ドイツ、AI検索に世界初のメディア法適用 GoogleとPerplexityのEU免責を認めず

2026年7月20日 20:05

ドイツのメディア規制当局は7月14日、Google AI OverviewsとPerplexity AIを中立的な仲介者ではなくコンテンツ提供者と位置付け、ドイツのメディア法の適用対象だと判断した。これにより、EUのデジタルサービス法(DSA)でインターネット仲介事業者に認められてきた標準的な責任免除は適用されないとの見解が示された。両社には7月14日から1カ月の不服申立期間があり、Googleは判断を争う方針を示している。判断が維持されれば、欧州で展開する他のAI検索製品にも同様の再分類が及ぶ可能性がある。

■世界で初めてAI検索の出力に正式にメディア法を適用

ドイツのメディア規制当局は2026年7月14日、AI生成の検索回答に対して正式にメディア法を適用する世界初の判断を示した。対象となったのはGoogle AI OverviewsとPerplexity AIで、両サービスは中立的な伝達手段ではなく、コンテンツ提供者として扱われるとされた。その結果、過去20年にわたりインターネット仲介事業者を保護してきたEUの標準的な責任免除を主張できないことになった。

この判断は直ちに執行可能であり、欧州で展開するあらゆるAI検索製品が同様の再分類リスクに直面する可能性がある。

判断を出したのは、ドイツ14州のメディア当局を調整する免許・監督委員会(Commission for Licensing and Supervision、ZAK)である。ハンブルク/シュレースヴィヒ=ホルシュタイン・メディア当局(MA HSH)とベルリン=ブランデンブルク・メディア当局(mabb)による調査を踏まえ、両社に対する正式な行政判断を出した。ZAKのトルステン・シュミーゲ議長は「AI検索エンジンとチャットボットはコンテンツ提供者であり、今後はドイツのメディア法を一貫して適用していく」と述べた。

GoogleとPerplexityには7月14日から1カ月の不服申立期間がある。Googleは判断を争うと表明した。Perplexityは判断の内容へのコメントを避け、GDPRへの準拠とSOC 2 Type IIのセキュリティ認証を挙げた。

■従来の検索サービス向け法理ではAI回答を扱えないという判断

両判断の核心にある法的争点は、AI生成の検索回答がDSAの「mere conduit(単なる導管)」サービス向け責任免除の対象になるかどうかである。この免責は2000年のEU電子商取引指令に由来し、2024年2月に全面適用されたDSAにも引き継がれている。対象となるのは、第三者のコンテンツを編集に関与することなく送信またはホスティングする事業者だ。適用を受けるには、送信を開始しないこと、受信者を選ばないこと、そして決定的に重要な条件として、送信される情報を選択または改変しないことが求められる。

ZAKは、AI検索はいずれの条件も満たさないと結論付けた。Google AI Overviewsのようなシステムは、検索拡張生成(retrieval-augmented generation、RAG)を用いて第三者パブリッシャーのコンテンツを取り込み、回答に使用する材料を選び、大規模言語モデルでそれらを新たな文章へと合成する。出力は元文書への単なる案内ではない。提供事業者が生成した新しいテキストであり、ユーザーを元の報道へ導くのではなく、それに取って代わるものだとされた。

この判断の土台には、独立した2本の学術研究がある。ヤン・オスター教授とクリストフ・ブッシュ教授の法的意見書は、AI生成回答は原則として提供者自身のコンテンツとみなすべきであり、DSAの仲介事業者向け責任保護は原則として適用されないと結論付けた。別の研究では、ディルク・レヴァンドフスキ教授が、生成AIによってインターネット検索がどう変わり、それがメディアの多元性にどのような影響を与えるかを検討した。レヴァンドフスキ教授は、AI生成回答が従来のリンク一覧を補完するのではなく、次第に置き換えつつあると指摘した。複数の研究ではパブリッシャーへの流入が18%から50%超減少しており、AI要約を目立つ位置に表示することで報道ソースの可視性が低下し、報道機関の事業モデルが損なわれることも示された。

■ドイツの裁判所もすでに近い結論へ

ZAKの判断に先立ち、ミュンヘン地方裁判所は2026年5月28日の仮処分決定(事件番号26 O 869/26)で、民事訴訟を通じて同じ根本的な判断に至っていた。AI Overviewsは「独立した、新規かつ実質的な記述」を生み出しており、Google自身が公表したコンテンツに当たるのであって、従来の検索エンジンによる第三者情報の単なる提示として免責されるものではないという判断だった。

