ローコスト型スーパー「TRIAL GO」が東京初進出 小売業界への影響は?
2025年11月8日 13:56
●注目の小型スーパー「TRIAL GO」東京初店舗が11月7日オープン
既存の小売大手には脅威になるかもしれない。トライアルホールディングス(HD、東証グロース上場)のグループ会社が展開している、ローコスト型スーパーの東京初店舗となる「TRIAL GO西荻窪北店」(24時間営業・年中無休、店舗面積約50坪)が2025年11月7日にオープンした。
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TRIAL GOはこれまで福岡県を地盤として店舗を増やしてきたが、同県で実証を重ねた「食」と「都市型ローコストオペレーション」を両立させる新たな小売モデルが確立されたため、満を持して東京に進出したものだ。
●西友との経営統合で加速するサテライト型店舗運営
TRIAL GOの特徴は、セルフレジに加えて顔認証決済やリモート年齢確認などのテクノロジー導入で店舗運営の省力化を図っていることである。これによって決済の完全無人化に近い体制を実現している。商品の発注も需要予測に基づいて自動で行われるというから、省力化がハンパではない。
さらに注目すべきは、経営統合した大手スーパー「西友」の大型店舗と、自社の「トライアル」店舗から高頻度でTRIAL GOへ商品を配送するサテライト型店舗の体制を構築していることだ。
これによってスペースの小さいTRIAL GOはバックヤード(在庫置き場)を持たずに運営できるため、売り場面積を最大限に活用できる。
●コンビニや大手スーパーの脅威になるか
TRIAL GOは東京でも話題になることは間違いないが、今後の注目はコンビニや既存の大手スーパーにどの程度影響を与えるかである。小型で低コストの高速出店が可能なことから、今のところコンビニのほうが影響を受けやすいと見られている。24時間営業という点もコンビニとバッティングする要素だ。
コンビニ大手3社の中で2025年8月中間決算が唯一営業減益となったセブンイレブンにとっては、追い打ちをかけるような競合の出現といえるだろう。
スーパーと異なり、コンビニのオーナーはドミナント方式(同一エリアに複数店舗を出店すること)で店を持つ例が多いので、TRIAL GOが出店したエリアで影響が大きくなる可能性がある。
●投資先としてのトライアルHD今後の見通し
投資先としてのトライアルHDにも注目したい。同社の業績は2025年6月期で25期連続増収を続けている。これは積極的に出店を行っているためだ。
2025年6月期の売上高は8,038億2,900万円で、前期比約12%の増収となっている。続く2026年6月期のグループ売上高は1兆3,225億円と大幅増収を見込むが、これは2025年7月に買収した西友の売上高がフル寄与するためである。
業績は好調で、株価は今後の成長を見込んで2,087円(2025年11月7日終値)まで買われている。これはPER510.27倍という高さだ。
しかし1株配当16円(会社予想)、配当利回り0.77%(2025年11月7日終値換算)と株主還元には消極的で、小売業であるにも関わらず株主優待も実施していない。
現時点で割高感は否めないが、ローコストのTRIAL GOが関東で本格展開すれば、利益の拡大から次第に割高感は払しょくされる可能性がある。
それにしても昭和スーパーのレガシーになりつつあった西友が、最先端スーパーTRIAL GO躍進の鍵を握る存在になるのだからわからないものだ。(記事:丸山優太郎・記事一覧を見る)