天の川の中心付近で生命の起源となる物質の痕跡確認 スペインなどの研究

2021年5月27日 08:59

 これまでに人類は地球上の多くの謎を解明してきたが、自分自身の起源、つまり生命がどんなプロセスを経て誕生したのかについては、解明の糸口すらまだつかめていないと言っても過言ではない。だが、スペイン国立航空宇宙技術研究所らの国際研究チームは、宇宙のごくありふれた場所でエタノールアミンが存在している痕跡を見いだしたと発表した。

【こちらも】地球生命起源の評価と地球外生命体の存在予測 グラナダ大学の研究

 研究論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されており、銀河系の中心部付近には巨大な分子雲が存在し、それを観察するとエタノールアミン(NH2CH2CH2OH)の痕跡が多数見いだされるという。

 生命の最も重要な構成要素である細胞は細胞膜によって成り立っており、その細胞膜を形成しているのはリン酸脂質と呼ばれる物質だ。エタノールアミンはこのリン酸脂質の頭部を構成する分子である。つまり、銀河系の中心部付近で今回発見されたエタノールアミンの存在は、細胞膜の起源となった分子が宇宙のごくありふれた場所で合成されたことを意味している。

 2017年に飛来したオウムアムアが太陽系外天体であったように、太陽系外から天体が地球付近に飛来することは、それほど珍しい事件ではなく、時には地球の引力に捉えられ、衝突した事実もあったことだろう。46億年にわたる地球の歴史の初期に銀河系の中心部付近から、今回発見されたようなエタノールアミンが付着した天体が飛来し地球に到達したとすれば、そこで生命誕生の条件が整う時間と環境さえそろえば、生命は誕生できた可能性があるのかもしれない。

 生命誕生プロセスのすべてが、この地球上で起こったと仮定してしまうと、そんな複雑な化学反応が地球誕生から数億年という短い期間で起こりうるのかどうかという、絶望的な議論に行き着かざるを得ない。だが宇宙ではエタノールアミンはごくありふれた存在であり、そこを出発点として、地球で生命が誕生したというロジックならば、生命誕生に必要とされる時間はかなりの節約ができ、数億年という時間は生命誕生の可能性に現実味を持たせてくれる。

 とはいえお世辞にも人類が地球上での生命誕生の謎を解明したとは言えない状況にあるのは確かであり、今後の研究の進展を見守りたいものである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事

最新記事