この事件では、ミュンヘンに拠点を置く出版社2社が、自社名がGoogle AI Overviews上で詐欺的な仕組みや悪質な定期購入、疑わしい商慣行と、事実に反して結び付けられていることを発見した。しかも、こうした非難はAI Overviewが引用した元の情報源には存在しなかった。AIは2社を実際に問題のある競合他社と混同し、取得した資料には根拠のない関係を作り出していた。出版社側が差し止めを求める書簡を送った後も、Googleは十分に対応しなかった。裁判所はGoogleに対し、虚偽の主張を引き続き拡散することを禁じ、訴訟費用の80%を負担するよう命じた。違反した場合は最大25万ユーロの制裁金または拘禁が科され得る。

もっとも、ドイツの裁判所の判断は一致していない。ベルリン地方裁判所は2026年6月1日、ミュンヘンの仮処分から数日後に判断した別の事件で、AI生成検索結果に関する商標権侵害と不正競争の主張を退けた(事件番号52 O 62/26)。この食い違いは、法的論点が今なお活発に争われていることを示している。同時に、規制当局としての権限を伴うZAKの行政判断が、こうした争点が裁判所で審理される中、法的枠組みを安定させるうえで決定的な意味を持つ可能性もある。

Googleは2026年6月12日、ミュンヘンの判断に対する不服申立てを発表した。今回のZAK判断は別の手続きであり、Googleがこちらにも不服を申し立てた場合は、ドイツの行政裁判所が扱うことになる。

■Googleへの判断は「自社コンテンツ優遇」に焦点

Googleに対するZAK判断の中核は、ドイツ州間メディア条約(Medienstaatsvertrag)109条が禁じる差別に当たるという点にある。AI Overviewは検索結果の最上部というページ上で最も価値の高い位置に表示される一方、ニュース記事へのリンクを含む従来のリンク一覧は下方へ押し下げられるか、完全に画面外になることがある。ZAKによれば、AI OverviewがGoogle自身の制作したコンテンツである以上、独立した報道より優先的に表示することは、プラットフォーム所有者が自社のインフラを使い、第三者メディアを犠牲にして自らの編集コンテンツを優遇する行為に当たる。

ZAKの使命はMeinungsvielfalt、すなわちメディアの多様性と意見の多元性を守ることにある。ZAKは、この構造がまさにその所掌範囲に入ると判断した。

この結論を支えるデータも無視できない。Ahrefsが2026年2月に公表した、30万件のキーワードとGoogle Search Consoleデータを対象とする分析では、AI Overviewsの表示と、検索上位ページのクリック率が58%低下することとの間に相関がみられた。これは数カ月前の研究で示された34.5%減のほぼ2倍に当たる。Pew Researchは、AI Overviewが表示される場合に従来の検索結果をクリックするユーザーは8%にとどまり、表示されない場合の15%を下回るとした。Chartbeatが世界2,500超のニュースサイトを追跡したデータでは、2025年にGoogle検索からの流入が対象サイト全体で約3分の1減少した。Similarwebは、世界のパブリッシャーが月間6億件を超える訪問を失っていると推計した。

経済的な影響は業界全体に波及し始めている。Rolling Stone、Billboard、Varietyの親会社であるPenske Mediaは2025年9月、アフィリエイト収入が2024年後半までにピーク時から3分の1超減少したとして、Googleを相手取る米連邦反トラスト訴訟を起こした。Cheggも2025年2月、AI Overviewsが宿題や学習関連の質問に直接回答することと相関して、非会員によるトラフィックが49%減少したとして反トラスト訴訟を提起した。Business Insiderは3年間で自然検索トラフィックが55%減少し、2025年5月に従業員の21%を削減した。Press Gazetteは、2025年に米国と英国で実施されたジャーナリズム関連の人員削減が3,400人を超え、2026年はそれを上回るペースで推移していると報告した。

■Perplexityへの現時点の判断は限定的だが、次の段階も示唆

Perplexityに対するZAKの初期判断は、Googleに対するものより範囲が狭い。同社はドイツ国内の法定代理人を指定しておらず、州間メディア条約が求める透明性に関する開示義務も満たしていなかった。現時点で問題とされたのは、編集上の実体的な判断ではなく、手続き上の義務違反である。

ただしZAKは、実体的な論点もすでに検討対象になっていることを明確にした。PerplexityのAIが生成回答にソースへのリンクや推奨記事、出典一覧を添える際、どの第三者コンテンツを表示し、どれを表示しないかを同社自身が決めている。この機能は、メディアの多元性を保護する規則の適用対象となるメディア仲介者(Medienintermediär)の定義に当たると規制当局は結論付けた。今回の手続き上の判断は第一段階であり、Perplexityが義務への適合を示さなければ、Googleに対するものと同様の実体的な編集責任の認定が次の段階になると考えられる。

