ヒョンデ、米国製サンタフェEREVを2027年投入へ―北米生産50万台増強、利益率9%超を目指す
2026年8月27日 16:36
韓国の現代自動車(ヒョンデ)は2026年8月26日、ソウルで「2026 CEOインベスターデイ」を開催し、2030年までの製品、収益、北米生産、バッテリー、自動運転、ロボティクス戦略を発表した。世界販売目標を555万台に据え置く一方、2030年の営業利益率目標を従来の8~9%から9%超へ引き上げた。
北米では年間生産能力を50万台増強し、部品の現地調達率を80%超へ高める。2027年上半期には、米アラバマ工場で生産する「サンタフェ EREV」を投入し、充電と給油を合わせた総航続距離600マイル(約966km)超を目指す。
■米関税が北米現地化を加速
ヒョンデのホセ・ムニョス社長兼CEOは米CNBCのインタビューで、関税が同社の現地化計画を加速させていると説明した。関税導入前から米国への生産移管や投資を進めていたが、貿易環境の変化によって計画の前倒しが促されたという。
韓国から米国へ輸入される自動車には関税負担が生じる一方、米国内で生産する車両は韓国製完成車に対する輸入関税の対象にならない。ヒョンデは北米の年間生産能力を2030年までに50万台増強し、完成車に使う部品の現地調達率を現在の約60%から80%超へ引き上げる。
米国ではアラバマ州のヒョンデ・モーター・マニュファクチャリング・アラバマと、ジョージア州のヒョンデ・モーター・グループ・メタプラント・アメリカを中心に生産体制を拡充する。サンタフェ EREVをアラバマ工場で生産する方針も、この現地化戦略の一環となる。
■2030年までに100車種以上を投入・刷新
ヒョンデは2030年までに世界で100車種以上を新たに投入または刷新する。このうち北米では58車種、韓国では49車種、欧州では41車種の投入・刷新を計画している。数値には全面改良車だけでなく、既存モデルの刷新も含まれる。
今後8カ月では世界市場に7車種を投入する予定で、次期「エラントラ」と「ツーソン」、小型電気自動車「IONIQ 3」などが含まれる。IONIQ 3は欧州向けに展開されるモデルで、現時点で米国への投入は公式に確認されていない。
ヒョンデはパワートレインを電気自動車だけに絞らず、ハイブリッド車、EREV、内燃機関車を含む複数の選択肢を市場や車種に応じて展開する。2030年には電動車が世界販売の60%を占める構成を目指している。
■サンタフェ EREVを2027年上半期に米国投入
ヒョンデ初のEREVは、SUV「サンタフェ」をベースに2027年上半期から生産する。アラバマ工場で製造し、充電済みのバッテリーとガソリン満タン時を合わせた総航続距離600マイル超を目標とする。
EREVはモーターで車輪を駆動し、搭載するエンジンを主に発電に利用する電動車だ。バッテリーの電力が減った場合には、エンジンで発電して走行を継続できる。ヒョンデは一般的なバッテリーEVの半分未満の容量のバッテリーと、高出力の電気駆動システムを組み合わせる方針を示している。
サンタフェ EREVには前後2基のモーターと、ヒョンデが独自開発した高出力バッテリーセルを採用する計画だ。具体的なエンジン排気量、バッテリー容量、米国での価格などは今回の公式発表では明らかにされていない。
高級車ブランドのジェネシスも2027年初めに初のEREVを投入し、総航続距離640マイル(約1030km)超を目指す。ヒョンデはEREVを、電気モーターによる走行特性と長距離移動の利便性を組み合わせる選択肢として位置付けている。
■独自開発セルと熱暴走の伝播抑制技術
ヒョンデはバッテリーパックや制御システムに加え、セルの独自開発を進める。新たな高出力セルについて、従来採用してきた高ニッケル系セルと比べて出力を2倍以上に高め、充電時間を40%短縮したとしている。これらは同社発表に基づく性能値であり、独立機関による比較結果は示されていない。
量販型バッテリーEVには中ニッケルNCMセルを活用し、同等水準の性能を保ちながらバッテリーコストを約30%削減することも目指す。クラウドと連携するバッテリー管理システムを導入し、2028年までにバッテリー寿命を20%延ばす目標も掲げた。
バッテリー安全技術では、セル間の熱の伝播を物理的な構造によって抑える「Thermal Runaway Protection」を発表した。角型とポーチ型のNCMセルを使った200回以上の試験を実施したといい、ジェネシスのフラッグシップ電動SUV「GV90」から採用する。
この技術は、あるセルで異常な発熱が起きた場合に、周辺セルへ熱が広がる連鎖を防ぐことを目的とする。ヒョンデは「熱伝播を遮断する」技術として説明しているが、車両やバッテリーのあらゆる火災を防止するという意味ではない。
■営業利益率9%超へ収益改善
ヒョンデは2030年の営業利益率目標を従来の8~9%から9%超へ引き上げた。売上原価率を3ポイント改善し、製品構成の高度化、現地生産、部品の現地調達、電動車のコスト低減などを通じて収益性を高める。
