『ゴジラ-0.0』を科学と歴史から考察、再生能力・放射熱線・IMAX映像の共通点

2026年8月29日 17:46

東宝は2026年8月27日、山崎貴監督の映画『ゴジラ-0.0』のメイキング映像を公開した。『ゴジラ-1.0』から2年後の1949年を舞台に、敷島家が新たな災厄に直面する続編で、日本作品として初めて「Filmed for IMAX」プログラムを採用する。日本では11月3日、北米では11月6日に公開される予定だ。

撮影現場から見えてくるのは、単なる制作規模の拡大だけではない。垂直方向にも広がるIMAXの画面はゴジラの巨大さをどう伝えるのか。異常な再生能力や青い放射熱線には、現実の生物学や物理学のどのようなイメージを重ねられるのか。そして、1949年という時代設定は、シリーズが描いてきた核の記憶とどう結び付くのか。本作の映像表現と物語を、関連する科学研究や歴史的背景から読み解く。

■日本作品初の「Filmed for IMAX」

公開された映像では、山崎監督が荒廃した集落を思わせるセットやグリーンバックを用いた撮影に臨む様子、IMAX認証デジタルカメラなどが確認できる。『ゴジラ-0.0』は、IMAX認証カメラで撮影され、IMAXシアター向けに映像と音響を最適化する「Filmed for IMAX」を採用した初の日本作品となる。

IMAXは、通常の横長の映画とは異なり、劇場や上映方式によって垂直方向にも広い画面を使える。人間とゴジラの大きさの差や、建物の上まで立ち上がる姿を描くうえで、縦方向の情報量は重要な表現手段になる。ゴジラを単独で大きく映すだけでなく、人物や街並みと同じ画面に収め、その隔絶したスケールを一つの空間として見せられるからだ。

広い視野が人間の知覚に与える影響を調べた研究もある。2024年に学術誌『Nature Communications』へ掲載されたハーバード大学などの研究チームの論文では、特製の曲面スクリーンを使い、最大175度に及ぶ超広角映像を見せながら脳活動を測定した。その結果、広い視野を占める映像は、遠い周辺視野への選好を持つ内側皮質の領域を強く刺激した。一方、風景の認識に関わるとされる従来の領域では、画面サイズによる変化が比較的小さかった。

この研究が扱ったのはIMAX映画の鑑賞ではなく、超広角映像を見たときの視覚野の反応である。それでも、中心視野だけでなく周辺視野まで映像で覆うことが、狭い画面とは異なる神経活動を生むという結果は、大型スクリーンの没入感を考える手掛かりになる。ゴジラが画面の上方まで占める構図では、垂直方向に広い画面を使うことで、観客は周囲の建物や人物との比較からその大きさを捉えやすくなる。

IMAX撮影は、ゴジラの全身を大きく映すためだけの選択ではない。見上げる人物の視点、頭上を覆う巨体、垂直に立ち上る煙、破壊された建物の高さを同じ画面に配置することで、人間が巨大な存在と対峙する空間そのものを構成できる。本作におけるIMAXは、ゴジラの大きさを数値ではなく、人物との距離や視野の広がりとして体験させるための映像上の道具になりそうだ。

■巨大生物を支える映像と物語の発想

『ゴジラ-1.0』では、戦前から存在していた生物が、1946年にビキニ環礁で実施された米国の核実験「クロスロード作戦」に巻き込まれ、巨大化した存在としてゴジラが描かれた。攻撃を受けても急速に体を修復する再生能力も、物語上の大きな特徴だった。

現実の生物にも、失われた組織を再生する仕組みがある。例えばプラナリアは体の一部から失われた組織を再生でき、アホロートルは四肢などを再生する能力を持つ。生物によって仕組みは異なるが、細胞が損傷を認識し、増殖や分化を通じて組織を作り直すという過程が研究されている。

こうした現象は、損傷した体を再構築するという点で、『ゴジラ-1.0』の再生能力に通じる発想を持つ。作品では、生物が本来備えていた異常な再生能力と核実験による損傷が結び付き、巨大化と急速な修復を可能にする設定として描かれた。現実の再生生物学をそのまま当てはめるのではなく、破壊と再生が際限なく繰り返されるゴジラの身体を読み解く補助線になる。

