サンディスクなどメモリ関連株が上昇―Appleの中国製メモリ調達問題と939億ドル契約を材料視
2026年8月18日 20:59
米トランプ政権がAppleによる中国企業からのメモリ調達に反対する姿勢を示したことを受け、8月17日の米国市場ではサンディスクやマイクロン・テクノロジー、Western Digital、Seagate Technologyなど、メモリ・ストレージ関連株が上昇した。市場では、Appleの調達方針を巡る動きに加え、AI向けメモリ需要への期待や、サンディスクが公表した長期供給契約も買い材料として意識された。
サンディスクは顧客8社との長期供給契約について、最低価格に基づく想定収益が計939億ドル(約14兆9,300億円、1ドル=159円換算)になると公表した。政権の意向は現時点でAppleによる調達を法律上禁止するものではなく、サンディスクの契約も市況変動の影響を完全になくすものではないが、同社にとって中長期の需要と収益を見通しやすくする仕組みとなる。
■ラトニック商務長官、Appleの中国製メモリ調達に反対
ハワード・ラトニック米商務長官は、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、Appleが中国の長鑫存儲技術(CXMT)や長江存儲科技(YMTC)からメモリを調達することについて、トランプ政権は支持していないと述べた。
ラトニック氏は、メモリ不足には別の解決策が必要であり、米国企業が中国製メモリを使うことは望ましくないとの認識を示した。Appleにこの方針を伝えたかとの質問には、明確に伝えたと回答した。
Appleはメモリ不足への対応として調達先の拡大を検討し、CXMT製DRAMの評価やYMTCからの調達を模索していると報じられている。一方、Appleは中国製メモリの試験や採用を正式には確認していない。同社のサビ・カーンCOOは、供給不足への対応としてあらゆる選択肢を検討する必要があるとの趣旨を説明している。
YMTCは米商務省のエンティティ・リストに掲載されている。CXMTとYMTCは、米国防総省が国防権限法1260H条に基づいて公表する中国軍事関連企業のリストにも掲載されている。ただし、1260H条リストへの掲載だけで民間企業による通常の商取引が一律に禁止されるわけではなく、エンティティ・リストとも規制上の効果は異なる。
■超党派の上院議員7人がAppleに回答を要求
米上院の超党派議員7人は7月29日付の書簡で、CXMTまたはYMTCが製造したメモリを、販売地域を問わずApple製品に使用しないと確約するようティム・クックCEOに求めた。書簡は7月30日に公表され、回答期限は8月21日とされている。
議員らは、両社製品の試験や認定の状況、認定過程で共有した技術情報、米国や同盟国の既存メーカーに増産や優先供給を求めたかどうかについても回答を求めている。
この書簡とラトニック氏の発言は、Appleに対する政治的圧力を強めるものだが、現時点で同社による既製メモリの購入を全面的に禁止する命令が出たわけではない。今後の調達方針は、Appleの判断に加え、輸出管理や政府調達規制の適用関係にも左右される。
■サンディスクが進める長期契約「NBM」
サンディスクは、データセンターおよびエッジ分野の顧客8社と計10件の「New Business Model(NBM)」契約を締結した。契約期間の加重平均は4年を超え、一部は最長5年に及ぶ。
同社によると、契約価格の下限を基準に算定した最低想定収益は総額939億ドルとなる。2026年7月3日時点を基準とする残存履行義務は911億ドルで、契約の一部には現金預託や金融商品など、計165億ドル(約2兆6,200億円)の財務的保証が付いている。
NBMでは、サンディスクが一定量のNANDフラッシュを供給し、顧客側も契約数量を購入する。価格には固定部分と変動部分があり、変動価格には下限と上限が設定される。スポット価格が下落した局面でも、契約対象分について一定の価格水準を確保しやすくする設計だ。
同社は、NBM契約が2027年度の出荷ビット数の半分超、2028年度には約3分の2を占めると見込んでいる。市場価格に連動する販売の割合が縮小するため、従来より需要と収益の見通しを立てやすくなる。
一方、939億ドルは現時点で計上済みの売上高ではなく、契約価格の下限に基づく将来の想定収益である。実際の売上計上は製品の供給や契約履行に伴って行われ、顧客の信用リスクや契約条件の変更といった不確実性も残る。
■2026年度第4四半期は価格上昇が増収を主導
サンディスクの2026年度第4四半期売上高は89億6,500万ドル(約1兆4,300億円)となり、前四半期比51%、前年同期比372%増加した。非GAAPベースの希薄化後1株利益は39.25ドルだった。