2026年上半期の売上高は95兆2000億ウォン、営業利益率は5.6%だった。第2四半期の売上高は前年同期比1.9%増の49兆2153億ウォンと四半期として過去最高を更新した一方、営業利益は20.8%減の2兆8509億ウォン、営業利益率は5.8%となった。
利益を押し下げた要因には、米国の関税、原材料費の上昇、販売奨励金などの費用、部品サプライヤーの火災に伴う生産混乱が含まれる。第2四半期の関税関連費用は約9000億ウォンに達した。ヒョンデは2026年通期の営業利益率見通しを6.3~7.3%に据え置いている。
2030年の目標達成には、現状から3ポイントを超える利益率の改善が必要となる。北米での現地生産拡大は関税負担の軽減につながり得るが、生産設備への投資、製品開発、工場立ち上げなどの費用も伴う。
■ハイブリッド車を含む複線戦略
ヒョンデは需要の変化に対応するため、ハイブリッド車の品ぞろえを拡大する。北米では2030年までにハイブリッド車を18車種以上へ増やし、電気自動車への移行速度が地域や顧客によって異なる状況に対応する。
2026年第2四半期の世界ハイブリッド車販売は18万7661台となり、四半期として過去最高を記録した。世界販売に占める比率は18.9%に上昇した。米国でも燃費とランニングコストを重視する需要を背景にハイブリッド車の販売が伸びている。
ヒョンデはバッテリーEV、EREV、ハイブリッド車を併存させることで、市場ごとの充電環境や規制、価格帯の違いに対応する。特定の方式へ一斉に切り替えるのではなく、複数のパワートレインを並行して展開する戦略となる。
■自動運転とAIデータセンターのロードマップ
自動運転分野では、社内組織「Atria AI」が2026年に韓国で実走行データの収集を開始する。2028年にはNVIDIAとの協業により、同社初の量産ソフトウェア定義車両にレベル2+の運転支援システムを搭載する計画だ。
レベル2+は業界で使われる通称であり、運転者が常時周囲を監視し、必要に応じて操作を引き継ぐことを前提とする。運転者を必要としない完全自動運転を意味するものではない。
AI開発を支えるため、5万基以上のGPUを備えた100メガワット規模のAIデータセンターを2029年から稼働させる。データ収集、モデル開発、車両への機能展開を段階的に進める方針だ。
自動運転配車サービス向けでは、Waymo仕様の「IONIQ 5」の納入を2026年第4四半期に開始する。今回の公式発表では供給開始時期が示されたが、最終的な総納入台数は明らかにされていない。
■Atlasの生産と工場配備を拡大
ロボティクス分野では、傘下のボストン・ダイナミクスが人型ロボット「Atlas」の商用化を進める。ヒョンデは販売、リース、保守などを含むロボティクス事業基盤を拡充し、2026年末までに関連組織を10倍の規模へ拡大する計画だ。
米国では2028年にロボット生産を開始し、当初の年間生産能力を3万台とする。Atlasは同年からヒョンデの製造拠点へ段階的に導入し、将来的に2万5000台以上の配備を目指す。
自動運転、ソフトウェア定義車両、ロボット、AIデータセンターはいずれも複数年にわたる計画であり、今後の開発、設備投資、生産立ち上げが進捗を左右する。ヒョンデは自動車メーカーの枠を広げ、車両とロボットを開発・生産・運用する「フィジカルAI企業」への転換を掲げている。
■注目ポイントQ&A
●EREVとプラグインハイブリッド車の違いは何ですか?
EREVは電気モーターで車輪を駆動し、搭載するエンジンを主に発電に使う車両です。一般的なプラグインハイブリッド車には、エンジンが車輪の駆動にも参加する方式があります。ただし、EREVやPHEVという名称の使い方や具体的な機構はメーカーや車種によって異なるため、個別モデルの仕様を確認する必要があります。
●サンタフェ EREVの航続距離は確定していますか?
ヒョンデは、充電済みのバッテリーとガソリン満タン時を合わせた総航続距離について、600マイル(約966km)超を目標にしています。認証機関による確定値ではなく、発売前に同社が示した目標値です。
●米国製のサンタフェ EREVには韓国製完成車への関税がかかりますか?
アラバマ工場で生産される車両は、韓国から米国へ輸入する完成車ではないため、韓国製完成車に対する輸入関税の対象にはなりません。ただし、現地生産によるコスト減少分が車両価格へ反映されるかどうかは明らかになっていません。
●ヒョンデの第2四半期の利益が減少した理由は何ですか?
米国の関税、原材料費や販売関連費用の増加、部品サプライヤーの火災による生産混乱などが重なったためです。売上高は前年同期比1.9%増えましたが、営業利益は20.8%減少しました。
●熱暴走保護技術はバッテリー火災を完全に防ぐものですか?
セル間に熱が伝わり、異常発熱が連鎖するのを抑えるための技術です。ヒョンデは200回以上の試験を行い、熱伝播を遮断する構造だと説明していますが、あらゆる原因による火災を完全に防ぐことを意味するものではありません。
元記事: Hyundai CEO Investor Day 2026: US-Built Santa Fe EREV Dodges 15% Tariff as Profit Falls 21%