンターを支える光ネットワーク

生成AIの学習や推論に使われる大規模なコンピューティング環境では、多数の演算装置やデータセンター間で大量のデータを高速に転送する必要がある。この通信を支える光トランシーバー、コヒーレント光伝送装置、IPルーター、データセンター間接続が、ノキアの成長分野となっている。

高速光通信に使われる主要材料の一つが、化合物半導体のインジウムリン(InP)である。InPを用いた光半導体は、電気信号と光信号を変換する光トランシーバーなどに組み込まれる。

ノキアは2025年2月、米国の光通信機器メーカー、インフィネラの買収を完了した。買収によって光ネットワーク事業の規模を拡大するとともに、カリフォルニア州にあるInPウエハー製造拠点や、ペンシルベニア州の後工程・パッケージング拠点を取り込んだ。

同社はAIデータセンター向け光部品の需要拡大を受け、これらの生産能力を増強している。ジャスティン・ホタードCEOは第2四半期決算で、需要が引き続き強い一方、供給能力が業界の主要な制約になっていると説明した。

■VW、中国市場と収益性の改善が課題

VWはEURO STOXX 50の算出開始時から構成銘柄だったが、2026年に入って株価が約27%下落し、今回初めて除外されることになった。中国市場での販売減少、米国の関税負担、収益性の低下、大規模な事業再編が経営上の課題となっている。

VWグループの2026年上半期の世界販売台数は前年同期比6.3%減の約413万台だった。中国での販売台数は約26%減少した一方、中国を除く地域では全体として約2%増加した。

同期間の売上高は前年同期比0.2%減の1581億ユーロ、営業利益は11.6%減の59億3100万ユーロとなった。売上高営業利益率は前年同期の4.2%から3.8%へ低下した。

アルノ・アントリッツCFO兼COOは、3.8%の営業利益率について「依然として低すぎる」と述べ、コスト構造や工場の効率、技術開発、意思決定プロセスの改善を急ぐ必要があるとの認識を示した。

こうした事業環境を受け、VWは2026年通期の売上高見通しを、従来の前年比横ばいから3%増から、3%減から横ばいへ引き下げた。売上高営業利益率の見通しは4.0~5.5%を維持している。

■最大10万人規模の人員削減を検討

VWグループは、2030年までにドイツ国内で約5万人の雇用を削減する計画を進めている。この数字には、主力のフォルクスワーゲン・ブランドで労使が合意している約3万5000人の削減に加え、アウディ、ポルシェ、ソフトウェア部門CARIADなどで予定する削減が含まれる。

さらにオリバー・ブルーメCEOは2026年7月の社内文書で、競合企業と比べて約20%高いとするコスト差を縮小するには、理論上、世界で約5万人の追加削減が必要になる可能性があると説明した。

追加削減の人数は確定しておらず、現在はブランド、事業会社、地域ごとに必要性と実行可能性を精査している段階である。実施されれば、すでに計画している削減と合わせて最大約10万人規模となる可能性がある。

VWグループの2026年上半期のバッテリー式電気自動車の販売台数は、前年同期比5.8%減の43万8500台だった。一方、欧州では第2四半期の電気自動車の受注が前年同期比50%以上増えており、販売動向には地域差がみられる。

VWの除外後、EURO STOXX 50に残る自動車メーカーはBMW、メルセデス・ベンツ・グループ、フェラーリとなる。

■エンジーも新規採用

フランスのエネルギー大手エンジーもEURO STOXX 50に採用される。同社の株価はSTOXXの発表までの1年間に約40%上昇していた。

エンジーは発電、天然ガス、エネルギーサービス、再生可能エネルギーなどを手掛ける。AIデータセンターの拡大に伴う電力需要は、エネルギー企業にとって新たな事業機会の一つになっている。

同社は2026年8月、データセンター運営会社QTSと48メガワットの太陽光発電による電力購入契約を締結したと発表した。米テキサス州アービングにあるQTSのデータセンター事業向けに再生可能エネルギーを供給する契約である。

もっとも、STOXXの銘柄選定は浮動株調整後の時価総額など所定の基準に基づく。今回のエンジー採用を、個別のデータセンター契約だけに結びつけることはできない。

■ウォルターズ・クルワーは除外

ウォルターズ・クルワーは、法律、税務、会計、医療などの専門家向けに情報サービスやソフトウェアを提供している。同社株は、生成AIが知識集約型の情報サービスに与える影響を投資家が見極めようとするなかで下落し、今回の見直しで除外対象となった。

ノキアやエンジーがAI・クラウドの拡大に伴うネットワークや電力需要への事業接点を持つ一方、ウォルターズ・クルワーはAIを既存サービスへ組み込みながら、専門情報事業の価値を維持できるかが注目されている。

ただし、今回の入れ替えは各社の事業をAIの「勝者」と「敗者」に分類したものではなく、定期見直し時点の指数選定基準に基づく変更である。

■STOXX Europe 600でも構成銘柄を変更

STOXXは、より広範な欧州株指数「STOXX Europe 600」の構成銘柄も変更する。ギリシャ株が2026年4月に先進国市場へ再分類されたことを受け、ギリシャ国立銀行、アルファ銀行、ピレウス銀行、ユーロバンクなどが採用される。

一方、英国のスポーツ用品小売りJDスポーツ・ファッション、スウェーデンのアウトドア用品メーカーであるスーリー・グループ、ドイツの空港運営会社フラポートなどが除外される。これらの変更も9月21日の欧州市場取引開始時から有効となる。

■指数連動資金のリバランスが発生

EURO STOXX 50は浮動株調整後の時価総額で加重され、ETF、先物、オプション、仕組み商品などの基礎指数として利用されている。STOXXによると、同指数を基礎とするETFの運用資産は250億ユーロを超える。

指数に連動する運用商品は、9月21日の構成変更に合わせて保有銘柄を調整する。完全連動を目指すファンドでは、新規採用となるノキアとエンジーを買い入れ、除外されるVW優先株とウォルターズ・クルワーを売却する必要がある。

こうした需給は発効日前後の取引に影響する可能性があるが、株価は業績見通し、市場環境、投資家の事前予想など複数の要因で変動する。今回の見直しは、AI・クラウド需要を取り込むノキアの株価上昇と、中国市場や収益性の課題を抱えるVWの株価下落が、それぞれ指数構成に反映されたものとなった。

元記事: Volkswagen’s 28-Year Euro Stoxx 50 Tenure Ends as Nokia Returns on AI Infrastructure Revenue

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