StripeとAdvent、PayPal買収を見送り―株価は12.7%急落、単独再建へ厳しい評価

2026年8月31日 00:26

決済大手Stripeと投資会社Advent InternationalによるPayPal Holdingsの買収構想が見送られたと、Bloomberg Newsなどが関係者の話として報じた。PayPal、Stripe、Adventはいずれも報道へのコメントを控えており、正式な買収契約が締結されていたわけではない。報道を受け、PayPal株は8月28日の米国市場で前日比12.71%安の53.66ドルで取引を終えた。

■530億ドル規模の買収案、価格面で折り合わず

StripeとAdventのコンソーシアムは、PayPalに1株当たり60.50ドル、総額約530億ドル(約8兆4800億円、1ドル=160円換算)の買収案を提示していたとされる。実現すれば、過去最大級のレバレッジド・バイアウトの一つになる可能性があった。

PayPalの取締役会は当初の提案を不十分とみていたほか、資金調達や規制当局の審査をめぐる課題も認識していたと報じられている。両者は条件の見直しを協議していたが、最終的に合意には至らなかった。

Bloomberg Newsは、StripeとAdventが現時点で買収を追求していないと報じた。一方で、状況が変われば両社が将来再び検討する可能性もあるとしており、PayPalが買収提案を正式に拒否したことや、交渉が恒久的に終了したことまでは確認されていない。

買収構想には当初、決済サービス「Square」などを手掛けるBlockも参加していたが、StripeとAdventが提案を行う前にコンソーシアムを離脱したと報じられている。

■PayPal株は12.71%安、買収観測による上昇分の一部を失う

PayPal株の8月27日の終値は61.47ドルだったが、買収見送りの報道後となる28日は53.73ドルで取引を開始し、一時52.62ドルまで下落した。終値は53.66ドルで、前日から7.81ドル、率にして12.71%下落した。

StripeとAdventによる買収案が報じられる前日の7月14日には47.37ドルだったため、28日の終値はなお同水準を上回っている。ただし、買収への期待と好調な第2四半期決算を背景に積み上がっていた上昇分の相当部分が失われた。

買収観測が薄れたことで、市場の焦点は、エンリケ・ロレスCEOが進めるPayPal単独での事業再建に移る。Mizuho SecuritiesはPayPalの目標株価を60ドルから51ドルへ、Loop Capitalは62ドルから50ドルへ引き下げ、それぞれ中立または保有相当の判断を維持した。

■第2四半期は増収、決済総額も10%増

PayPalの2026年第2四半期決算では、売上高が前年同期比5%増の86億8000万ドルとなった。総決済額は10%増の4864億ドル、非GAAPベースの1株当たり利益は1.38ドルだった。同社は通期の非GAAPベースの1株当たり利益見通しを約5.38ドルへ引き上げている。

一方、非GAAPベースの営業利益は前年同期比8%減の15億ドル、営業利益率は2.48ポイント低下して17.4%となった。決済取扱高と売上高が伸びる一方で、収益性の改善にはなお課題が残る内容だった。

PayPalは成長分野としてVenmoや決済処理サービスのBraintree、後払い決済などを重視している。第2四半期には、Venmoデビットカードの月間アクティブアカウント数が前年同期比50%超増加したほか、VenmoとBraintreeの決済額はいずれも10%台半ばの伸びとなった。

これに対し、PayPalブランドのオンライン決済額の伸びは為替変動の影響を除いて2%にとどまった。Apple PayやGoogle Payなどとの競争が続くなか、PayPalのチェックアウト機能を再び成長軌道に乗せられるかが重要になる。

■ロレスCEOが進める3事業体制とAI活用

PayPalは2026年3月1日付で、HPの元CEOでPayPal取締役も務めていたエンリケ・ロレス氏を社長兼CEOに任命した。取締役会は前任のアレックス・クリス氏の在任中について、変革と事業執行の速度が期待に沿わなかったと説明している。

4月には、事業を「チェックアウト・ソリューション&PayPal」「コンシューマー金融サービス&Venmo」「ペイメント・サービス&暗号資産」の3部門に再編した。意思決定を簡素化し、事業ごとの責任を明確にすることが狙いである。

あわせて、Anshu Bhardwaj氏を最高AI変革・簡素化責任者に任命した。PayPalは組織の簡素化やAIの導入、技術基盤の刷新を通じ、2~3年間で少なくとも15億ドルの年間換算ベースの総コスト削減を目指している。2026年中には、このうち4億ドルの削減を見込む。

削減分の一部は、チェックアウト、Venmo、決済処理、技術基盤などの成長分野へ再投資する方針だ。買収による株価の下支えがなくなったことで、今後はこうした施策が売上高、利益率、キャッシュフローの改善につながるかが直接評価される。

■VenmoとPYUSDも再建の重要分野に

Venmoは、PayPalが消費者向け金融サービスを拡大するうえで重要な事業に位置付けられている。PayPalは新たな3事業体制の下で、Venmoを送金サービスにとどまらない消費者向け金融プラットフォームへ発展させる方針を示している。

もっとも、個人間送金やデジタルウォレットの市場では、既存の決済事業者や大手テクノロジー企業による競争が続く。Mizuhoは、PayPalブランドのチェックアウト機能のコモディティ化、重要市場であるドイツでのシェア低下リスク、X MoneyによるVenmoへの競争圧力を主な懸念材料として挙げた。

暗号資産分野では、Paxos Trust Companyが発行する米ドル連動型ステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を展開している。PayPalは2026年3月、PayPalアカウントを通じてPYUSDを利用できる地域を世界70市場へ拡大した。

PYUSDや暗号資産関連事業は、Braintreeや中小企業向け決済処理などとともに「ペイメント・サービス&暗号資産」部門へ統合された。PayPalはこれらを単一の拡張可能な加盟店向けサービスとして展開する考えだ。

■買収再開や別の買い手は不透明

StripeとAdventが将来再び買収を検討する可能性は否定されていないが、現在進行中の交渉は確認されていない。PayPal、Stripe、Adventはいずれも買収見送りの報道についてコメントしておらず、今後の条件や時期を予測できる材料も示されていない。

別の買い手が現れる可能性についても、具体的な提案は確認されていない。当面のPayPal株は、新たな買収観測ではなく、ロレスCEOの再建策と各事業の成長性、収益性を基準に評価されることになる。

元記事: Stripe and Advent Drop PayPal Pursuit, Erasing $8 Billion in Market Cap Instantly

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