ソニー、2028年以前のPSソフトのディスク再生産を容認へ。ただし2028年以降の新作は「所有権なし」のデジタル版のみに移行

2026年7月7日 11:35

ソニーが2028年1月以降の新作ゲームにおける物理ディスク生産終了を発表した件について、新たな動きが報じられた。ジャーナリストの報道によると、ソニーは開発・販売パートナーに対し、2028年1月以前に発売された既存タイトルについては、それ以降もディスクの追加生産(リプリント)の注文を受け付ける方針を非公式に伝えたという。これにより旧作の急激な枯渇は避けられる見通しだが、2028年以降の新作が「所有権のないデジタルライセンス」のみになるという根本的な構造に変わりはない。

■ソニーがパブリッシャーに伝えた非公式の「再生産容認」

ソニーは、2028年1月以降の新作ゲームにおける物理ディスク生産終了を発表したが、すでに店頭に並んでいる既存タイトルのディスクを追加注文できるのかという疑問が残されていた。ゲームジャーナリストのステファン・トティロ氏が2026年7月3日に「Game File」で報じたところによると、ソニーは開発者向けポータルを通じて、パートナー企業に対し「既存のPlayStationディスクゲームの追加注文(再注文)は引き続き可能である」と非公式に伝えたという。

これにより、2028年1月のカットオフ前に物理ディスクで発売されたゲームであれば、それ以降も追加生産が行われる道が残された。また、ソニーはディスクの注文プロセスが今後変更されることや、デジタルコードをパッケージに封入する形での小売販売の機会をパブリッシャーに提供することも伝えている。さらに、2026年、2027年、および2028年初頭のリリース分についてディスク供給を保証するため、今後2年間の物理生産の予約プロセスを改定し、後日スタジオに通知するとしている。

■縮小する生産拠点と再生産の実効性

しかし、この再生産の約束がどれほど実効性を持つかは不透明だ。ソニーの主要なディスク製造拠点であるオーストリア・タルガウのSony DADC工場は、現在1日あたり60万枚のディスクを生産しており、その約半分がPlayStation向けである。しかし、DADCのCEOであるディートマール・タンツァー氏が地元放送局ORFザルツブルクに語ったところによると、同工場のディスク生産量は2028年までに現在の約10%にまで減少する見込みだという。

同工場では、ソニーが約3000万ユーロ(約51億3000万円、1ユーロ=171円換算)を投じてカメラセンサーやAR/VRヘッドセット向け光学マイクロレンズの生産設備への転換を進めており、早ければ来年にも量産を開始する。タルガウ工場はソニーが完全所有する最後のディスク製造拠点であり、米インディアナ州の工場はすでに2022年に閉鎖されている。生産能力が10%に激減した状態で、小規模なタイトルの再生産がコスト的に見合うのかという詳細は、まだ明らかにされていない。

■「デジタル購入」は所有ではなく、単なるライセンス

物理ディスクの廃止が重大視されるのは、それが「ゲームを所有する」という唯一の手段を奪うからだ。物理ディスクを購入した場合、米国の消尽原則(ファーストセール・ドクトリン)や欧州の判例に基づき、ユーザーはそれを転売、貸与、譲渡する権利を持つ。物理ディスクは従来の財産であり、パブリッシャーのサーバーが停止した後でも、対応ハードウェアがあればプレイし続けることができる。

一方で、PlayStation Storeでのデジタル購入は「所有」ではない。それはソニーの規約に従う、いつでも取り消し可能で譲渡不可能な「ライセンス(利用権)」にすぎない。PlayStation 3やPS Vitaのストアが縮小しているように、ソニーの認証サーバーが永久に停止すれば、購入したデジタルゲームは起動できなくなる。実際に、EAの『Darkspore』やユービーアイソフトの『The Crew』のように、サーバー閉鎖に伴い購入済みのゲームが永久にプレイ不可能になった前例が存在する。

■購入した映画551作品が消去される現実

デジタルライセンスの危うさを象徴する出来事が、ディスク廃止発表と同じ週に発生した。ソニーは英国および欧州のPlayStationユーザーに対し、ライセンス契約の終了に伴い、StudioCanalが配信する『ターミネーター2』や『ランボー』など購入済みの映画・テレビ番組551作品を、2026年9月1日をもってユーザーのライブラリから返金なしで削除すると通知した。

この件は、利用規約に埋もれた「コンテンツを購入しているのではなく、アクセスする許可をレンタルしているだけであり、その許可はソニー側の都合で終了する」という現実を、何百万人ものユーザーに突きつける形となった。

■規制の空白地帯と、欧州での法制化見送り

消費者保護の法整備も遅れている。欧州委員会は2026年6月16日、購入したゲームをプレイ可能な状態に保つことをパブリッシャーに義務付ける法案の提案を正式に見送った。これは129万人以上の署名を集めた市民イニシアチブ「Stop Destroying Videogames(ゲームを破壊するな)」への回答だったが、欧州委員会は知的財産権への影響やパブリッシャーのコスト負担を理由に却下した。

