ベテルギウス大気に伴星候補の影響か、VLA・ALMAの7周波数観測で楕円率と軌道位相に相関

2026年8月25日 23:27

赤色超巨星ベテルギウスをVLAとアルマ望遠鏡(ALMA)で観測した研究チームが、電波で測定した大気の楕円率と、近接する伴星候補「シワルハ(Siwarha)」の推定軌道位相との間に相関を見いだした。結果は、伴星候補がベテルギウスの広がった大気を周期的に擾乱しているという解釈と整合する。

研究は22、44、107、136、224、338、485GHzの7周波数で得られた空間分解観測を組み合わせたもので、2021年から2026年までのデータを対象としている。各周波数で主に観測される大気の高さが異なるため、光球に近い領域から外側の大気まで、温度や形状が半径方向にどう変化するかを調べられる。

■7周波数で探るベテルギウスの拡張大気

MITヘイスタック観測所のリン・D・マシューズ氏らは、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)とALMAを用い、波長約1.36センチメートルから0.62ミリメートルまでの範囲でベテルギウスを観測した。論文は2026年8月にプレプリントとして公開され、『アストロノミカル・ジャーナル』への掲載が受理されている。

恒星大気から届く電波やサブミリ波の連続放射は、周波数によって光学的厚さが1程度になる代表的な領域が異なる。一般に、低い周波数では星の中心から遠い大気を、高い周波数では光球に近い領域を観測する。この性質を利用すれば、単一の平面像から立体構造を直接復元するのではなく、異なる高さに対応する大気の大きさ、形、平均輝度温度を比較できる。

研究チームは、22GHzと44GHzで測定した輝度温度が、2019年に記録された歴史的な低水準から上昇していることを確認した。2019年の観測は、ベテルギウスが2019年末から2020年初めにかけて大幅に暗くなった「大減光」の直前に行われていた。

今回の測定では、輝度温度は星の半径の約2.7倍付近で約3,500ケルビンとなり、約1.2倍付近では約2,220ケルビンまで低下した。これは、光球と彩層の間に温度が低くなる領域が存在するという従来の観測結果を裏付ける。電波で求めた輝度温度は、同程度の半径で紫外線観測から推定される温度より低く、比較的低温のプラズマと高温の彩層物質が同じ大気内に混在していることを示している。

また、電波スペクトル全体のスペクトル指数は1.35±0.03で、20倍を超える周波数範囲にわたって顕著な変化は確認されなかった。低周波数側で輝度温度が最大となる見かけの半径は、2016年以前の測定より外側へ移っており、大気の密度分布が変化した可能性も示された。

■大気の楕円率と伴星候補の軌道位相に相関

研究で特に注目されたのが、各時期の電波観測から求めたベテルギウス大気の楕円率と、シワルハの推定軌道位相との関係である。両者には相関が見られ、伴星候補が約2.3恒星半径の軌道を進むのに伴って、大気の形が周期的に変化しているという解釈と整合した。

今回の結果は、伴星候補の位置や、大気中の個々の構造を直接追跡したものではない。異なる時期と周波数で測定された大気の形状を、推定された軌道位相と比較した研究であり、伴星候補による擾乱を示す観測的な手掛かりとなる。

シワルハは、ベテルギウスに見られる約2,100日の長い周期の明るさの変化を説明する候補として提案されてきた。2026年1月には、ハッブル宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による約8年間の分光観測から、伴星候補の通過後にベテルギウスの外層大気で高密度のガスの航跡が形成されていることを示す結果が報告された。

この分光研究では、紫外線領域の1階電離鉄の吸収や、光学領域のマンガンの吸収が軌道位相に応じて変化していた。電波観測で得られた大気形状の変化は、こうしたガスの航跡の兆候とは異なる手法から、伴星候補と拡張大気との相互作用を読み解く手掛かりを提供する。

■VLTが捉えたベテルギウスBの候補

パリ天文台のミゲル・モンタルジェス氏らは、ESOの超大型望遠鏡(VLT)に搭載されたSPHEREを使い、2024年12月にベテルギウスの近くにある光源を撮影した。解析結果は2026年7月に『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』で発表された。

