米政権、半導体関税の対象拡大を検討か―ノートPC・ゲーム機・AIサーバーも浮上
2026年8月28日 16:46
米トランプ政権が、半導体に対する関税をノートPC、家庭用ゲーム機、データセンター向けサーバーなどの搭載製品へ広げる案を検討していると、米Politicoが2026年8月27日に報じた。米国内への製造投資に応じて無関税の輸入枠を設ける案や、現行制度の適用除外を見直す案も協議されているという。
検討は初期段階にあり、正式な政策として発表されたものではない。枠組みは今後数週間から数カ月のうちに大幅に変更される可能性があり、対象品目、税率、導入時期、除外措置の扱いはいずれも確定していない。
■半導体からノートPCやサーバーへの関税拡大案
Politicoは、政権内の協議に詳しい8人の関係者の話として、半導体だけでなく、それを組み込んだ幅広いテクノロジー製品を関税対象とする案が検討されていると伝えた。対象候補にはノートPC、家庭用ゲーム機、データセンター向けサーバーなどが含まれる。
2026年1月14日に署名された大統領布告11002号は、通商拡大法232条に基づき、NvidiaのH200やAMDのMI325Xなど一定の先端半導体に25%の追加関税を設定した。一方、米国内のデータセンター、研究開発、スタートアップ、修理、消費者向け用途など、一定の最終用途には適用除外が設けられた。
同布告は1月の措置を半導体政策の「第1段階」と位置付け、商務長官に対して、米国のデータセンターで使われる半導体市場などを追加調査し、7月1日までに報告するよう指示していた。今回報じられた協議は、こうした追加検討と並行して進められている。
新たな案では、関税の対象をチップ単体から搭載製品へ広げることに加え、1月に設けられた適用除外を次の措置でも維持するかが焦点となっている。Politicoによると、商務省関係者は非公開の協議で、現在の除外措置がそのまま引き継がれない可能性を示したという。
ロイターはPoliticoの報道内容を独自には確認できなかったとしている。ホワイトハウス当局者も、米国内への重要製造業の回帰は政権の優先課題だと説明する一方、政権が正式に発表していない関税に関する情報は確定した政策として扱うべきではないとの立場を示した。
■米国への投資と無関税輸入枠を連動させる案
協議では、外国企業による米国内の半導体製造投資と、無関税で輸入できる半導体の数量を連動させる仕組みも検討されている。Politicoが取材した関係者4人によると、ハワード・ラトニック商務長官は、米国での生産投資を増やした企業ほど大きな関税免除枠を得られる制度を支持しているという。
この考え方は、関税負担の軽減を米国内への投資を促す手段として利用するものだ。ただし、免税枠の具体的な算定基準や、投資額と輸入数量をどのように対応させるかは明らかになっていない。
業界側は、米国内の生産能力が需要を満たせる規模に達するまでには時間がかかるとして、関税の導入時期と国内生産の拡大時期のずれを懸念している。特にAIインフラ向けでは、先端半導体の需要が急増しているため、国内生産が整う前に輸入コストが上がれば、データセンター投資の負担が増す可能性がある。
TSMCは2026年7月、アリゾナ州への投資計画を総額2,650億ドルに拡大すると発表した。1ドル159円で換算すると約42兆1,350億円となる。同計画には合計10カ所の半導体工場、2カ所の先端パッケージング施設、研究開発拠点が含まれる。
アリゾナ州商務局の発表によると、計画された工場が完成した段階で、TSMCの2ナノメートル以降の先端プロセス生産能力の約30%がアリゾナ州に置かれる見込みだ。ただし、各施設の建設時期や稼働時期は一様ではなく、発表された投資額が直ちに同規模の生産能力へ転換されるわけではない。
台湾は現在も世界の最先端半導体生産の大部分を担っている。このため、米国内への投資規模だけを基準に無関税枠を設定した場合、米国企業が必要とする輸入量を十分にカバーできない可能性があると業界関係者は主張している。
■メモリ価格上昇が続くPC・ゲーム機市場
関税拡大が検討されている一方、PCやゲーム機の市場では、DRAMやNAND型フラッシュメモリなどの部品価格上昇がすでに製品価格と出荷見通しに影響している。
AIサーバー向けの広帯域メモリや大容量メモリに需要が集中するなか、PCやスマートフォンなどに使われるメモリの供給と価格にも変化が生じている。もっとも、製品価格はメモリだけで決まるものではなく、為替、輸送費、ほかの部品価格、関税、各社の販売戦略など複数の要因に左右される。
米国では、Microsoftが2026年8月1日からXbox Series Xの1TBディスクドライブ搭載モデルを799.99ドルへ値上げした。2020年の発売時価格499.99ドルと比べると約60%高い。任天堂も、米国におけるNintendo Switch 2の希望小売価格を9月1日から449.99ドルから499.99ドルへ改定すると発表している。
米調査会社Circanaが公表した2026年7月の米ゲーム市場データでは、ゲーム機の販売台数が前年同月比39%減少する一方、新品ゲーム機の平均販売価格は16%上昇して542ドルとなった。ハードウェア支出は29%減の2億8,200万ドルで、7月としては2020年以来の低水準だった。