同社によると、前四半期からの増収分の約3分の1は販売数量の増加、約3分の2は価格上昇によるものだった。2026年度通期の売上高は202億4,800万ドルで、前年度比175%増となった。
2027年度第1四半期については、売上高を103億~108億ドル、非GAAPベースの希薄化後1株利益を44~46ドルと予想している。取締役会は追加で140億ドルの自社株買い枠を承認し、残る取得枠は計155億ドルとなった。ただし、これは買い付けの完了額ではなく、将来の取得を認める上限である。
8月13日のインベスターデイでは、2028~2030年度の長期財務モデルとして、売上高の年平均成長率を10%台半ばから後半、非GAAP粗利益率を約80%、調整後営業利益率を約75%、調整後フリーキャッシュフロー利益率を約50%とする目標も示した。これらは同社の計画であり、将来の実績を保証するものではない。
■AI推論がNAND需要の新たな焦点に
サンディスクがデータセンター向けNAND需要の拡大要因として挙げているのが、生成AIの推論処理で使われるKVキャッシュである。KVキャッシュは、大規模言語モデルが処理中に生成したキーとバリューの情報を保持し、同じ計算の繰り返しを減らす仕組みだ。
推論の規模や保持するコンテキストが大きくなると、KVキャッシュに必要な記憶容量も増える。高速なDRAMだけですべてを保持するのではなく、容量とコストの異なるSSDを組み合わせるメモリ階層が検討されており、NANDフラッシュの用途を広げる可能性がある。
サンディスクは、KVキャッシュに関連する追加のNAND需要が2027年に75~100エクサバイトに達し、2028年にはさらに拡大する可能性があると試算している。これは同社の需要予測であり、AI推論の普及、システム構成、SSDの採用方法によって実際の需要は変わり得る。
技術面では、サンディスクとキオクシアが3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」を共同開発している。サンディスクは第10世代技術について、第8世代と比べてビット密度を約60%高めるとしており、AIやデータ集約型用途に向けた高密度化を進めている。
■長期契約はNAND市況の循環をどこまで緩和できるか
NANDフラッシュ市場は、需要の増減と各社の設備投資によって価格が大きく変動してきた。AIデータセンター向け需要が拡大しても、将来の増産や技術移行によって供給環境が変わる可能性はある。
サンディスクのNBMは、こうした市況変動に対し、複数年の購入数量と価格の下限を契約で定める取り組みである。出荷の過半を契約対象にすることで、スポット市場への依存度を抑える点に特徴がある。
ただし、市況連動部分や契約対象外の出荷は引き続き価格変動の影響を受ける。NBMが利益率の安定にどこまで寄与するかは、契約の履行状況と、NAND価格が下落する局面での運用を見極める必要がある。
Appleを巡る政治的な動きは、米国や同盟国のメモリメーカーにとって競争環境上の追い風になり得る。一方、サンディスクの中長期的な業績を左右する中心的な要素は、Apple一社の調達判断ではなく、AIデータセンター向けNAND需要、製品競争力、長期契約の履行、市場全体の供給能力である。
■注目ポイントQ&A
●米政権の方針でAppleは中国製メモリを購入できなくなったのですか?
現時点で、Appleによる中国製の既製メモリ購入を全面的に禁止する命令が出たことは確認されていません。ラトニック商務長官は政権の反対姿勢を明確にしましたが、実際の取引には製品の仕様、技術情報の共有、輸出管理規則などが関係します。
●939億ドルはサンディスクがすでに確保した売上高ですか?
いいえ。契約価格の下限に基づいて同社が算定した、複数年契約からの最低想定収益です。売上高は製品の供給と契約履行に応じて将来計上されます。
●NBMはNAND価格の下落リスクをなくすのですか?
完全になくすものではありません。契約対象分について価格下落の影響を抑え、収益の予測可能性を高める仕組みですが、契約外の出荷、市況連動部分、顧客の信用や契約履行に関するリスクは残ります。
●Appleの調達問題はサンディスクに直接影響しますか?
中国製メモリの利用が制限されれば、米国や同盟国の供給企業に需要が向かう可能性があります。ただし、Appleが検討していると報じられたDRAMとNANDでは供給企業が異なり、サンディスクへの直接的な効果を確定的に見積もることはできません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。
元記事: SanDisk Surges: Lutnick Bars Apple From Chinese Memory, NBM Locks $93.9B Floor