【分析】中国の先端半導体、国内自給率は2035年に66%へ上昇か―SMICの歩留まり改善が焦点

2026年8月25日 23:37

ゴールドマン・サックスの長期予測によると、中国における7ナノメートル(nm)以下の先端プロセス向けウェハーの供給不足率は、2025年の92%から2035年には34%へ縮小する見通しだ。国内供給量が需要を上回るペースで増える一方、2035年時点でも需要の約3分の1を中国国内では賄えない計算となる。

この予測の中心となるのが、中国最大のファウンドリであるSMIC(中芯国際集成電路製造)の生産能力拡大と歩留まりの改善だ。ゴールドマン・サックスは、SMICの先端プロセスの歩留まりが2026年の23%から2030年に50%、2035年に75%へ上昇すると想定している。予測値を評価するうえでは、この改善が計画通り進むかが重要になる。

■2035年の国内供給は月間41万枚

ゴールドマン・サックスのモデルでは、中国における7nm以下のウェハー供給量は2025年から2035年まで年平均46%で増える。需要の年平均成長率は17%と見込まれており、供給の伸びが需要を大きく上回る想定だ。

その結果、2035年の国内供給量は月間41万枚に達する一方、需要は月間61万9,000枚になると予測されている。国内供給が需要に占める割合は約66%となり、約34%の不足が残る。

供給拡大を主導するのはSMICだ。モデルは、同社が2026年から2031年まで、先端プロセスの月産能力を毎年3万~5万枚ずつ増やし、2032年から2035年までは毎年2万枚ずつ追加すると想定している。

■SMICは四半期売上高30億ドルを突破

SMICの2026年第2四半期の売上高は、前年同期比36.1%増の30億560万ドル(約4,779億円、1ドル=159円換算)となり、四半期として初めて30億ドルを超えた。株主に帰属する利益は同261.7%増の4億7,920万ドル(約762億円)だった。

同四半期の工場全体の稼働率は93.7%で、前四半期の93.1%から上昇した。ウェハー出荷枚数の増加や平均販売価格の上昇に加え、関連会社や共同支配企業からの利益なども最終利益を押し上げた。

SMICは、AI関連需要の波及がCPUやGPUだけでなく、その周辺で使われる半導体にも広がっていると説明している。ただし、93.7%という数値はSMIC全体の稼働率であり、先端プロセスだけの稼働状況を示すものではない。

■EUVを使わない微細化を支える多重パターニング

7nm以下の先端プロセスでは、波長13.5nmの光を使う極端紫外線(EUV)露光装置が広く利用されている。EUV装置を商用供給しているのはオランダのASMLで、中国への出荷には2019年以降、オランダ政府の輸出許可が下りていない。

SMICは既存の深紫外線液浸露光装置(DUV)と多重パターニングを組み合わせ、7nmクラスの半導体を製造している。DUV液浸露光では波長193nmの光を使い、微細な配線を形成する層を複数回に分けて露光、成膜、エッチングすることで、1回の露光より細かな構造を作る。

この方法では、EUVを利用する工程より露光や加工の回数が増える。工程が複雑になるほど製造時間やコストが増し、各工程で生じる位置合わせ誤差や欠陥も歩留まりに影響する。

2026年6月に公表されたHuaweiの「Kirin 9030 Pro」の解析では、SMICのN+3プロセスの最小金属配線ピッチが32.5nmであることが確認された。一方、配線ピッチだけでプロセス全体の性能を比較することはできず、トランジスタ密度や電力効率、製造コスト、歩留まりなどを併せて見る必要がある。

■歩留まり75%への改善が予測の鍵

ゴールドマン・サックスは、SMICの先端プロセスの歩留まりが2026年の23%から2030年に50%、2035年に75%へ上昇すると予測している。歩留まりとは、製造したウェハーから仕様を満たす良品チップをどれだけ得られるかを示す指標だ。

米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所は、SMICが開発する5nmプロセスについて、歩留まりが20%程度と推定されているとの業界報道を紹介している。同報告書は、DUV液浸露光と複雑な多重パターニングを組み合わせる生産方法では、TSMCの同等プロセスに比べて製造コストが40~50%高くなるとの推計も取り上げている。

ゴールドマン・サックスの2035年の供給予測は、設備を増設するだけでなく、こうした初期段階の歩留まりを75%まで引き上げることを前提としている。改善が想定より遅れれば、同じ生産能力に投入したウェハーから得られる良品チップが減り、国内供給が需要の66%に達しない可能性がある。

一方、TSMCの7nmプロセスでは、チップの設計やダイサイズによっては歩留まりが90%を超えるとされる。歩留まりは製品設計や製造時期によって変わるため、SMICの先端プロセス全体を示す推計値と、特定の成熟したTSMCプロセスの数値は同一条件の比較ではない。

