NISA資金に変化の兆し オルカン一強の中で進む「国内高配当株回帰」

2026年6月13日 09:06

 2024年1月にスタートした「新NISA」の導入から2年余りが経過した。各ネット証券の買付動向が示すように、「オルカン」や「S&P500」といった米国株・海外株中心のインデックス投資信託に資金が集中するトレンドは依然として主流である。

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 しかし、為替や金利などの市場環境が変化するなか、一部の個人投資家の間では、米国株への一極集中リスクを避けるための分散投資として、国内株をポートフォリオに組み入れる動きも見られ始めている。

■市場環境の変化と国内優良株への資金分散

 投資家が日本株に目を向ける背景には、歴史的な円安水準に伴う海外資産の割高感と、国内における「金利ある世界」への移行がある。

 証券大手が公表するNISA口座の取引データ(買付代金ランキング等)を確認すると、つみたて投資枠では海外株投信が上位を独占している一方、成長投資枠の個別株部門においては、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの大型金融株や、主要な総合商社、日本電信電話(NTT)といった国内の時価総額上位銘柄が常に上位を維持している。

 東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請などを背景に、株主還元を強化し配当利回りが3〜4%を超える水準となった国内の優良企業が、中長期で非課税メリットを享受したい層の堅実な受け皿として再評価されているのだ。

■長期投資の前提とコア・サテライト戦略

 投資スタイルの面でも、運用の効率化を図るアプローチの多様化が進む。過去数年、海外インデックスファンドは非常に高いリターンを記録してきたが、これらは市場の強気局面の恩恵による側面が大きい。

 金融庁が作成した『つみたてNISA早わかりガイドブック』等の資料における過去の実績データ(1985年から2020年までの期間)によれば、20年間の長期・分散投資を行った場合の投資成果(年率換算)は2〜8%の範囲に収まる傾向が示されており、長期的には市場平均へと収束していくことが一般的な前提となる。

 こうしたなか、より資本効率を意識する投資家は、インデックス投資で資産の土台(コア)を守りつつ、成長投資枠を活用して自己資本利益率(ROE)の高い銘柄や、資本効率の改善期待が高い国内個別株を組み合わせる「コア・サテライト戦略」を取り入れている。

 市場全体の変動に依存しすぎず、ポートフォリオの安定性と収益性のバランスを模索するハイブリッド型の運用スタイルが定着しつつある。

■調整局面における投資家心理の課題

 新NISAが足元で調整局面に直面するなか、個人投資家にとって最大の課題となるのが、市場のノイズに伴う心理的な揺らぎへの対処である。

 行動経済学の代表的な理論である「プロスペクト理論」によれば、人間は利得局面においてはリスクを回避して「確実な利益」を早期に確定させようとする傾向(早すぎる利益確定)を持つ。一方で、損失局面においては逆にリスク愛好的になり、損失を確定させる痛みを避けようと損切りを先延ばしにする傾向(塩漬け)がある。

 この非合理的な心理メカニズムにより、市場が一時的な下落トレンドに入った際、パニックから当初の積立計画を中断してしまったり、感情的な売買を繰り返して将来の複利効果を自ら損なってしまったりするリスクが生じる。

 資産形成の成否を分けるのは、目先の乱高下に惑わされず、当初の計画を維持するという高度な行動規律だ。市場環境が変化する今こそ、自身のライフステージに合わせたリスク許容度と出口戦略を再確認し、一時的な評価損益に一喜一憂しない自律的な運用姿勢が求められている。

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