ただし、前年同月にはNintendo Switch 2が発売直後の販売期にあったため、2026年7月の減少率には反動も含まれる。Circanaはこれに加えて、メモリなどの部品価格上昇に伴う本体価格の上昇が、PlayStation 5やXbox Seriesの販売ペースに影響しているとの見方を示している。
ノートPC市場でも、メモリ価格の上昇がコストを押し上げている。TrendForceは2025年11月時点で、2026年の世界ノートPC生産台数について、従来の前年比1.7%増から2.4%減へ見通しを引き下げた。その後もメモリの需給環境が悪化したため、同社は予測をさらに下方修正している。
完成品まで関税対象に含める政策が導入されれば、こうした部品コストとは別の価格上昇要因となる。ただし、最終的な価格への影響は、対象となる半導体や製品の範囲、税率、導入時期、適用除外、メーカーや小売店の負担方法によって異なる。
■過去の関税では米国内価格へ大きく転嫁
2018年に米国が導入した広範な輸入関税を分析した経済学者メアリー・アミティ、スティーブン・レディング、デービッド・ワインスタインの研究では、関税が課された輸入品の米国内価格に、関税分がほぼ完全に転嫁されていた。
研究は、負担の多くが外国の輸出企業による値下げではなく、米国の輸入業者や消費者に及んだと結論付けている。ただし、同研究が分析したのは2018年の複数の関税措置であり、今回検討されている半導体関税の価格転嫁率を直接予測したものではない。
半導体や搭載製品は、製造拠点、契約条件、利益率、代替調達の可能性が製品ごとに異なる。このため、新たな関税が導入された場合でも、税率と同じ割合で全製品の店頭価格が一律に上昇するとは限らない。一方、短期間で輸入品を米国製品へ切り替えにくい分野では、企業や消費者の負担が増える可能性がある。
■データセンターとAI投資も焦点に
データセンター向けの適用除外が見直されれば、AIの学習や推論、クラウドサービスに使われる先端半導体の調達コストにも影響が及ぶ可能性がある。
Amazon、Google、Metaなどが加盟するコンピュータ通信産業協会は、半導体供給網に追加コストと不確実性が生じれば、米国で進む大規模なAIインフラ投資に影響しかねないと主張している。同協会のジョナサン・マクヘイル氏は、現在のAIインフラへの投資規模を大陸横断鉄道の建設になぞらえ、供給網への負担増に懸念を示した。
一方、政権側は、半導体製造を米国内へ戻すことを経済安全保障上の重要課題と位置付けている。輸入への依存を抑え、米国内の製造能力を拡大する政策目的と、短期的な半導体需要やAI投資を両立できる制度設計が問われることになる。
■正式発表までは対象や時期が不確定
8月28日時点で、半導体関税の「第2段階」は正式に発表されていない。Politicoが報じた案には段階的な導入も含まれるが、開始時期や移行期間は決まっておらず、現在の適用除外が実際に撤廃されるかどうかも不明だ。
消費者向け機器が対象となった場合でも、すべてのノートPCやゲーム機が一律に課税されるとは限らない。対象となる半導体の定義、製品の原産国や輸入形態、最終用途に関する条件など、正式な制度の詳細を確認する必要がある。
企業にとっても、現段階で報道された案を確定した調達条件として扱うことはできない。正式な大統領措置や商務省の公表資料が出た段階で、対象品目、税率、適用日、既存契約への影響、除外申請の有無を精査することになる。
■注目ポイントQ&A
●半導体関税の対象が広がることは決まったのですか?
決まっていません。完成品への拡大や適用除外の見直しは政権内で検討されていると報じられた段階です。対象製品、税率、開始時期を含め、正式な発表はありません。
●ノートPCやゲーム機は25%値上がりしますか?
一律に25%値上がりするとは限りません。関税が導入された場合の店頭価格への影響は、課税対象、メーカーの負担、流通経路、為替、部品価格などによって変わります。過去の米国の関税では輸入価格への大きな転嫁が確認されていますが、今回の製品価格を直接予測するものではありません。
●投資連動型の無関税輸入枠とは何ですか?
外国企業による米国内の半導体製造投資に応じて、無関税で輸入できる半導体の数量を設定する構想です。具体的な計算方法は公表されておらず、正式に採用されるかどうかも決まっていません。
●データセンターも影響を受けますか?
現在の適用除外が見直され、データセンター向け半導体が新たな関税の対象になれば、AIやクラウド基盤の調達コストに影響する可能性があります。ただし、データセンター向けの除外が実際に撤廃されるかは未確定です。
●政策の正式な内容はどこで確認できますか?
ホワイトハウス、米商務省、連邦官報などの公式発表で確認できます。報道されている検討案は変更される可能性があるため、対象品目や発効日は正式文書で確認する必要があります。
元記事: Exemptions That Protected Your Laptop and Xbox May Not Survive Chip Tariff Phase Two