アジア通貨に明暗、AIブームで韓国ウォン・台湾ドルが優位=ゴールドマン
2026年7月28日 10:14
人工知能(AI)投資と半導体輸出の拡大を背景に、韓国や台湾などの通貨がアジア域内で優位に立っている。米金融大手ゴールドマン・サックスは、中国人民元や韓国ウォン、台湾ドルなどに強気の見通しを示した。
人工知能(AI)はテクノロジー業界を再編するだけでなく、アジアのどの通貨が域内の他通貨を上回るかを左右する要因にもなりつつある。半導体製造やAIサプライチェーンと結び付いた国々が、最大の恩恵を受ける国として浮上している。
CNBCが引用した調査リポートで、ゴールドマン・サックスは、アジアの外国為替市場が事実上、2つのグループに分かれたと指摘した。韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなど、活況を呈するAI投資と半導体輸出の恩恵を受ける国・地域の通貨は、タイ、インドネシア、フィリピンなど、エネルギー価格上昇の影響を受けやすい国の通貨を上回っている。
ゴールドマンのアナリストは「今年のアジアのマクロ市場を動かしてきた2つの主要因は、エネルギー供給ショックとAI関連の投資ブームである」と記した。
原油価格の上昇、タカ派的な米連邦準備制度理事会(FRB)、中東の地政学的緊張、比較的安定した中国人民元を背景に、米ドル指数は今年、3%近く上昇した。それでもゴールドマンは、世界的なAIインフラ投資が堅調に推移する限り、アジア域内の通貨の明暗は分かれ続ける可能性が高いとみている。
なかでも韓国が際立っている。ゴールドマンによると、AI向け半導体やメモリー製品への需要急増に支えられた韓国の半導体産業が、同国の経常黒字を過去最高水準に押し上げた。同行が引用したエコノミストらは、今年の経常黒字がほぼ倍増して約3000億ドルに達すると予想している。これは韓国の国内総生産(GDP)の約13.9%に相当する。
今年初めには、海外投資家による韓国株の大幅な売り越しが韓国ウォンの重荷となった。しかしゴールドマンによると、こうした資金流出は大幅に鈍化しており、韓国の強固な貿易面の基礎的条件が再びウォンを支えられる状況になった。リポートは「海外投資家による株式資金の流出が減少し、急増する経常黒字を相殺する圧力が弱まったことで、ウォン上昇への道が開かれた」と指摘した。
台湾もAIブームの主要な恩恵を受けている。ゴールドマンは、アジア有数の貿易黒字を生み出している堅調な半導体輸出を背景に、台湾ドルが引き続き他通貨を上回ると予想している。
同行によると、台湾の経常黒字は今年、GDP比で25%に達する可能性がある。また、2026年の大半の期間にわたり、輸出は40~70%という異例の高い伸びを示している。
政策当局は金利を据え置くと見込まれているものの、ゴールドマンは、活況を呈するテクノロジー製品の輸出と多額の米ドル預金が、引き続き台湾ドルを支えると指摘した。
中国についても、景気減速に対する幅広い懸念があるにもかかわらず、良好な見通しが示された。ゴールドマンは、中国人民元が今年、アジア通貨の中で唯一、米ドルに対して上昇していると指摘した。アナリストらは、中国経済の他の分野が低迷するなかでも、先端製造業とハイテク産業が堅調であることが、人民元の底堅さにつながっていると分析した。
リポートは「中国経済はハイテク製造業と関連分野の好調な実績にけん引されている一方、経済全般の活動は引き続き低調である」と指摘した。
ゴールドマンは、中国人民元が依然として過小評価されているとして、ドル・人民元相場の12カ月予想を1ドル=6.50元に据え置いた。堅調な輸出と、中国政府による人民元の国際化を一段と進める取り組みが、追加の支援材料になると見込んでいる。
もっとも、テクノロジー産業を重視するすべての国・地域について、同じように楽観的な評価を示したわけではない。ゴールドマンは、AI主導の底堅い経済成長と低インフレにもかかわらず、シンガポールドルについて中立姿勢を維持した。
ゴールドマンは、シンガポール金融管理局(MAS)が政策をおおむね据え置くとの事前の想定が、シンガポールドルの追加的な上昇余地を限定するとみていた。ただ、MASは27日、シンガポール独自の為替レート管理の仕組みであるS$NEER政策バンドの上昇ペースを「ごくわずかに」引き上げ、市場予想に反して金融政策を引き締めた。
ゴールドマンは一方、タイバーツとインドネシアルピアに引き続き弱気である。タイバーツには金価格の下落と実質金利の低下が重荷となっている。インドネシアでは、海外投資の誘致に取り組んでいるものの、政策の不確実性と統治を巡る懸念が続いている。
ゴールドマンはまた、フィリピンは輸入エネルギーへの依存度が高いため、フィリピンペソが高止まりする原油価格の影響を特に受けやすいと警告した。インドルピーはAI投資サイクルの直接的な恩恵を受けておらず、今年は下押し圧力を受けているものの、ゴールドマンは今後3カ月について前向きな見方に転じた。
同行は、インド準備銀行(中央銀行)が海外資本を呼び込むために最近導入した措置に、相対的に低い原油価格が加わることで、ルピーの安定につながる可能性があると指摘した。マレーシアリンギにも強気の見通しを示した。AI主導の底堅い経済成長、堅調な輸出、継続的な海外直接投資を理由に、リンギが引き続き上昇する可能性があるとしている。
総じてゴールドマンは、今後3カ月について、中国人民元、韓国ウォン、台湾ドル、インドルピー、マレーシアリンギに強気の見通しを維持する一方、タイバーツとインドネシアルピアには弱気姿勢を続けている。