一方、生物が同じ体形のまま巨大化すると、長さの増加に対して体積と質量がより急速に増える。これは「2乗3乗の法則」と呼ばれ、大型動物ほど体重を支える骨や筋肉に異なる構造が必要になる理由の一つである。陸上で活動する巨大な生物を映像として成立させるには、単に通常の動物を拡大するだけでなく、脚の太さや重心、歩行時の揺れ、地面への荷重を意識した造形と動きが必要になる。

山崎監督のゴジラは、俊敏な大型動物というより、圧倒的な質量が一歩ずつ空間を押しつぶしていく存在として描かれる。建物が足元で崩れ、歩行のたびに地面や周囲の構造物が反応する表現は、2乗3乗の法則を厳密に再現するものではないが、巨大な質量を観客に感じさせるための重要な手掛かりになる。

『ゴジラ-0.0』の舞台は、その出来事から2年後の1949年である。復興の途上で日常を取り戻しつつあった人々を新たな脅威が襲い、敷島家の物語が続く。前作の終盤ではゴジラの肉片が再生を始め、典子の首にも異変が現れた。続編では、破壊された肉体が再び形を取り戻すという設定が、登場人物の生存や戦後復興の物語とどのように重ねられるかが焦点の一つとなる。

■青い放射熱線が連想させる物理現象

『ゴジラ-1.0』の放射熱線は、背びれが順番にせり上がって青く発光した後に放たれ、着弾地点で大規模な爆発とキノコ雲を発生させる。従来の光線状の攻撃とは異なり、爆風や熱、放射性物質による汚染まで含めて描かれる点が特徴だった。

その青い発光から連想される物理現象の一つがチェレンコフ放射である。荷電粒子が、水などの媒質中で、その媒質中を進む光より速く移動したときに生じる発光で、原子炉の使用済み燃料プールなどで見られる青い光として知られている。

チェレンコフ放射は、水などの媒質中を進む荷電粒子によって生じる現象であり、空気中を進む放射熱線の発生機構をそのまま説明するものではない。作品でも、背びれの青い光や放射熱線がどのような物理過程で生まれるかは明示されていない。ここで重なるのは具体的な仕組みではなく、青い光が高エネルギー粒子や原子炉を想起させるという視覚的なイメージである。

放射熱線の着弾後に描かれるキノコ雲、爆風、火災、放射性物質による汚染も、核爆発の記憶を一連の映像として呼び起こす。青い発光から爆発後の汚染までを連続して見せることで、放射熱線は単なる怪獣の武器ではなく、ゴジラが背負ってきた核のモチーフを集約した表現になる。

背びれが順番に動き、エネルギーが頭部へ集まり、放射熱線として出力される一連の動作には、入力、蓄積、伝達、出力という機械的な構造も見いだせる。生物の身体でありながら巨大な装置のようにも見える演出が、ゴジラを動物とも兵器とも割り切れない存在にしている。

■1954年の『ゴジラ』から続く核の記憶

初代『ゴジラ』が日本で公開されたのは1954年11月3日で、連合国軍による占領が終わった1952年から2年後に当たる。占領期には原爆被害をめぐる報道や表現が検閲の対象となったが、その終了後には原爆を正面から扱う映画や記録も制作された。

初代『ゴジラ』が登場した背景には、広島と長崎への原爆投下だけでなく、公開年の1954年3月に起きた第五福竜丸事件がある。米国がビキニ環礁で実施した水爆実験によって、日本の漁船「第五福竜丸」の乗組員が放射性降下物を浴びた事件である。映画の冒頭でも、航行中の船が海上の閃光と炎に襲われる。

放射能を帯びたゴジラによる東京の破壊と、被災者が病院へ運ばれる場面は、怪獣による災害と核被害の記憶を重ね合わせた。ゴジラの荒れた皮膚や、都市を焼き尽くす放射火炎も、戦争と核兵器が人体や都市に残した傷を想起させる造形として読み継がれてきた。

