世界最高の量子コンピュータへ! 富士通にかかる期待

2025年8月10日 22:09

●富士通が世界最高の量子計算機開発へ

 日経新聞の報道によると、富士通が理化学研究所などと連携し、世界最高レベルの計算能力を持つ超伝導方式の量子コンピュータの開発を、2030年度までに目指すと言う。

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 富士通は計算速度で世界一となったスーパーコンピュータ「富岳」などを手掛けており、2023年には、日本企業で初めて量子コンピュータの実機稼働に成功している。

 量子コンピュータは、スーパーコンピュータが何千年も要する計算を数時間で完結するとされている。

 将来的に新薬や新素材の開発、金融工学などに役立つと言われており、富士通は覇権を握ることができるのだろうか?

●量子コンピュータとは?

 量子コンピュータは、量子力学の原理を応用して計算を行う次世代のコンピュータである。富士通が採用する超伝導方式の他に、イオントラップ方式、中性原子方式、光方式など様々な方式がある。

 従来のコンピュータでは、情報を0か1のどちらかの状態として扱うビットとして表現している。スーパーコンピュータは、従来型のコンピュータと比べて、大量のCPUやGPUが必要となる。

 量子コンピュータは、0と1の状態を同時に持つことができる量子ビットにより「重ね合わせ」や、互いに影響し合う「もつれ」を利用することができる。

 超伝導方式は、電気抵抗がゼロになる状態を利用して量子ビットを実現・制御する。

 課題としては、電気抵抗をなくすために大型冷凍機で―273度まで冷却する必要があり、計算時の省力化や製造コスト低減が挙げられている。

●経済安保の面でも必要

 人工知能(AI)と同様に、量子コンピュータ(超伝導)も米IBM・グーグルなどが参入しており、米中の覇権争いも激しくなっている。

 国産量子コンピュータの開発に向けて、日本政府も富士通に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて100億円程度の補助金を出すと見られている。

 富士通は4月には、従来比4倍となる、世界最大級の256量子ビットの超伝導量子コンピュータを開発している。

 ただ、実用的な計算には100万量子ビット以上が必要と言われており、まだまだ道半ばである。

 量子コンピュータの実用化が実現すれば、大型冷凍機などの関連産業も拡大すると見られ、国内の経済成長にも大きく寄与するだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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