相場展望7月14日号 米国株: 新トランプ関税で、不協和音が増大⇒株式市場に懸念増す 日本株: 参院選挙と、石破首相の米国へ反発で新関税の変化に注目
2025年7月14日 11:54
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/10、NYダウ+192ドル高、44,650ドル
2)7/11、NYダウ▲279ドル安、44,371ドル
【前回は】相場展望7月10日号 米国株: 銅にも25⇒50%関税引上げ⇒アメリカ・ファーストを損なう恐れ 日本株: 石破首相は、トランプ関税でより頑固な日本対応にどう対処?
●2.米国株:新たなトランプ関税で、不協和音が増大⇒株式市場にとって懸念増す
1)米国株は胸突き八丁に差し掛かる
・NYダウの推移
12/04 45,014ドル
01/10 41,938
01/30 44,882
04/08 37,645
07/03 44,828
07/11 44,371
・フィラデルフィア半導体株指数(SOX)のい推移
07/10 5,904
04/08 3,562
07/10 5,708
07/11 5,696
・NYダウは高値圏にある。米国株上昇を牽引してきた人工知能(AI)関連のエヌビディアは時価総額が4兆ドル突破するなど、SOX指数は急騰を果たした。
・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数やS&P500種株価指数も最高値を更新している。
・NYダウは高値圏にあり、12/4の45,014ドルを抜けていない。ナスダック総合やS&P500種の最高値更新と比べ、NYダウは勢いが弱い。消費関連など出遅れ銘柄に買いが向かうなど、相場の焦点がボヤケてきた。この状況からみると、米国株全体的に胸突き八丁の踊り場に差し掛かっているようにみえる。
2)トランプ新関税で、ドル高・金利上昇
(1)ドル相場は円やユーロなどに対して上昇
・円相場の推移
7/01 142.68円 (日本時間)
7/11 147.42 (米国時間)
7/01⇒7/11で、▲4.74円安が進行した。
・貿易摩擦を巡る懸念が再燃しドル高となり、対円・ユーロが下落。
(2)金利が上昇。
・金利の推移。
米国10年債利回り 米国2年債利回り
7/01 4.242% 3.773%
7/11 4.412 3.893
・特に、10年債利回りの上昇は、株式に相対的な割高感が意識されるため、株式は売られやすくなる。
3)米国株は7/11、関税懸念が重荷となり、利益確定の売りが増加した。
・米国株式は最高値を更新しており、高値水準にあるため、懸念の発出で利益確定の売りが出やすい環境にある。
・関税収入は真っ先に収入増として財政赤字削減に効果が出るが、跳ね返りの値上げによる物価上昇は遅効性がある。この点を注意して受け止めたい。
・トランプ減税・歳出法による財政負担はこれからのしかかることになる。国防費・国境警備費などの支出増はこれから始まる。
4)今週から四半期決算発表や主要経済指標が公表されるため注目したい。
・主要企業の4~6月期決算発表が、大手銀行から始まる。
・6月米国消費者物価指数(CPI)、6月米国小売売上高が発表される。
5)新たなトランプ関税で、不協和音が増大⇒株式市場にとって懸念が増す
・カナダに35%の関税。
・カナダは、報復関税・原油禁輸・新デジタル課税法も撤回した。にもかかわらず、トランプ氏は新関税率を適用した。
・欧州連合(EU)の新関税率が30%と発表された。
・NATO諸国は、トランプ氏の要求を受け入れて軍事費の大幅増額を決定した。それだけに、EUに対するトランプ新関税に対する市場の反応に着目。
・トランプ氏は「TACO」(トランプはいつでも尻込みする)を気にしているかもしれない。その反発心が「新関税」となって噴出しているかもしれない。
●3.米国財政収入、6月は+270億ドルの黒字、過去最高の関税収入で(ロイター)
1)関税収入が過去最高の272億ドルを記録したことが背景。
●4.新たな関税措置で利下げが遅れる可能性、見通し不透明=シカゴ連銀総裁 (ロイター)
1)カナダに35%、ブラジルに50%と新たな関税措置によって、インフレを巡る新たな懸念につながると指摘した。関税措置を巡る新たな脅威で利下げが遅れる可能性があるとの認識を示した。
●5.米国・新規失業保険申請件数は4週連続で減少、継続受給件数は2021年以来の高水準
1)先週の新規申請件数は22.7万件と▲0.5万件減少、予想23.5万件。(ブルームバーグ)
●6.エヌビディア株、時価総額が7/10終値で4兆ドル突破(ロイター)
●7.関税の影響見極めは時期尚早、年末ごろに明確になる可能性=セントルイス連銀総裁(ロイター)
●8.FRB「利下げ時期近づく」、2回が有力、秋にも検討=サンフランシスコ連銀総裁(ロイター)
●9.ウォラーFRB理事、FRBのバランスシートは6.7⇒5.8兆ドルに縮小可能(ブルームバーグ)
●10.TSMC、第2四半期売上高は予想を上回る、AI需要旺盛(ロイター)
●11.「TACO」と戦うトランプ氏、8/1の期限に懐疑的な見方(Quick Money)
1)米国ワシントン・ポスト紙は7/9、トランプ大統領が「TACO(トランプ氏はいつも尻込みする)」という不名誉な評判と戦っていると、報じた。ホワイトハウスで通商政策を担当のナバロ上級顧問が4月に「90日間で90件の合意」を達成すると約束したが、期限だった7/9までに合意したのは2件で、88件の貿易合意は未達のままだとしている。
2)企業の最高経営責任者(CEO)や投資家、各国首脳は、トランプ氏が8/1の新たな期限を守るかどうか懐疑的だ、と伝えた。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/10、上海総合+16高、3,509