米国で1956年に公開された『Godzilla, King of the Monsters!』は、レイモンド・バーが演じる記者の場面を加えて大幅に再編集され、原版にあった政治的、反核的な要素の一部が弱められた。後年、原版が海外でも広く上映されるようになったことで、初代作品が備えていた核時代への批判的な視点も改めて評価されている。

被爆者は戦後、健康被害に加えて就職や結婚などで差別を受けた。日本では1957年に原爆医療法が施行され、被爆者に対する健康診断や医療給付の制度が設けられた。その後も援護制度は段階的に拡充された。日本原水爆被害者団体協議会は、核兵器の廃絶を目指す活動と被爆体験の証言を評価され、2024年のノーベル平和賞を受賞した。

『ゴジラ-1.0』では、戦争を生き延びたことへの罪悪感を抱える敷島浩一と、東京でゴジラの攻撃に巻き込まれた大石典子を中心に、破壊後を生きる人々の物語が描かれた。怪獣の脅威だけでなく、残された人々が喪失を抱えながら日常を作り直す姿に焦点を当てた点が、初代作品から続く核と戦後の主題を現代の人物劇へとつないでいた。

『ゴジラ-0.0』の1949年は、日本が依然として連合国軍の占領下にあった時期であり、クロスロード作戦から3年後に当たる。復興が進み始めた社会へゴジラが再び現れる構図は、破壊から立ち直ろうとする人々と、消えずに残る戦争や核の影を再び交差させる。

■1949年を舞台に敷島家の物語が続く

『ゴジラ-0.0』は1949年を舞台とし、『ゴジラ-1.0』から2年後の敷島家を描く。神木隆之介が敷島浩一役、浜辺美波が敷島典子役を続投する。前作で大石典子だった人物は、続編では敷島典子として登場する。

続投が発表されているのは、野田健治役の吉岡秀隆、水島四郎役の山田裕貴、秋津淸治役の佐々木蔵之介、太田澄子役の安藤サクラ、堀田辰雄役の田中美央らである。新たに田中泯が、戦争による深い傷を抱える生物学者、村上寛治役で出演する。山崎監督は前作に続き、監督、脚本、VFXを担当する。

公式のあらすじでは、戦争によってゼロになり、ゴジラによってマイナスへ突き落とされた日本が、2年をかけて復興と日常を取り戻そうとするなか、新たな脅威に襲われると説明されている。前作で即席の家族を築いた浩一、典子、明子が、本作では敷島家として登場することも、物語の変化を示している。

戦災で生活基盤を失った人々が家族と日常を作り直す過程は、『ゴジラ-1.0』の中心的な主題だった。続編では、ようやく形を得た家族が再び災厄に直面する。ゴジラの身体的な再生と、人間社会や家族の再建という二つの「再生」が、どのような対照を形作るのかが注目される。

撮影は日本のほか、ノルウェーとニュージーランドでも行われたと報じられている。海外の風景が劇中でどの地域として使われるかは明らかになっていないが、日本国内とは異なる地形や広がりを持つロケーションは、物語の空間とゴジラのスケールを拡張する可能性がある。山岳や海岸、都市といった異なる環境を大型スクリーンでどう見せるかも、IMAX撮影の特徴が表れやすい部分となる。

■スピルバーグ作品から受けた影響

山崎監督はインタビューで、『ゴジラ-0.0』がスティーブン・スピルバーグをはじめとするSF映画の巨匠から影響を受けていると語っている。スピルバーグ監督の『ジョーズ』は、サメの全身を早い段階で見せず、視線や音、部分的な姿によって恐怖を積み重ねた作品として知られる。

怪獣をどこまで見せるか、人物や建物とどう対比させるかは、巨大さを伝えるうえで重要になる。IMAXの広い画面は、怪獣の全体像を示す場面だけでなく、人物の視点から見上げる構図や、破壊された空間の奥行きを描く場面にも利用できる。部分的な提示によって想像を促す演出と、大画面でスケールを示す演出は、場面に応じて組み合わせられる。

