メタ、AIグラスの「録画後にLEDを隠す」抜け穴を修正 周囲への周知広告も開始

2026年8月29日 17:02

Meta(メタ)は2026年8月27日、同社のAIグラスで撮影中にキャプチャLEDが覆われると、カメラを停止するソフトウェアアップデートの配信を開始した。従来はLEDを塞いだ状態で撮影を始めることはできなかったが、撮影開始後に覆う手法が残っていた。Metaは同時に、周囲の人へLEDの意味を伝える広告キャンペーンも始め、技術的な対策と撮影表示の周知を並行して進めている。

対象となるRay-Ban Meta、Oakley Meta、Meta Glassesはいずれも日本で販売されている。今回の更新が各モデルや地域へ行き渡る詳しい日程は明らかにされていない。

■撮影開始後にLEDを覆う手法へ対処

MetaのAIグラスは、フレーム前面に「キャプチャLED」と呼ばれる白色ライトを備える。ギャラリーに保存する写真を撮影すると短く点滅し、動画の録画中は点滅を続けることで、周囲に撮影中であることを知らせる仕組みだ。

従来の保護機能では、キャプチャLEDが塞がれていることを検知すると、写真や動画の撮影を開始できないようになっていた。Metaは2026年7月にも対策を強化し、LEDが物理的に改造または破壊されたことを検知した場合にカメラを無効化する更新を実施している。

一方、この仕組みには、LEDが見える状態で録画を開始し、その後に指やテープなどで覆うという抜け道が残っていた。MetaのAR担当バイスプレジデントであるアレックス・ヒメル氏は8月27日のThreadsへの投稿で、「LEDが塞がれているとカメラは録画を開始しないが、録画を始めてから覆うことで回避しようとする人がいる」と説明した。

同氏によると、今回の更新後は録画中にライトが覆われた場合もカメラが停止する。これにより、LEDの状態確認が撮影開始時だけでなく、撮影中にも行われることになる。Metaは詳しい検知方式や確認間隔、更新を受け取るファームウェアのバージョン番号を公表していない。

■光を弱めるシールには別の課題

キャプチャLEDを完全に塞がず、外から見えにくい程度まで光を弱めるシールも販売されている。Engadgetは2026年7月、第2世代のRay-Ban Metaで市販のシールを試し、グラスの警告を作動させずにLEDを見えにくくできたと報じた。

同メディアが購入したキットは、12枚入りで16.99ドル(約2,700円、1ドル=160円換算)だった。下側の透明部品に設けられた切り欠きからセンサーへ光を通し、上側の黒いシールでLEDの光を隠す構造だったという。近距離や角度によっては光が見えるものの、屋外ではLEDを確認できなかったとしている。

これは、撮影中にLEDを完全に覆う手法とは異なる。8月27日に発表された更新が、センサーへ一部の光を通すシールにも有効かどうかは確認されていない。MetaはEngadgetに対し、こうした製品や行為は同社のポリシーに違反すると説明し、改ざんの検知とカメラの無効化を強化する方法を検討していると回答した。

Metaは、改ざんサービスを宣伝する広告や投稿、Marketplaceの出品を削除し、違反者にはアカウント停止を含む措置を取る方針も示している。ヒメル氏は、キャプチャLEDが撮影中であることを確実に伝えられるよう、今後も更新を続けるとしている。

■広告でキャプチャLEDの意味を周知

Metaはソフトウェア更新と同時に、キャプチャLEDが撮影中を示すことを周囲の人へ伝える広告キャンペーンも始めた。オンライン広告に加え、ロサンゼルスにはビルボードが設置されている。

ビルボードには、LEDが点灯したAIグラスとともに、カメラが瞬間を記録し、ライトが撮影中であることを周囲へ知らせるという趣旨のメッセージが掲げられている。着用者だけでなく周囲の人にも配慮して設計したとの説明も添えられている。

キャプチャLEDの視認性については、以前から欧州のデータ保護当局が問題を提起してきた。アイルランドのデータ保護委員会とイタリアのデータ保護当局は2021年、当時のRay-Ban Storiesについて、LEDが撮影を周囲へ知らせる有効な手段であることを示す十分な実地試験が提示されていないと指摘した。両当局はFacebook Irelandに対し、LEDの有効性を示すとともに、目立ちにくい撮影が起こり得ることを知らせる情報キャンペーンを実施するよう求めていた。

フランスのデータ保護機関CNILも2026年6月、スマートグラスの表示装置は届く範囲が限られるため、撮影される人への通知手段として十分ではないように見えるとの見解を示した。CNILは、着用者が撮影対象となる人のプライバシーを尊重し、必要に応じて同意を得る責任も強調している。

