円相場急変で商社株は分岐、3社の分かれ目は利益見通しと還元
2026年5月8日 14:43
円相場が急変する中、商社株の見方が改めて問われている。今回注目したいのは、5月1日に本決算をそろって公表した三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の3社である。
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総合商社とは、資源や金属、食料、物流、生活関連まで幅広い事業を手がける多角化企業群を指し、為替の振れが大きい局面では同じ商社株でも株価の反応は一様ではない。直近では円が為替介入で急騰したあとに反落するなど不安定な動きが続いており、3社の分かれ目は利益見通しと還元姿勢にありそうだ。
■バフェット氏の投資で注目
商社株が引き続き注目される背景には、ウォーレン・バフェット氏の存在もある。報道やバークシャー・ハサウェイの公開情報によると、同社が保有する日本の5大商社株の時価評価額は2024年末時点で235億ドルに達し、保有比率は最大で9.8%近辺まで引き上げられた。
バフェット氏は、これらの商社株を今後何十年にもわたって保有し得るとの考えも示している。総合商社株は、短期のテーマ株というより、長期保有の対象としても引き続き市場の注目を集めやすい存在といえそうだ。
■三菱商事は資源感応度と増配余地
その中でも三菱商事は、資源価格の感応度と還元余力が意識されやすい。5月1日公表の資料では、2027年3月期の年間配当を1株125円とする見通しを示した。利益面だけでなく、還元姿勢の強さが株価の支えになりやすい構図だ。
資源価格や円相場の動きが追い風になれば利益の押し上げ効果が見えやすい一方、逆風時にはその振れ幅も意識されやすい。三菱商事株価を見るうえでは、資源感応度と増配余地の両方が評価軸になりそうだ。
■三井物産と伊藤忠
これに対し、三井物産は資源と非資源のバランス、伊藤忠商事は非資源比率と生活関連の安定感が比較材料になる。
三井物産は5月1日の決算で、累進配当方針の継続と、2027年3月期から2029年3月期までの最低配当を1株140円とする方針を示した。
伊藤忠商事も同日の資料で、2027年3月期の最低配当を1株44円とし、3,000億円以上の自己株取得方針を示している。
配当を含む還元面では3社とも強さがあるが、三井物産は資源と非資源の配分、伊藤忠商事は生活消費に近い事業の安定性が、円相場急変局面での株価の差につながりやすい。
■投資家の注目ポイントは
投資家目線では、次の株価を考えるうえで3つの点を確認したい。
1つは、円相場の急変が各社の利益見通しにどう響くか。2つ目は、原油や資源価格の振れがどの会社により強く効くか。3つ目は、配当や自己株取得を含む株主還元がどこまで下支えになるかである。
総合商社株はバフェット氏の長期保有でも注目されるが、足元の株価の分かれ目は、円相場の振れと資源価格の変動の中でも、利益見通しと還元姿勢をどこまで維持できるかに表れやすい。
円相場や資源価格の急変で短期的に振れやすい一方、最終的には利益の安定感と還元姿勢の差が、株価の明暗を分けるポイントになりそうだ。(記事:林田孝治・記事一覧を見る)