馬の口は嘘をつかない? 信頼できる情報源を意味する英語イディオムの意外な由来

2026年5月12日 17:41

 英語には「straight from the horse's mouth」というイディオムがある。直訳すれば「馬の口から直接」とでもなるが、実際は「確かな筋からの情報」「信頼できる情報源から直接得た話」を意味する。

【こちらも】ワニの涙とは? 中世の旅行記が生んだ英語イディオム

 なぜ情報の信頼性を語るのに、よりによって「馬の口」なのか。今回はこのイディオムの背景を掘り下げたい。

■歯でわかる馬の年齢

 馬の歯には、人間にはない特徴がある。馬の歯は生涯を通じて伸び続け、同時に咬合面が摩耗していく。その摩耗のパターンには規則性があり、歯を見ればその馬がおおよそ何歳かを判定できるという。

 馬の売買において、これは決定的に重要だった。売り手がどれほど「この馬は若い」と言い張っても、買い手が口をこじ開けて歯を確認すればごまかすことはできない。

 この判定法の精度があまりに高かったために、馬の歯を意図的に削ったり加工したりして、実際より若く見せかける「ビショッピング(bishoping)」と呼ばれる不正行為まで生まれた。

 つまり馬の口がそれほどまでに嘘のつけない情報源として、信頼されていたことを表す。

■競馬が育てたイディオム

 では、「straight from the horse's mouth」というイディオムは、いつごろどのように生まれたのだろうか。

 19世紀から20世紀初頭のイギリスにおいて、競馬は国民的な娯楽だった。厩務員、調教師、騎手など、馬のコンディションを直接知る立場にある者たちからの内部情報は、賭け手にとってこの上なく貴重なものだった。

 「straight from the horse's mouth」は、そんな内部関係者よりもさらに一段上の情報源を示す、ユーモラスな誇張として生まれた表現だ。関係者の話よりもっと確かな、馬自身の口から直接知り得た情報というわけだ。

 もちろん馬が人間に語りかけるわけはない。だからこそ、「これ以上ないほど確実な情報源」という意味が成立する。

 このイディオムが広く普及したのは1920年代とされているが、それ以前から競馬の世界では口語として流通していたと考えられている。

 ちなみに、馬の歯で年齢を判断するという慣習から、「long in the tooth」という別のイディオムも生まれている。直訳すれば「歯が長い」だが、年を取っていることを意味する表現である。馬の歯が加齢とともに伸び続けるという事実がそのままイディオムになった。

 例文
 We should get the information straight from the horse's mouth before making any decisions.
 (決定を下す前に、確かな筋から直接情報を得るべきだ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

関連記事

最新記事