NanoAvionics、最大500kgの衛星バス「MP42D Gen-2」を発表―ITARフリーでISR需要に対応

2026年8月25日 23:27

ノルウェーの技術・防衛大手KONGSBERG傘下のKongsberg NanoAvionicsは、超小型衛星バス「MP42」ファミリーの第2世代を発表した。最上位モデル「MP42D Gen-2」は最大衛星質量500kg、ペイロード質量最大250kgに対応し、光学観測や合成開口レーダー(SAR)、信号情報収集など、要求水準の高いミッションを主な用途に据える。

同社はGen-2をITARフリーのプラットフォームとして展開する。最初の5機はすでに製造または顧客へ納入されており、関連する個別支援費用を含む契約額は合計1,000万ユーロを超える。打ち上げは2026年第4四半期と2027年に予定されている。

■最大500kgへ大型化したMP42D Gen-2

NanoAvionicsが2026年8月24日に発表したGen-2ファミリーは、MP42D、MP42、MP42Hで構成される。最大構成のMP42D Gen-2はESPA-Grande級のプラットフォームを採用し、最大衛星質量を500kg、搭載可能なペイロード質量を250kgまで拡大した。

同社によると、MP42D Gen-2は50cm未満の地上画素寸法を想定した高解像度の光学画像・動画、SAR観測、メートル級の中波赤外線熱画像といった用途に対応できる。フェーズドアレイアンテナなど消費電力の大きい通信ペイロードも対象としている。

高電力を必要とするペイロード向けに、同社が開発したキロワット級の太陽電池アレイと、複数キロワット級のバッテリーパックを用意する。光衛星間通信リンクも選択でき、同社発表では最大2.5Gbpsの通信、迅速なタスキングとデータ配信に対応する。

Gen-2ファミリーではこのほか、衛星の機動性、測位衛星システムに対するジャミング・スプーフィング耐性、放射線耐性、指向精度を強化した。ダウンリンクのデータレートは第1世代と比べて3倍超に向上したとしている。

■MP42も最大200kg、ペイロード100kgへ拡張

中位モデルのMP42 Gen-2は、最大衛星質量が従来の150kgから200kgへ増え、ペイロード質量は最大100kgとなった。ペイロード用の容積と搭載可能質量は、従来世代から50%以上増加したという。

設計上のミッション寿命も延長された。NanoAvionicsは、第1世代の高度600kmの太陽同期軌道における5年から、第2世代では高度750kmの太陽同期軌道における7年へ引き上げたとしている。実際の運用期間は軌道や構成、運用条件によって左右される。

Gen-2の基礎となった第1世代MP42ファミリーについて、同社はこれまでに10回打ち上げられ、累積の軌道上運用期間は16年を超え、障害は発生していないと説明している。

■ESPA-Grande級インターフェースを採用

MP42D Gen-2は、直径24インチの取り付け部を持つESPA-Grande級の構造インターフェースを採用する。ESPAは、複数の宇宙機を一つのロケットに搭載するために開発された標準化インターフェースで、ESPA-Grandeはより大型の宇宙機に対応する仕様だ。

標準化された機械インターフェースを利用できることは、対応する打ち上げアダプターとの統合作業を進めやすくする。一方、特定のロケットへの搭載可否は、機体構成、重心、振動条件、打ち上げ事業者の審査などを含むミッションごとの確認が必要となる。

■初期顧客はSatlantisやSuperSharp

最初に製造または納入された5機の顧客には、スペインの地球観測企業Satlantis、英国のSuperSharp、名称を公表していない東南アジアの商用事業者が含まれる。

SuperSharpの「BlueMoon」ミッションでは、展開式のHIBISCUS熱赤外線望遠鏡を搭載する。同社は約3mの地上画素寸法による熱赤外線データの提供を計画している。

追加のGen-2プラットフォームや衛星システムは、スペインのKreios Space、KONGSBERG、NATO加盟国および友好国の政府・防衛関係顧客からも受注したという。KONGSBERG向けの注文には、同社の海洋監視コンステレーション「N3X」に追加する3機が含まれる。

■「ITARフリー」が示す調達上の位置付け

ITARは、米国の武器輸出管理法に基づき、防衛物品や関連する技術データ、サービスなどを管理する規則である。規制対象となる防衛物品の輸出には、適用除外などに該当しない限り、米国国務省の承認が必要になる。

NanoAvionicsはGen-2ファミリーをITARフリーとしており、米国のITARに基づく輸出承認への依存を抑えたい商用・政府顧客に訴求する。ただし、ITARフリーという表示だけで、あらゆる輸出手続きが不要になるわけではない。実際の輸出や再移転には、搭載機器、技術、最終用途、仕向け国に応じて、米国外を含む関係国の輸出管理が適用される可能性がある。

NanoAvionicsのアトレ・ヴォロCEOは、Gen-2について、商用顧客と国家安全保障分野の顧客から寄せられる高度なミッション要求に対応するため開発したと説明した。主力のMP42Dは、案件総額と注文量の両面で提案パイプラインの大きな部分を占めているという。

実機の製造・納入が始まったGen-2は、従来のMP42を基礎に、搭載能力、電力、通信、寿命を引き上げた製品群となる。NanoAvionicsは大型化したMP42Dを軸に、地球観測、通信、ISRを含む商用・政府向け衛星市場での受注拡大を目指す。

■注目ポイントQ&A

●「500kg」はペイロードの重さですか?

いいえ。500kgはMP42D Gen-2の最大衛星質量です。顧客が搭載できるペイロードの最大質量は250kgと発表されています。

●「ITARフリー」にはどのような意味がありますか?

NanoAvionicsは、Gen-2を米国のITARに基づく輸出承認に依存しないプラットフォームとして提供しています。ただし、搭載機器や輸出先、最終用途によっては、ほかの輸出管理や各国の許可が必要になる場合があります。

●MP42D Gen-2はSAR専用の衛星バスですか?

専用ではありません。SARのほか、高解像度の光学観測、中波赤外線観測、信号情報収集、消費電力の大きい通信ペイロードなどが想定されています。

●5機はすでに宇宙で運用されていますか?

いいえ。NanoAvionicsの発表は、5機が製造または顧客へ納入されたというものです。これらの打ち上げは2026年第4四半期と2027年に予定されています。

元記事: NanoAvionics Delivers 500 kg Defense Bus: European ISR Gets ITAR-Free Upgrade

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