検出された光源はベテルギウスの中心から52.32±0.18ミリ秒角離れ、推定された伴星の位置と一致していた。検出 significance は解析手法により6.1シグマまたは5.1シグマだった。2つの星が同時期に形成されたと仮定した場合、光源は太陽の2.6~3.1倍の質量を持つ若い主系列星と推定される。

この画像はベテルギウスBの存在を示すこれまでで最も強い証拠だが、論文では重力的に結び付いた伴星であることを正式に確定するには、別の時期の観測が必要だとしている。次回の観測で光源が予測された軌道に沿って移動していれば、伴星という解釈をさらに強く支持できる。

■ALMAが捉えた高温領域と大気の非対称性

W・R・F・デント氏らによる別の研究では、ALMAの最長基線構成を使い、波長0.6~1.4ミリメートルでベテルギウスの内側の大気を観測した。最短波長での角分解能は約7ミリ秒角に達した。

サブミリ波の連続放射は、主にベテルギウスの半径の約1.1~1.3倍に広がる、光学的に厚い領域から生じていた。その平均的な温度は約2,300ケルビンで、北東側と南西側には周囲より高温の領域が見つかった。最も明るい領域は周囲より約800ケルビン高く、位置と強度は2015年の観測と比べて大きく変化していなかった。

この研究で比較された2回の観測の間隔は約7年である。高温領域の寿命はモデルの予測より長い可能性があり、研究チームは、深部の対流によって生じる衝撃波や、比較的安定した極域の対流との関係を検討している。

サブミリ波で見た大気の半径には最大で約±6%のずれがあり、弱い連続放射と一酸化ケイ素、一酸化炭素の不均一な放射は約2.5恒星半径まで広がっていた。一方、分子ガスの構造は2015年から大きく変化しており、恒星の回転を明確に示す兆候は得られなかった。

このALMA研究は、非対称な構造のすべてを伴星候補に帰属させてはいない。対流や衝撃波によって生じ得る大気固有の構造を詳しく示しており、マシューズ氏らによる軌道位相との比較を考える際の重要な基礎となる。

■連星相互作用を追う新たな手掛かり

ベテルギウスのような赤色超巨星では、対流、脈動、衝撃波、質量放出など複数の現象が大気構造に影響する。近接伴星が存在すれば、そこに周期的な重力作用や、拡張大気中を移動することによる擾乱が加わる。

今回の研究が示したのは、電波で測定した大気の楕円率が伴星候補の推定軌道位相とともに変化するという相関である。対流や脈動を含むほかの要因を排除して因果関係を確定した段階ではないものの、紫外線と光学分光で見つかったガスの航跡、VLTによる伴星候補の撮像と合わせ、ベテルギウスを連星系として調べるための新たな観測材料となる。

異なる周波数の電波観測には、明るい主星の近くにある伴星そのものを直接分離できない場合でも、大気の高さごとの温度や形状の変化を追跡できる利点がある。今後、軌道の異なる時期に同様の観測を重ねることで、伴星候補による周期的な影響と、ベテルギウス自身の不規則な大気変動とを詳しく比較できるようになる。

■注目ポイントQ&A

●7周波数の観測からベテルギウスの三次元構造を直接再現できるのですか?

直接的な三次元画像を作る観測ではありません。周波数ごとに主に放射が届く大気の高さが異なる性質を利用し、それぞれの領域の大きさ、形状、平均輝度温度を比較しています。

●伴星シワルハの存在は確定したのですか?

複数の観測が伴星の存在を強く支持していますが、VLTの撮像論文では「伴星候補」と位置付けられています。検出された光源がベテルギウスと重力的に結び付いていることの正式な確認には、別の時期の観測が必要です。

●電波観測は伴星が大気を変形させたことを証明したのですか?

電波で測定した大気の楕円率と伴星候補の推定軌道位相との相関を確認しました。これは伴星による周期的な擾乱と整合しますが、論文は大気形状の変化をすべて伴星だけで説明したものではありません。

●ベテルギウスの超新星の型が変わることは分かったのですか?

今回の観測から将来の超新星の型を判断することはできません。研究の中心は、現在のベテルギウス大気の温度、形状、非対称性と、伴星候補の軌道位相との関係です。

元記事: Betelgeuse Companion Star Deforming Its Chromosphere: Radio Maps Prove It From Inside

関連記事

最新記事