レノボのインフラ売上98%増受けHPE株が一時8%上昇、ジュニパー統合に高まる期待
2026年8月15日 15:20
レノボ・グループ(Lenovo Group)が発表した過去最高の四半期決算を受け、米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の株価が一時8%以上上昇した。レノボのサーバー・データセンター部門の売上高が前年同期比でほぼ倍増したことから、投資家が企業向けAIインフラ需要の強さをHPEなどの同業他社にも当てはめた格好だ。
HPEについては、買収したジュニパーネットワークスのネットワーク事業が加わったことで、利益率の低くなりやすいAIサーバー事業だけに依存しない収益構造へ移行するとの期待も高まっている。ただし、レノボの業績がHPEの今後の決算を直接保証するものではなく、ジュニパーとの統合にも実行上のリスクが残る。
■レノボのインフラ部門が前年同期比98%増収
レノボが発表した2026/27年度第1四半期決算は、売上高が前年同期比43%増の269億4000万ドル(約4兆2835億円、1ドル=159円換算)となり、四半期として過去最高を記録した。調整後純利益は176%増の11億ドル(約1749億円)となり、同社として初めて10億ドルを超えた。
市場の注目を最も集めたのは、GPUアクセラレーテッドシステムやAI向けサーバーなどを扱うインフラストラクチャ・ソリューションズ・グループ(ISG)の業績だ。同部門の売上高は前年同期比98%増の85億1000万ドル(約1兆3531億円)に達し、原文が引用するアナリスト予想の61億3000万ドルを大きく上回った。営業利益は7億7700万ドル、営業利益率は9.1%だった。
レノボ全体のAI関連売上高は前年同期比60%増の93億ドル(約1兆4787億円)となり、グループ売上高の35%を占めた。インテリジェント・デバイス・グループの売上高は27%増の171億1000万ドル、ソリューション&サービス・グループは28%増の28億8000万ドルだった。売上総利益率も前年同期の14.7%から16.5%へ上昇した。
同社が示したAIサーバーのビジネス機会を示すパイプラインは、前四半期の210億ドルから540億ドル(約8兆5860億円)へ拡大した。ただし、パイプラインは将来の商談機会を含む指標であり、全額が確定受注や売上として計上されるとは限らない。レノボの香港上場株は決算発表後、一時22%上昇した。
■レノボの好決算を受けてHPEなどの株価が上昇
企業向けハードウェア市場では、大手メーカーの業績が同じ需要サイクルにある企業の先行指標として受け止められることがある。レノボの決算発表後、プレマーケット取引でデル・テクノロジーズは約4%、HP Inc.は6.5%、HPEは3.5%上昇した。HPE株は通常取引を58.78ドルで開始し、取引時間中の上昇率は一時8%を超えた。
投資家は、レノボのインフラ事業が急成長したことを、企業によるAIサーバーやデータセンター設備への支出が引き続き活発であることを示す材料と受け止めた。同じ企業向け市場にサーバーやネットワーク製品を提供するHPEにも、同様の需要環境が追い風になるとの見方が広がった。
もっとも、レノボとHPEでは顧客構成や製品構成、地域別の事業比率が異なる。このため、レノボの98%増収からHPEも同程度の成長を実現すると結論付けることはできない。レノボの売上総利益率が14.7%から16.5%へ改善したことは、部品コストなどの圧力が続く中でも、同社が収益性を高めたことを示している。
■ジュニパー買収で変わるHPEの収益構造
AI向けサーバーの製造・販売は、高額なGPUなどの部品が原価の大きな部分を占めるため、売上高が伸びても利益率が低くなりやすい。HPEやデルなどのメーカーはGPUを調達し、システム統合、冷却設計、電力供給、導入支援、保守といった付加価値を加えて販売するが、ソフトウェア事業ほど高い粗利益率を得にくい構造となっている。
HPEが2025年7月に完了した総額約140億ドルのジュニパーネットワークス買収は、この事業構成を変える可能性がある。ジュニパーのクラウド型ネットワーク管理基盤「Mist」やAI機能「Marvis」、HPEの「Aruba Central」などを含むネットワーク事業には、独自ソフトウェアや継続課金型サービスが含まれるため、サーバー事業とは異なる利益構造を持つ。
HPEは2026年度第2四半期に、ネットワーク事業の売上高が前年同期比148.2%増の27億ドル(約4293億円)になったと発表した。同部門の営業利益率は21.6%で、HPE全体の収益構成を押し上げる重要な要素となっている。
HPEは、MistでHPE Networking CXスイッチを管理できるようにする一方、MarvisのAIを活用した分析や自動修復機能をAruba Centralへ導入する方針を示している。ただし、MistとAruba Centralは現時点で別々の管理基盤であり、両方を利用する顧客には運用上の負担が残る可能性がある。
