徳島県の新ホール事業者再公募、応募なく中止に 事業費抑制が影響か

2025年12月3日 13:40

 徳島県は、JR徳島駅近くの藍場浜公園に整備を計画していた徳島文化芸術ホール(仮称、徳島市藍場町など)の事業者再公募を中止した。設計・施工から完成後の管理運営まで受け持つ事業者を募っていたが、参加表明の期限までに応募事業者がなかったためで、人件費や資材費の高騰が続く中、業者側から「抑制された事業費では厳しい」との声が出ていた。

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 新ホールはコンサートや演劇、伝統芸能の公演などに使用できる客席1,500以上のホールと、広さ300平方メートル程度の多目的スタジオを整備する計画。整備場所は約800席のホールを備えた徳島県郷土文化会館に近い藍場浜公園西エリアで、施設整備費を172億8,000万円とし、民間のノウハウを活用する公募型プロポーザル方式でトータルコストを低減する提案を求めていた。

 新ホールは、飯泉嘉門前知事時代に徳島市文化センター跡地(徳島市徳島町城内)に整備することが決まり、受注企業も決まっていたが、2023年の知事選で現知事の後藤田正純氏が計画見直しを掲げて飯泉前知事らを破った。その後、整備場所を藍場浜公園に移し、5月に事業者公募を始めたものの、応募がなかったため、7月に中止した。

 徳島県は完成後の収入を見込める管理運営を業務に追加するとともに、資格要件を緩和して参加の間口を広げ、10月に再公募していた。しかし、最初の公募時点から業者側からコスト面の課題を指摘する声が出ていたのに、施設整備費は見直さなかった。

 人手不足や円安などから、建設事業費の高騰が続き、各地で大型再開発の白紙撤回や見直しが続いている。徳島文化芸術ホールの整備は空洞化が続く徳島駅前活性化の切り札と期待されていただけに、徳島県の甘い見通しに批判の声が上がりそうだ。(記事:高田泰・記事一覧を見る

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