Perplexityは判断に関する問い合わせに対し、GDPRへの準拠とSOC 2 Type IIのセキュリティ認証に言及したが、判断の内容には答えなかった。

■DSA免責が認められなければ影響はドイツを超える

今回のZAK判断で最も重大な法的影響は、ドイツだけでなく、GoogleとPerplexity以外にも広がる可能性がある。DSAの「mere conduit」免責はドイツ国内だけの制度ではなく、欧州で事業を行うAI検索製品が依拠するEU全域の責任枠組みだからだ。生成AIによる情報の合成はDSAの条件を満たさないというZAKの結論は、ドイツのメディア法ではなくEU法の解釈に基づいている。

この論理が不服申立てやEUレベルでの精査を経ても維持されれば、生成AIはEU全域で編集主体として構造的に再分類される可能性がある。ChatGPTのブラウジングおよび検索機能、Claudeのウェブ情報取得機能、Google検索内のGemini、公開ウェブ上のコンテンツを取り込んで合成するその他のLLM製品は、出力が編集コンテンツに当たり、発行者と同等の責任を負うのかという同じ問いに直面することになる。オスター教授とブッシュ教授の分析に従えば、その答えは肯定となる。

法曹関係者は、EUの「原産国原則」と抵触する可能性も指摘している。EU司法裁判所はGoogle Ireland対KommAustria事件(C-376/22)で、ある加盟国に設立されたオンラインプラットフォームには、他の加盟国の法律ではなく、原則として設立国の規制法が適用されると確認した。GoogleとPerplexityのEU事業はアイルランドを拠点として構成されており、同国は多くの米国大手テクノロジー企業にとってEU域内の本拠地となっている。ドイツが「ドイツ国内での利用を意図した」サービスを対象とする州間メディア条約の規定に基づいて管轄権を主張することが、原産国原則の許容される例外に当たるのか、それとも権限の行き過ぎなのかは、不服申立てで中心的な争点になる可能性が高い。この管轄権をめぐる主張はGoogleにとって最も有力な法的論拠であり、EU司法裁判所は過去にテクノロジー企業側に有利な判断を示している。

■独禁法や著作権法と異なる、メディア多元性規制という経路

ZAKが取った道筋は、パブリッシャーが米欧の裁判所で進めてきた反トラスト法や著作権法に基づく訴訟とは構造的に異なる。反トラスト訴訟では、競争法の基準に沿って市場への損害を立証する必要がある。これは時間と費用がかかるうえ、結果が不確実で、暫定的な救済も限られる手続きである。著作権訴訟では、AI要約が保護された著作物のフェアユースに当たるかが問われるが、米国の裁判所はまだこの問題を解決していない。これに対し、メディア多元性規制で問われるのは、ゲートキーパーの行動が報道コンテンツの多様性や発見可能性を低下させているかどうかである。

ドイツの州間メディア条約は、まさにこの問題を捉えるよう設計された。2020年の制定時、同条約は従来型の放送事業者だけでなく、検索エンジンやソーシャルメディア、メディアコンテンツの「ゲートキーパー」を明示的に対象とする世界初の規制枠組みを導入した。非差別規定は、プラットフォーム所有者が自らの立場を利用し、第三者の報道より自社コンテンツを優遇することを防ぐために設けられた。ZAKは、AI Overviewsがまさにこの規定の適用対象になるとの立場である。

この判断は、EUのAI法(AI Act)の枠組みにも影響を与える可能性がある。AI Actは、影響の大きい分野で使用されるAIシステムにリスクに応じた義務を導入している。ZAKの判断が出たのは、ユーザーとやり取りするシステムに対するAI Actの透明性義務が2026年8月2日に適用される予定の、約2週間前だった。これらの義務は、AI生成コンテンツであることの表示と、AIが生成したテキストをユーザーが利用していることについての機械可読な開示を求める。しかし、それだけでは編集責任の問題は解決しない。ドイツのメディア法は、まさにその残された空白を扱う。

■Googleの「Preferred Sources」機能とその限界

Googleも、強まる規制上・司法上の圧力に対して手を打ってきた。同社はGoogle検索に「Preferred Sources」機能を導入し、AI Overviewsで優先してほしいウェブサイトをユーザーが指定できるようにした。この動きには、法的な防御を支える狙いもあるとみられる。AI生成結果にどのパブリッシャーを表示するかについて、ユーザーが実質的な選択権を持っていると、法的手続きの中で主張できるようにするためだ。

