AIブームのカギを握る、ソフトバンクGの動向
2025年11月14日 13:48
●ソフトバンクGがエヌビディア株を全売却
ソフトバンクグループ(G)が11日の業績発表で、所有するエヌビディア株の全株式となる3210万株を、58億ドル(約9000億円)で売却したことを発表した。
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翌12日の株式市場では、日経平均の上昇にもかかわらず、ソフトバンクG株が一時10%下げる場面もあった。エヌビディア株も、発表後に取引市場で一時約4%下げた。
市場ではAIブーム終焉の悲観的な声も聞こえるが、ソフトバンクGの狙いと今後の動向に注目が集まる。
●ソフトバンクGとAI投資
ソフトバンクGの孫正義会長は「AIこそ次の中心技術」として、2010年代からAI投資に積極的だった。
2016年には半導体設計大手の英ARM社を約3.3兆円で買収。同年にはサウジアラビアの公的ファンドから巨額の金を集め、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立した。
ビジョン・ファンドはAIを活用してビジネスを変革しようと、配車サービスのUberやシェアオフィスのWeWorkなどに投資をしてきた。
エヌビディア株は2017年ごろに40億ドル(約6160億円)で取得し、2018年2月時点でビジョン・ファンドが約4.9%保有していたが、2019年1月に一度売却している。
その後買い戻し、直近でも4位の大株主だった。
●本丸はエヌビディアの決算発表?
エヌビディアを売却した資金は、ChatGPTを開発するOpenAIや米国内のデータセンター設立に充てると見られる。
エヌビディアの伸びしろを見切っての売りなのか、半導体製造からインフラ構築とモデル開発へのシフトチェンジなのか、その見方は分かれる。
いずれにしてもAIへの投資姿勢に変わりはなく、孫会長にとって、AIは重要な投資先のままである。
エヌビディア株を全売却したが、再び買い戻す可能性も考えられる。
エヌビディアにとっては、19日の決算が正念場となる。株価上昇の勢いは止まりつつあり、好調と予想されている8-10月期の決算が予想を下回ることになれば、失望売りが広がりかねない。
トランプ政権による半導体「H20」の中国への輸出規制も終わりが見えず、11-1月期の見通しが芳しくなければ、8-10月期の決算が良くても売られるリスクもある。
これらの状況を考え、ソフトバンクGはエヌビディア売却を“潮時”と考えたのかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)