2)7/11、上海総合+0.50高、3,510
●2.中国は30兆円超の規模の追加刺激策が必要、米国関税への対応で=人民銀行顧問(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/10、日経平均▲174円安、39,646円
2)7/11、日経平均▲76円安、39,569円
●2.日本株:参院選挙結果と、石破首相の米国へ反発で新関税の変化に注目
1)米国関税や参院選挙に不透明感
・日経平均の推移
2024年07/11 42,224円
08/05 31,458
10/15 39,910
12/27 40,281
2025年04/07 31,136
06/30 40,487
07/11 39,569
・日経平均は昨年7/11高値以降、40,000円が壁になっている。
・トランプ新関税公表(日本24⇒25%、欧州20⇒30%、ブラジル10⇒50%)と世界に緊張を高めている。しかも、根拠に米国貿易赤字の解消を上げていたが、ブラジルのように政治的目的を果たすために関税を使い始めている。ブラジルは、米国にとって英国と同様に貿易黒字国である。ブラジルに50%もの高関税を課す経済的理由はない。トランプ氏の「関税」を使って「自己主張」を実現しようとするのは、株式相場にとってリスクである。
・参院選挙で自民・公明は少数与党になる確率が高まってきた。石破首相は劣勢が伝えられると、今まで否定してきた「給付」を主張するなど右往左往している。政治の流動化は株式市場は好まない。
・参院選挙後の相場展望が難しくなってきた。トランプ新関税も、石破氏発言「(トランプに)舐められてたまるか!」発言に反応してくるかもしれない。米国に対して反関税のEU、ブラジルの例のように、「24%⇒25⇒さらに追加」の関税引上げのリスクを背負ってしまった。中国に対して、パンダをおねだりする「下手」姿勢に対して、強烈なトランプ氏と米国に対抗心を燃やした発言をした石破首相。石破首相は、日本にとって「リスク」そのものとなった。
2)海外短期筋が株価指数先物で7/10、「売り」転換した可能性
・7/10の株式相場
・7/10は上場投資信託(ETF)の分配金(配当金に相当)捻出のため約9,000億円の売りが予想されていた。したがって、日経平均の弱含みは想定の範囲だった。
・この状況を先取りして、海外短期筋が売り方に回ったのは普通だった。
・地合いとしては、円相場が「円高」方向に転じたことで、輸出関連株は売られやすかった。
・7/11の株式相場
・前日の米国株式市場の上昇、日本のETF配当金捻出売りの通過を背景に買いが先行し一時+300円超の上昇したが、終値は▲76円安。空売り比率も37.6と低い水準だったにも拘わらず、日経平均下落した。空売り比率:7/10 44.2⇒7/11 37.6
ただし、ファーストリテイリングの1銘柄で日経平均を▲262円安と下押しした。それにしても、環境の良い日にも関わらず日経平均が反落したことに着目したい。
・海外短期筋、なかでも投機筋の動向を注視したい。
3)日経平均は底堅さがある
・新高値・新安値銘柄の推移
新高値 新安値
7/01 87 13
7/11 180 3
・高値追いの銘柄数が多く、売り叩き銘柄数が少ない。
・新高値銘柄数が新安値数と比べて圧倒的に多く、日経平均の地合いの強さを示している。
4)為替は円安方向にあり、輸出関連株が買われやすい環境にある
・円相場は、7/1⇒7/11の間に▲4.72円も下落しした。トランプ新関税の公表もあり、さらにドル高・円安が進み150円台を目指す勢いが感じられる。このため、円安が企業業績にプラスとなる輸出関連株に買いが向かう可能性。
5)参院選挙までは、日経平均は堅調さを保つだろうが、選挙結果で動く可能性あり
・政治の流動化、トランプ新関税の対日本への対応など、問題山積である。
・不用意な石破首相発言が「日本への関税30~35%」引上げリスクをもたらすか?要注目である。トランプ氏は同じ宗教派閥である「キリスト教長老派」に属する石破首相を好意的に遇してきたと思われるだけに、対応変化に注視したい。
●3.日産、外貨建て債で総額6,600億円を調達、発行利率は過去最高を更新(ブルームバーグ)
1)巨額赤字の計上を受けて財務基盤の立て直しを急ぐなか、発行利率は最大8.125%と同社としては過去最高となった。これまでの最高利率は1986年の10年債の7.5%。
2)日産は信用格付けがジャンク級に引下げられ、今回の社債発行ではこれまで最も高い表面利率を提示した。信用リスクの指標であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は7/8、2009年以来の高水準を記録した。
3)日産およびグループ会社は、2025~2026年にかけて、合計約1兆円の社債償還を控えている。
●4.ファーストリテイ、2024年9月~2025年5月期は+12.2%営業増益、米関税影響は限定的(ロイター)
●5.6月の企業物価指数、前年同月比+2.9%上昇(NHK)
1)伸び率は、前月の+3.3%から縮小し、2%台になるのは10ヵ月ぶりです。
2)日銀は、海外経済や地政学リスクの影響のほか、トランプ政権の関税措置で企業の業績への懸念されるとした。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2685 アダストリア 業績好調
・8698 マネックス 黒字転換
・6367 ダイキン 業績順調
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