ただし批判する側や法律アナリストは、この機能の実務上の効果はおおむね象徴的なものにとどまるとみている。大多数のユーザーが、優先するパブリッシャーのリストを積極的に作成する可能性は低い。パブリッシャー全体への流入に与える実際の効果は小さい一方、訴訟上は大きな意味を持つ可能性がある。Googleは、「どの報道が表示されるかをGoogleが決める」という構図を、「ユーザーが情報源を選ぶ」という構図へ変えようとしている。しかし、メディア多元性の基準を適用する規制当局にとって、この再定義だけでは不十分かもしれない。多元性をめぐる問題の中心は、利用者の一部だけが使うカスタマイズ機能ではなく、システムの標準設定にあるからだ。

Googleはまた、パブリッシャーへの流入に関する複数の研究について、調査手法に問題があると反論してきた。その一方で、自社の反論を第三者が検証できるようにするトラフィックデータは公表していない。

■不服申立ての行方と、判断が維持された場合の展開

GoogleまたはPerplexityが2026年8月14日の期限までにZAK判断への不服申立てを行えば、事件はドイツの行政裁判所で争われることになる。争訟になった場合、最終的な決着まで数年かかる可能性がある。その間も判断自体は執行可能であり、企業が義務への適合を拒めば、ドイツ当局による執行措置に直面する。

ZAK判断が不服申立てを経ても維持されるか、両社が訴訟ではなく義務への適合を選べば、GoogleとPerplexityはメディア仲介者およびコンテンツ提供者として、州間メディア条約の透明性義務、非差別義務、多様性保護義務に適合する必要がある。AI検索製品に対するこうした一連の規制対応は、世界初の事例となる。

欧州の他の法域もドイツの対応を注意深く見ている。フランス、オランダ、欧州委員会はいずれも、AI検索とメディア法が交わる領域に関心を示している。ZAK判断が法的な異議申立てを経ても維持されれば、他の規制当局にとって具体的な法的ひな型となる。また、DSAの責任制度は生成AIによる情報の合成をメディア規制から免れさせるために設けられたものではない、という主張の根拠にもなり得る。

パブリッシャーにとって今回の判断は、AI要約による検索流入の急減が単なる経済的混乱ではないことを、これまでで最も明確に公的認定したものとなる。それはメディアの多様性に対する構造的脅威であり、規制当局には対処する権限があるだけでなく、今や実際に適用可能な法理論もあるということだ。

■注目ポイントQ&A

●ドイツのZAKはGoogle AI OverviewsとPerplexityについて何を判断したのですか

ZAKは2026年7月14日、両サービスは単なるプラットフォームや導管ではなく、コンテンツ提供者としてドイツのメディア法の適用対象になると判断しました。取得した情報源から新しい文章を合成している以上、AI生成の検索回答は各社自身の編集コンテンツに当たり、EUのDSAにある仲介事業者向けの標準的な責任免除は適用されないという考え方です。

●この判断はChatGPTなど欧州の他のAI検索製品にも影響しますか

判断そのものはドイツの行政法に基づき、GoogleとPerplexityに適用されるものです。ただし、取得したコンテンツの合成はDSAの「mere conduit」要件を満たさないという法的な論理は、ドイツ法だけでなくEU法の解釈に関わります。この論理が不服申立てを経ても維持されれば、公開ウェブ上のコンテンツを取り込んで合成する欧州の生成AI製品は、ChatGPTのブラウジング機能やGeminiなどを含め、同様に発行者として再分類される可能性があります。

●AI Overviewsでパブリッシャーの流入や収益はどれほど落ちたのですか

原文で挙げられた調査では、Ahrefsが2026年2月、AI Overviewsの表示と検索上位ページのクリック率が58%低下することとの間に相関があると報告しました。Pew Researchは、AI Overviewがある場合にウェブサイトをクリックするユーザーは8%で、ない場合の15%を下回るとしています。Chartbeatは、世界2,500超のニュースサイトで2025年のGoogle検索からの流入が約3分の1減少したとし、Similarwebは世界のパブリッシャーが月間6億件を超える訪問を失っていると推計しました。Press Gazetteは、2025年に米国と英国で行われたジャーナリズム関連の人員削減が3,400人を超えたと報告しています。

●DSAの「mere conduit」免責とは何で、なぜ重要なのですか

これは2000年から続くEU法に由来する責任免除で、コンテンツを受動的に送信または中継するインターネット事業者を保護する仕組みです。適用を受けるには、送信を開始しないこと、受信者を選ばないこと、送信する情報を選択または改変しないことが必要です。ZAKは、AI検索は取得したコンテンツから新しい回答を合成する時点で情報を選択し、改変しているため、この要件を満たさないと判断しました。この解釈が維持されれば、AI検索事業者が欧州全域で依拠してきた最も重要な法的防御が失われることになります。

元記事: Germany Strips AI Search of Its EU Liability Shield in World’s First Media Ruling

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