■中国では国産DUV装置の生産も始まる

中国では2026年、国産の液浸DUV露光装置の生産が始まったと報じられている。報道によると、上海の国有企業である上海芯上微装備科技集団が生産を主導し、2026年に約5台、2027年に約20台を製造する計画だ。

最初の装置は2026年中にSMIC、華虹半導体、長鑫存儲技術へ納入される見通しとされる。ただし、性能や信頼性の検証が引き続き必要で、顧客企業の量産ラインで安定して使えるようになるまでには時間を要する可能性がある。国産装置には日本から調達する重要部品も残っていると報じられている。

国産DUV装置の意義は、直ちに新しい微細化能力を獲得することより、輸入装置に依存してきた露光工程に国内の調達経路を作る点にある。SMICはすでにASML製DUV装置を使って7nmクラスの半導体を製造しており、国産装置にはまず、量産現場での精度、処理能力、稼働率を実証することが求められる。

■国産EUVは試作機の検証段階

ロイター通信は2025年12月、中国の研究チームが深圳で国産EUV装置の試作機を完成させ、試験を進めていると報じた。試作機はEUV光の生成には成功したが、報道時点では動作するチップを製造していなかった。

中国政府は試作機によるチップ製造を2028年の目標としているとされるが、関係者は2030年の方が現実的との見方を示している。光源の生成に加えて、高精度の光学系、ステージ制御、マスク、レジスト、汚染管理などを統合し、量産に必要な精度と処理能力を確保できるかが今後の焦点になる。

ゴールドマン・サックスの予測は、中国製EUV装置が2035年までに量産へ与える影響を織り込んでいない。したがって、不足率34%という数値は、SMICが主としてDUVを使った製造を続け、現在とおおむね同じ輸出規制環境が維持される場合のシナリオとして読む必要がある。

■輸出規制は能力差を残す一方、生産を止めてはいない

米国、日本、オランダによる輸出規制は、中国がASMLのEUV装置を導入することを阻んできた。一方、中国企業は規制強化前に取得したDUV液浸露光装置と多重パターニングを活用し、7nmクラスの半導体を生産している。

アメリカン・エンタープライズ研究所は、中国に導入済みのDUV装置群について、2026年に数百万個規模の先端ロジックダイを製造できる能力があると推計している。この評価は、輸出規制が製造方法とコストに制約を与えている一方、一定規模の先端半導体生産までは阻止していないことを示す。

米議会では2026年4月、半導体製造装置の輸出規制を同盟国間で調整し、規制対象装置の販売や保守を制限する超党派法案「MATCH法案」が提出された。これは審議中の法案であり、現時点で成立した規制ではない。今後の立法や米国、オランダ、日本の政策変更は、SMICが既存装置を維持、増強できるかに影響する可能性がある。

■不足率34%は確定値ではなく条件付きの予測

ゴールドマン・サックスのモデルが示すのは、中国が今後10年間で先端プロセスの供給能力を大幅に増やし、国内需要に対する不足を縮小するシナリオだ。その中心には、SMICによる継続的な設備増強と、歩留まりを23%から75%へ引き上げるという前提がある。

国産DUV装置の普及、EUV試作機の進展、輸出規制の変更、AI向け半導体需要の伸びは、いずれも2035年の需給を左右する要因となる。中国の先端半導体不足率が実際に34%まで縮小するかは、生産能力の増設だけでなく、量産工程から安定して良品を得る技術をどこまで高められるかにかかっている。

■注目ポイントQ&A

●中国はEUV露光装置なしで先端半導体を製造できますか?

SMICはDUV液浸露光装置と多重パターニングを組み合わせ、7nmクラスの半導体を製造しています。工程数が増えるため、EUVを使う工程と比べて製造コストや歩留まりの面で負担が大きくなります。

●SMICの先端プロセスの歩留まりはどの程度ですか?

ゴールドマン・サックスは2026年時点の先端プロセスの歩留まりを23%と置き、2030年に50%、2035年に75%へ改善すると予測しています。これらは同社の予測モデルに使われた数値であり、SMICが公式に開示した歩留まりではありません。

●中国は2035年までに先端半導体を自給できますか?

ゴールドマン・サックスのシナリオでは、2035年の国内供給量は需要の約66%です。SMICが想定通りに設備を増強し、歩留まりを75%まで改善した場合でも、需要の約34%を国内供給では満たせない計算です。

●国産DUVやEUV装置は予測を変える可能性がありますか?

国産DUV装置は生産が始まったと報じられていますが、量産ラインでの性能と信頼性の検証が必要です。国産EUV装置は試作機の試験段階にあり、報道時点ではチップを製造していません。これらの装置が量産に利用できる時期と規模によっては、2035年の供給見通しが変わる可能性があります。

元記事: Goldman Sees China 34% Short of Chip Self-Sufficiency in 2035; SMIC Yield Is Fragile Key

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