■研究が示す着用者と周囲の認識差

カメラ付きグラスを巡る研究でも、着用者と周囲の人では、必要と考えるプライバシー保護の水準が異なることが示されている。CHI 2026に採択された研究では、中国で525人を対象にした調査と20人へのペアインタビューを行い、12種類のプライバシー保護技術を評価した。

その結果、周囲の人は、着用者が提供しようとする水準よりも強い情報開示や保護を求める傾向にあり、特に慎重な扱いが必要な場面で差が拡大した。研究チームは、公共空間では目立ちすぎない表示、半公共空間では当事者間の意思確認、慎重な扱いが必要な場所では自動的な保護など、利用状況に応じて対策を変える考え方を提案している。

別のXR機器に関する研究でも、小さなLEDだけに依存する視覚的な表示は、注意が別の場所に向いている人や視覚に制約のある人には見落とされやすいと指摘された。この小規模な研究では、LEDに音声や端末への通知を組み合わせた複数の手段が、プライバシーへの配慮が必要な場面で好まれた。

こうした研究は、改ざんを防ぐことに加え、周囲の人が表示に気づき、その意味を理解できるようにするという情報処理上の共通課題を示している。今回の更新と広告キャンペーンは、それぞれ「表示を機能させること」と「表示の意味を伝えること」へ対応した取り組みと位置付けられる。

■無断撮影による被害も報告

スマートグラスを使って本人に知らせず撮影し、映像をSNSへ投稿する事例も報告されている。英国では、ディララと名乗る21歳の女性が勤務先での昼休みにスマートグラスで撮影され、会話の映像がTikTokへ投稿された。映像は130万回再生され、電話番号も映り込んでいたため、女性には多数の電話やメッセージが届いたという。

BBCの調査では、英国や米国、オーストラリアで、女性との会話を本人に知らせずスマートグラスで撮影し、交際指南などのコンテンツとして投稿する例が確認された。撮影された女性たちは、録画を示すライトには気づかなかったと証言している。

Metaは、改造したAIグラスを使って他人への嫌がらせを撮影し、Instagramへ投稿するアカウントを禁止する方針を示している。ただし、プラットフォーム上の投稿への対応と、撮影そのものを防ぐ端末側の対策は別の課題となる。

■施設単位で利用を制限する動き

米国では録音や撮影に関する規則が州や場所によって異なる。公共空間での映像撮影に対する保護は限られる一方、音声録音については、会話の全当事者から同意を得ることを求める州もある。

ニューヨーク州統一裁判所システムは2026年7月20日から、カメラやマイクなどを搭載し、映像または音声を記録できる眼鏡やヘッドウェアを、裁判所システムの施設内で禁止した。処方眼鏡かどうかを問わず、持参した場合は制服職員へ預けなければ施設に入れない。

この措置は、ニューヨーク州民権法や裁判所規則に反して、裁判手続きがひそかに記録されることを防ぐ目的で導入された。利用者、弁護士、証人、職員を含め、施設へ入るすべての人が対象となる。

AIグラスは外見が通常の眼鏡に近いため、撮影する動作がスマートフォンほど明確ではない。Metaの今回の更新は、キャプチャLEDを意図的に覆う一つの手法を塞ぐ。一方、広告キャンペーンや規制当局の指摘は、周囲の人が撮影表示に気づき、その意味を理解できる仕組みも必要であることを示している。

■注目ポイントQ&A

●今回のアップデートで何が変わりますか?

キャプチャLEDが見える状態で録画を開始し、途中から覆うと、カメラが停止するようになります。従来の撮影開始時の確認に加え、録画中もLEDの状態を確認する仕組みです。

●通常の利用にも影響がありますか?

LEDを覆わずに使用している限り、基本的な撮影操作は変わりません。ただし、録画中に指などでLEDを塞ぐと撮影が停止する可能性があります。Metaは検知方法や反応時間の詳細を公表していません。

●LEDを見えにくくする手法はすべて防げますか?

すべてに対応したとは確認されていません。センサーへ一部の光を通しながら、周囲からLEDを見えにくくするシールが報告されています。Metaは追加の検知対策を検討しています。

●なぜ広告キャンペーンも必要なのですか?

技術的にLEDを点灯させても、周囲の人がその意味を知らなければ撮影表示として十分に機能しないためです。広告は、白色のキャプチャLEDが写真や動画の撮影中を示すことを周知する取り組みです。

●日本でも対象製品は販売されていますか?

はい。Ray-Ban MetaとOakley Metaは2026年5月21日、Meta Glassesは同年8月26日に日本で販売が始まりました。ただし、今回の更新が日本の各モデルへ配信される詳しい時期は公表されていません。

元記事: Meta Closes Smart Glasses Recording-Light Bypass as Billboard Reveals Bystander Awareness Gap

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