■モルガン・スタンレーがHPEを「オーバーウェイト」に
モルガン・スタンレーのアナリスト、エリック・ウッドリング氏は8月10日、HPEの投資判断を「イコールウェイト」から「オーバーウェイト」へ引き上げた。目標株価は従来の71ドルから69ドルへ引き下げたものの、直前の終値53.22ドルに対して約30%の上昇余地を見込む水準だった。
ウッドリング氏は、ジュニパー統合による競争力の向上、販売チャネルや企業の最高情報責任者(CIO)を対象とした調査で確認された需要の底堅さ、HPE株の評価水準を理由に挙げた。HPEを企業向けインフラ投資サイクルへの有力な投資先と位置付け、ネットワーク事業の比重が高まっている点を評価している。
一方、HPEの事業の「約半分」がネットワーク関連になったとの見方は、モルガン・スタンレーによる分析であり、HPEが公式に示した事業構成比ではない。ネットワーク事業の拡大がHPE全体の利益率と企業価値をどこまで高めるかは、今後の統合効果と業績によって判断されることになる。
■HPE自身の決算も増収とAI受注残の拡大を示す
HPEが6月1日に発表した2026年度第2四半期決算では、売上高が前年同期比40%増の106億8000万ドル(約1兆6981億円)となった。非GAAPベースの希薄化後1株利益は0.79ドルで、会社が示していた0.51~0.55ドルの見通しを上回った。
AIシステムの受注残は、期初の50億ドルから期末には59億ドル(約9381億円)へ増加した。四半期中の新規受注は18億ドルだった。受注残は顧客から受けた注文のうち、まだ納入や売上計上に至っていない金額であり、将来の売上を見通す材料になる。ただし、納入時期や売上計上額はGPUの供給状況やシステム構築の進捗などに左右される。
HPEは2026年度通期について、非GAAPベースの希薄化後1株利益を3.35~3.45ドル、フリーキャッシュフローを少なくとも35億ドルと予想している。第3四半期の売上高見通しは115億~121億ドルとしている。
■AIインフラ需要の持続性と統合リスク
企業向けハードウェアを巡っては、メモリなどの部品価格上昇が利益率や顧客の支出を圧迫する可能性がある。また、大手クラウド事業者によるAI設備投資が減速すれば、サーバーの受注環境に影響するとの慎重な見方もある。
レノボの増収と利益率改善は、こうした懸念に対する前向きな材料となった。しかし、同社のAIサーバーのパイプラインが実際の売上に転換されるかどうかは、顧客との契約、GPUを含む部品の供給、製造・納入能力などに左右される。
HPE固有のリスクはジュニパーとの統合だ。両社の製品ライン、販売パートナー制度、ソフトウェア基盤を統合し、一貫した販売・運用体制を構築できるかが焦点となる。統合が計画どおり進まなければ、期待されている販売拡大やコスト削減、利益率改善の実現が遅れる可能性がある。
レノボの決算は、企業向けAIインフラ市場の需要が引き続き強いことを示す一つの材料となり、HPE株の上昇につながった。ただし、HPEの業績への波及を確認するには、同社が2026年9月2日に予定している第3四半期決算を待つ必要がある。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。
■注目ポイントQ&A
●なぜレノボの決算発表を受けてHPEの株価が上昇したのですか?
レノボのインフラ事業の売上高が前年同期比98%増となり、企業向けAIサーバーやデータセンター設備への需要が強いと受け止められたためです。同じ市場に製品を提供するHPEにも追い風になるとの見方に加え、モルガン・スタンレーによる投資判断の引き上げも株価を支えました。
●ジュニパーネットワークスの買収はHPEにどのような違いをもたらしますか?
利益率が低くなりやすいサーバー事業に加え、ジュニパーのネットワーク機器や継続課金型ソフトウェアがHPEの事業に組み込まれました。ネットワーク事業の比重が高まれば、HPE全体の利益構成が改善する可能性がありますが、効果は統合の進捗に左右されます。
●HPEのAI関連受注残はどの程度ですか?
2026年度第2四半期末時点で59億ドル(約9381億円)です。これは顧客から受けた注文のうち、まだ納入や売上計上に至っていない金額であり、将来の売上を見通す材料になります。ただし、すべてが直ちに売上として計上されるわけではありません。
●企業向けAIインフラ需要は米国だけの動きですか?
レノボは複数の地域で事業を展開しており、今回のインフラ部門の成長は、AIインフラ需要が米国の大手クラウド事業者だけに限られない可能性を示しています。ただし、公表された部門全体の数値だけでは、需要を地域別、業種別に切り分けることはできません。
元記事: Lenovo Doubles Infrastructure Revenue, Lifting HPE 8%: Juniper Makes It More Than AI Server Rally