健康経営企業認定フォロー:ウェルネスはIPO人気を振り払っただろうか

2025年10月17日 13:41

 ウェルネス・コミュニケーションズ(366A、東証グロース市場、以下ウェルネス)。時代を反映する興味深い企業が、今年6月23日に上場した。会社四季報の特色欄には、こう記されている。『健診の予約や結果の一元化を行う事業を企業向けに展開。SaaS型の健康管理クラウドも』。

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 経産省を軸に、「健康経営企業」意識の高まりがある。それは、こんな枠組みで促されている。

 10年前から日本健康会議が「健康経営法人」の認定を展開。徐々に細分化され今年(2025年3月)の認定では「大規模法人部門」は「ホワイト500」に3400法人が、「中小規模法人部門」では、1万9796法人(上位500法人:ブライト500、501~1500法人:ネクストブライト1000の冠が付加されている)が認定されている。

 認定された企業には「健康経営優良法人」のロゴマークが付与される。与えられたロゴマークは単に名誉賞ではない。「自治体や金融機関で様々なインセンティブが受けられる」とされる。

 いわばウェルネスは、認定企業と成るためのフォローアップ的な存在。

 ウェルネスは2003年に社内ベンチャー制度体制を敷く、伊藤忠商事で生まれた。06年には伊藤忠の100%出資により設立され、ネットワーク健康診断サービス事業が開始された。

 ウェルネスが立ち位置を置くフィールドは、競争相手が多い。が大株主を眺めて貰えば分かる通り、その資金量は潤沢。かつ伊藤忠が設立した当初から「伊藤忠発のベンチー」効果で、外国人投資家の参入が顕著化。現状で総発行株式の40%超が外国人持ち株比率に至っている。

 そうした「大株主構成」「外国人投資家人気」が、ウェルネスの同様な事業マターでの企業譲受の積極化を容易にしている。

 そうした流れが、事業展開の拡充・拡幅につながっている。手元の四季報材料欄には「M&Aなどを通じた業界再編に意欲的」と記されている。

 またこの10月1日には、『仕事と介護の両立支援サービスの提供開始について~仕事と介護の両立を支援し、介護のウェルビーイング経営を推進する~』と題するリリースが配信されたが、仕事と介護の両立はクローズアップされている大きな課題。「従業員の仕事と介護の両立を支援する」枠組みの構築は、健康経営企業を目指す法人にとって垂涎の的。

 ウェルネスは6月23日、公開価格2480円に対し初値3300円で期待されて生まれた。高値は6月24日の4120円、安値8月12日の2680円。時価は3000円出入り水準。未だIPO人気は振るい落とされていない。しばしは、様子見が賢明か・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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