『ゴジラ-1.0』でも、ゴジラを最初から完全な姿で見せ続けるのではなく、海面から突き出す背びれ、船を追う巨大な頭部、建物の間から現れる足や尾といった断片を積み重ねていた。観客は人物と同じ限られた視点からゴジラを捉え、その全体像が現れたときに初めて圧倒的な大きさを実感する。

垂直方向にも広いIMAXの画面は、この段階的な見せ方にも利用できる。画面の下部に人物や街を置き、その視線の先にゴジラの巨体を立ち上げれば、観客は登場人物と同じ方向を見上げることになる。広い画面を情報で埋めるだけでなく、何を見せず、どの瞬間に全体像を示すかという演出が、巨大感を左右する。

2025年12月に東京で開かれたイベントでは、ジェームズ・キャメロン監督が山崎監督に、必要なら第2班監督を務めたいと申し出た。山崎監督は、キャメロン監督が撮れば素晴らしい場面になり、自分の撮る部分がなくなってしまうと冗談を交えて応じた。制作参加の発表ではないものの、山崎監督が前作で構築した映像表現への高い関心を示すやり取りとなった。

■日本では11月3日公開

『ゴジラ-0.0』は2026年11月3日に日本で公開される。11月3日は1954年の初代『ゴジラ』と2023年の『ゴジラ-1.0』が日本で公開された日で、「ゴジラの日」にも制定されている。北米ではGKIDSの配給により11月6日から広く劇場公開される予定だ。

IMAX上映の実施劇場や上映方式は地域と劇場によって異なる。本作が日本作品として初めて「Filmed for IMAX」を採用したことは、完成した映画を大画面に拡大して上映するだけでなく、撮影段階からIMAXシアターでの映像と音響を想定して制作されていることを意味する。

ゴジラの巨大さ、破壊された都市、そこで生きる人々を一つの画面にどう配置するのか。垂直方向まで広がる映像は、ゴジラの姿だけでなく、その足元にいる人間や復興途上の街を同時に見せる。そこで強調されるのは怪獣の威容だけではなく、圧倒的な災厄に直面する人間の小ささと、それでも生活を再建しようとする姿である。

異常な再生能力、核を想起させる青い放射熱線、戦後復興期という舞台、そして十二分な高さを持つスクリーン。『ゴジラ-0.0』のIMAX撮影は、こうした要素を単なる科学的な仕組みとして説明するのではなく、作品の人物、歴史、映像表現を一つの空間で結び付けるための選択として位置付けられる。

■注目ポイントQ&A

●『ゴジラ-0.0』の公開日はいつですか?

日本では2026年11月3日、北米では同年11月6日に公開予定です。日本でのIMAX上映の実施劇場や上映方式は、各劇場の案内を確認してください。

●「Filmed for IMAX」とは何ですか?

IMAX認証デジタルカメラなどを使って撮影し、IMAXシアターでの上映を想定して映像と音響を制作するプログラムです。『ゴジラ-0.0』は、このプログラムを採用した初の日本作品です。

●広い画面には脳科学的な効果があるのですか?

超広角映像を使った研究では、遠い周辺視野への選好を持つ脳領域が、広い視野を占める映像に反応することが示されています。IMAX映画を対象にした研究ではありませんが、周辺視野まで映像で覆う体験を考える手掛かりになります。

●放射熱線の青い光はチェレンコフ放射ですか?

作品内では、青い光の発生機構は明示されていません。チェレンコフ放射は、高エネルギー粒子や原子炉を想起させる青い発光という点で、放射熱線の映像表現に重ねられる現実の物理現象です。

●前作のどの登場人物が続投しますか?

敷島浩一役の神木隆之介、敷島典子役の浜辺美波に加え、吉岡秀隆、山田裕貴、佐々木蔵之介、安藤サクラ、田中美央らの続投が発表されています。田中泯が生物学者の村上寛治役で新たに出演します。

元記事: Godzilla Minus Zero BTS Footage: First Japanese IMAX Film Uses Brain Science

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