腫瘍細胞の血管を標的にした新しいがん治療 北大らの研究
2022年4月4日 16:09
腫瘍にとって、血管は増殖させるための栄養を運ぶ経路である。そのため、この血管をターゲットにした治療法の開発が進められている。この時重要なことは、正常な組織の血管にはダメージが起こらないようにすることだ。
【こちらも】前がん細胞が正常細胞を排除し拡大する仕組み解明 治療法開発に期待 京大
北海道大学の研究グループは、腫瘍血管が特異的に発現しているBiglycanを標的にした、ナノドラッグデリバリーシステムを開発。そのシステムを用いた結果、腫瘍の治療効果を期待できることを明らかにしたと発表した。Biglycanは、腫瘍治療の標的となっていくことが期待できるという。
この研究は、北海道大学の間石奈湖助教、樋田京子教授、同大学院の原島秀吉教授,、北海道大学病院の樋田泰浩准教授らの研究グループにより行なわれ、3月9日にCancer Science 誌にオンライン先行公開された。
そもそも血管は、体中の組織に酸素と栄養を運び、老廃物と二酸化炭素を取り除いて運ぶ血液の通り道である。がん細胞が増殖する時、必要な酸素と栄養を運ぶために、がん組織の中に新たな血管が作られる。これを血管新生という。
この血管新生によって作られた血管は、がん組織に酸素と栄養を運ぶだけでなく、がん細胞が転移していく通り道としても使われる。そのため、血管新生をさせないことはがんの増殖、転移を防ぐ重要な手立てとなる。このような血管新生阻害剤はすでに多くのがん治療に用いられている。
だががん組織の血管はもろく漏れやすいため、薬剤が標的にしっかり届きにくいという問題がある。さらにこれらの薬は正常な組織の血管にも影響を与えてしまうことがあり、その副作用が問題になってくる。
研究グループは、腫瘍細胞で特異的に増えているBiglycanが、血管の機能異常の原因となっていることをこれまでに明らかにしてきた。またBiglycanの発現が腫瘍の予後不良に関連していることもわかってきている。
今回研究グループは、Biglycanを血管表面から消失させる作用を持つsiRNAを封入したナノドラッグを、胆がんマウスに投与。治療効果を検討したところ、ナノドラッグにより腫瘍血管のBiglycanの発現を抑えることができた。その結果、腫瘍が小さくなり、繊維化が抑えられたという。
また腫瘍での血管新生が抑えられるとともに、血管の機能が正常になっていることがわかった。つまり、Biglycanを標的にしたナノドラッグに腫瘍抑制の効果があることが明らかになったのだ。
腫瘍細胞の血管が正常化し繊維化が抑えられることで、抗がん剤や免疫療法による治療効果が上がることが期待できる。今後はがん治療へと実用化されていくことが期待される。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
最新記事
- NVIDIAら、実機ロボットの研究開発を完全自動化するフレームワーク「ENPIRE」発表―AIが検証からコード修正まで実行
- Z.aiが「GLM-5.2」のオープンウェイトを公開、性能はClaude Opusに迫るもAPI経由のデータ送信に中国法上のリスク指摘
- 【内部リーク】Metaが数千人の技術者をAI訓練用のデータ作成に投入、社内からは「強制収容所」と自虐する不満が噴出
- 『R-Type Tactics I・II Cosmos』が6プラットフォームで海外発売へ―幻のPSP続編が16年越しに初の英語化
- ChatGPTのシェアが初の50%割れ、GeminiとClaudeが猛追――Sensor Tower調査