SKハイニックス、米国初のHBM生産拠点を着工 2029年に量産、CEOはメモリ不足の長期化を予測
2026年9月1日 13:00
韓国のメモリ大手SKハイニックスは2026年8月27日、米インディアナ州ウェストラファイエットで、40億ドル(約6400億円、1ドル=160円換算)超を投じるHBM(広帯域メモリ)生産拠点の起工式を開いた。韓国で製造した先端ウェハーを米国へ運び、AI向けHBMの先進パッケージングとテストを行う。同社は2029年第3四半期に次世代製品「HBM4E」の量産を始める計画だ。
SKハイニックスのクァク・ノジョンCEOは、現在のメモリ不足が2030年末まで続くとの見方を示した。明確な市況下降の兆候は見られず、需要が鈍化する場合も、過去のメモリ市場に見られた急激な落ち込みではなく、緩やかな減速になると予想している。
■米国初のHBM生産拠点
新施設は、パデュー大学に隣接するパデュー・リサーチ・パークの約133.5エーカーの敷地に建設される。SKハイニックスにとって米国初のHBM生産拠点であり、先進パッケージングの生産ラインに加え、AI半導体に関する研究開発施設を備える。
HBMは、複数のDRAMダイを垂直方向に積み重ね、高速・大容量のデータ転送を可能にするメモリである。AIアクセラレーターでは、演算処理装置と大量のデータをやり取りするための主要部品として使われる。
インディアナ州の施設が担うのは、このうち先進パッケージングとテストを中心とする後工程だ。韓国の生産拠点で製造された先端ウェハーを受け入れ、積層や接続、検査を経て、米国の顧客向けHBM製品として出荷する。
半導体の前工程では、シリコンウェハー上に回路を形成して個々のメモリダイを製造する。後工程では、それらを切り分けて組み立て、接続、積層、封止、検査を行い、製品として使用できる状態に仕上げる。今回の投資によって米国内に設けられるのは、HBMの高度な後工程を担う生産能力である。
■2029年第3四半期にHBM4Eを量産
SKハイニックスは、2028年10月までに施設のクリーンルームを開設し、2029年第3四半期にHBM4Eの量産を始める計画だ。量産開始後は年間数十万枚規模のウェハーを処理できる体制を目指し、2030年までにインディアナ州を米国における主要なHBM生産拠点へ成長させるとしている。
HBM4Eは、HBM4に続く次世代製品として開発が進められている。SKハイニックスは2026年6月、12層構成のHBM4Eサンプルを出荷したと発表しており、量産に向けた製品開発と顧客評価を進めている。
米国商務省はCHIPSおよび科学法に基づき、このプロジェクトに最大4億5800万ドル(約733億円)の直接助成を決定している。施設の建設、運営、関連企業の活動を合わせて約7000人の直接・間接雇用を支え、本格稼働後は約1000人が施設で働く見通しだ。
■韓国の前工程と米国の後工程を連携
インディアナ州の施設は、SKハイニックスの韓国における製造基盤と一体的に運用される。DRAMウェハーを製造する前工程は韓国が担い、米国では先進パッケージングとテストを行う分業体制となる。
このため、今回の投資は韓国の生産拠点を米国へ移す計画ではなく、米国側にHBMの後工程能力を追加するものと位置付けられる。米国内の顧客に近い場所でパッケージングと検査を行えるようになり、AI向け半導体の供給網に新たな生産拠点が加わる。
SKハイニックスは韓国でも大規模な能力増強を進めている。同社取締役会は2026年8月、2031年までに総額約54兆3000億ウォンを投じ、龍仁のDRAM工場「Y2」と清州のNAND工場「M17」を建設する計画を承認した。内訳は龍仁が35兆2000億ウォン、清州が19兆1000億ウォンで、インディアナ州への投資と並行して韓国内の前工程能力も拡大する。
■AI需要を背景にHBM市場で首位
Counterpoint Researchによると、2026年第1四半期の世界HBM市場における売上高シェアは、SKハイニックスが58%で首位だった。Samsung ElectronicsとMicron Technologyはそれぞれ21%を占めた。
SKハイニックスは2025年の時点で、DRAM、NAND、HBMの2026年分の生産能力が顧客向けに確保されたと説明していた。AI向けサーバーへの投資拡大に伴い、HBMだけでなく、一般的なDRAMやデータ保存に使うNANDでも需給が引き締まっている。
クァクCEOは起工式後、現在のメモリ不足が2030年末まで続き、その後はAI産業が成長を続けるなかで需給が次第に均衡へ向かうとの見通しを示した。これは2030年以降の需要減少を予測したものではなく、深刻な供給不足が徐々に緩和されるという見方である。
■NVIDIAとの次世代メモリ開発
SKハイニックスとNVIDIAは2026年6月、AIインフラ向けの次世代メモリを共同開発する複数年の技術提携を発表した。両社は、NVIDIAのAIスーパーコンピューター、CPU、パーソナルAI、ロボティクス向けプラットフォームなどに対応するメモリの開発と供給拡大を進める。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは提携発表時、SKハイニックスを長年にわたる重要なパートナーと位置付け、AIファクトリー向け次世代メモリを共同開発していく考えを示した。
インディアナ州の新施設は、こうしたAI向けメモリ需要に米国内から対応する生産基盤となる。SKハイニックスは、米国でパッケージングと検査を行った次世代HBMを供給し、顧客との共同開発や製品評価を進める方針だ。
■パデュー大学と先進パッケージングを共同研究
施設には、顧客、大学、技術パートナーが利用できる先進パッケージングの研究開発テストベッドも設けられる。次世代のシステム統合やパッケージング技術を共同研究し、試作と評価を行う拠点として活用する。
SKハイニックスは起工式に合わせ、パデュー大学と研究協力に関する覚書を締結した。HBMを含む次世代の先進パッケージング技術を共同研究するとともに、米中西部の大学院生や技術者の採用、人材育成にも取り組む。
米国政府による資金支援、大学との研究協力、地域の部品・材料・装置企業との連携を組み合わせることで、同社はインディアナ州を単独の生産施設ではなく、AIメモリの研究開発と製造を結ぶ拠点へ発展させる考えだ。
■米国内に新設されるのはHBMの後工程
インディアナ州の施設が稼働すると、韓国で製造した先端ウェハーを使い、HBMのパッケージングとテストを米国内で実施できるようになる。米国初のHBM生産拠点という位置付けは、この高度な後工程を米国へ導入する点にある。
一方、HBMを構成するDRAMダイの前工程は、引き続き韓国の工場が担う。米国におけるメモリウェハーの前工程について、SKハイニックスは電力、水、人材、供給網などの条件を踏まえて投資の可能性を検討しているが、具体的な建設計画は発表していない。
米国政府はメモリを含む半導体製造能力の国内拡大を求めている。インディアナ州への投資は前工程までを米国内で完結させるものではないものの、これまで国外に集中していたHBMの先進パッケージング能力を米国に設け、AI半導体の供給網を分散する取り組みとなる。
元記事: SK Hynix Opens US HBM Era in Indiana as CEO Warns of Prolonged Memory Crunch