米国では、カリフォルニア州で「購入」が実際にはライセンスにすぎないことを明示させる法律(AB 2426)が2024年に成立したほか、サポート終了後もゲームをプレイ可能な状態に保つことを義務付ける法案(AB 1921)が州議会で審議中だが、連邦レベルでの法制化の動きはない。結果として、消費者がデジタルゲームへの継続的なアクセスを法的に請求できる権利は確立されていない。

■中古市場の消滅と価格支配権

2028年1月以降の完全デジタル移行により、それ以降に発売されるすべての新作タイトルにおいて「中古ゲーム市場」が事実上消滅する。物理ディスクであれば存在した、中古店での売買や友人との貸し借りは、アカウントに紐づくデジタルライセンスでは一切行えない。ソニーが提供予定とする「コード封入ボックス」も、一度コードを使用すれば再利用は不可能なため、中古市場には回らない。

中古市場という競合が排除されることで、ソニーやパブリッシャーは価格競争にさらされることなく、PlayStation Store上で自ら設定した価格を維持できるようになる。プラットフォームホルダーが価格の唯一の決定者となるのだ。

■小島秀夫監督の警告「アクセスする権利があるだけ」

このデジタル所有権のあり方に対し、ゲーム業界の著名なクリエイターである小島秀夫監督も警鐘を鳴らしている。小島監督は2026年7月4日にイタリアで開催された映画祭で、物理メディアからの移行について次のように語った。

「現在はまだデータをダウンロードできるが、いずれゲームはAmazonやNetflixのようなストリーミングサービスに移行し、企業がプレイの可否を決定するようになるだろう。その時、私自身が所有するものは何もなくなってしまう。データは企業のどこかにあり、その蛇口がどれだけ開かれるかによって、アクセスする権利があるかないかという状態になる」

ソニーと深い協力関係にある小島監督が、ソニーのディスク廃止発表と同じ週にこのような警告を発したことは、業界内でも大きな注目を集めている。

■コレクターにとっての再生産容認の意味

ソニーの今回の説明は、2027年末に発売されたPS5の傑作ソフトなどが、2028年以降もディスクとして増刷される可能性を残したという意味で、物理コレクターにとっては一定の救いとなる。しかし、製造工場の規模縮小に伴い、再生産コストの上昇や最小注文数量の制限などが発生すれば、小規模なタイトルでの再生産は経済的に困難になる可能性が高い。

また、Ampere Analysisのシニアゲームリサーチアナリストであるピアーズ・ハーディング=ロールズ氏は、この2028年1月というタイムラインは、次世代機「PS6」がディスクドライブ非搭載で登場すること、そしてその発売が早くとも2028年以降になることを事実上裏付けるものだと指摘している。

■注目ポイントQ&A

●2028年1月以降もPlayStationのゲームをディスクで購入できますか?

2028年1月より前に発売されたゲームについては、パブリッシャーがソニーに追加生産を注文できるため、流通が続く可能性があります。ただし、製造工場の規模が縮小するため、実際に再生産されるかはパブリッシャーの需要やコスト次第となります。2028年1月以降に発売される新作ゲームについては、物理ディスク版は一切発売されません。

●購入したデジタル版のPlayStationゲームは、自分の所有物になりますか?

いいえ、所有物にはなりません。PlayStation Storeでのデジタル購入は、ソニーの規約に基づく「取り消し可能なライセンス(利用権)」の取得であり、所有権の移転ではありません。ソニーの利用規約(EULA)にも、購入は所有権を構成しない旨が明記されています。これは、ライセンス契約終了に伴い購入済みの映画がライブラリから削除されるのと同じ仕組みです。

●ソニーがゲームの認証サーバーを停止した場合、消費者を守る法律はありますか?

現時点では、消費者を保護する実効性のある法律はほとんどありません。欧州委員会は2026年6月に、サーバー停止後もゲームをプレイ可能な状態に保つことを義務付ける法案の提案を見送りました。米国カリフォルニア州では関連法案が審議中ですが、連邦レベルでの法制化の動きはなく、サーバー停止時に返金やプレイ継続を義務付ける法律は存在しません。

●完全デジタル化は中古ゲーム市場にどのような影響を与えますか?

2028年1月以降に発売されるすべての新作タイトルにおいて、中古市場は完全に消滅します。デジタルライセンスは他人に譲渡や転売ができないため、中古店での売買や友人との貸し借りは不可能です。これによりユーザーは不要になったゲームを売却できなくなり、ソニー側は中古品との価格競争なしにPlayStation Storeでの販売価格をコントロールできるようになります。

元記事: PlayStation Disc Reprints Confirmed, but Post-2028 Purchases Carry No Ownership Rights

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