5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (44)

2020年11月12日 16:49

 今日は、【イノベーション特講(3)】です。前回、イノベーションとは「マイノリティのための設計にもかかわらずマジョリティにも理解・受容されていく製品やサービス」で「不可逆的で、新しい行動習慣として根付くもの」だと定義しました。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (43)

 今回は、「イノベーションを生み出す工程」を少し話していきたいと思います。

 既存製品やサービスから「~~~だったらイイのに!」といった生活者の不満や問題点を発見し、それらを解消するための全く新しい製品・サービスをアイデアによって創出する。平たく言えば、これが工程です。つまり、「何かしらの問題解決という目的」をアイデアで実現していく工程になります。

■(46)イノベーションの工程は、最初に「アイデアで達成すべき目的」と「実現したい状態」を先鋭的な言葉で立脚させる


 まず、最初に「アイデアが達成すべき目的」を定義し、「現状とイノベーション後(問題点と答え)」を言葉によって可視化します。「創るべきアイデアの方向性」を定めていくのです。

 では、渋谷の公園内にある「透明のトイレ」を参考に「イノベーションの工程」を推測していきましょう。以下、ワークシートとして読み進めて下さい。

【生活者が抱える不満・問題点】: 公園の女子トイレで男が隠れ待つ性犯罪が頻発している。
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【アイデアが達成すべき目的】: 女子トイレ内での待ち伏せを不可能にすることで性犯罪を未然に防ぐ。
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 この目的を「場所、ユーザー、イノベーション後の状態」の3つに分解して、さらに明確化していきます。

 (1)場所: トイレを
 (2)ユーザー: 女性が
 (3)イノベーション後の状態: 昼夜安心して使用でき、誰も隠れ潜むことができない場所にする。


 以上の規定から、(3)の「(トイレを)誰も隠れ潜むことができない場所にする」ためのアイデアに注力すればよいことが解ります。これで、いったんアイデアを考える方向が絞られました。
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【アイデア】
 (A)トイレ内で男に待ち伏せされないためにはどうするか?監視カメラを置くか。いや、この方法では予防にならない。→ NG

 (B)性別を区別する顔認証カメラを置いて、これに反応する警報ブザーを取り付けるか。これでは費用がかさみ過ぎる。→ NG

 ここで、さらに「アイデアが達成すべき目的」を言葉で先鋭化して、再考してみます。
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 (C)「犯人に入り込む隙を与えない予防設計にする」とタイトに定めた結果、ガラスの外壁で覆われた「透明のトイレ」を考案。

 ここで新たな問題です。確かに全て外壁が透明ガラスで覆われていれば、常時周囲に見守られていることになるので、誰も隠れ潜む行動がとれません。しかし、透明のままでは周囲に丸見えで用が足せず、トイレとして機能しない問題・矛盾が生じてしまいます。つまり、(3)の「昼夜安心して使用」が実現できない状態になります。
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 (D)そこで、「通電する特殊ガラス」を使用。トイレに入って施錠すると自動的に不透明な曇りガラスに変わり、外から中が見えなくなるという仕掛けにして、問題を解消したと推察されます。
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 最終的に(C)+(D)で、イノベーティブな防犯トイレが完成しました。

 「アイデアが達成すべき目的」を定義・可視化し、「現状とイノベーション後(問題点と答え)」も精確に明文化する。だからこそ、先鋭的な「アイデア出し」が可能になります。このようにタイトに規定された工程ならば、途中で生じる問題点も難無く解消でき、強いアウトプットへと昇華していきます。たとえ迷ったとしても、立ち返ればいいのです。

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