人工知能を活用した銀河の自動分類技術を開発 国立天文台

2020年8月12日 17:13

 我々の宇宙には無数の銀河が存在している。高解像度の望遠鏡で夜空を捉えた際には、あらゆる場所に数えきれないほどの銀河が写っていることに驚かされる。恐らく銀河系内にあるすべての星の数と比較しても、宇宙全体にある銀河の数のほうがはるかに多いことだろう。この無数とも言える銀河をしらみつぶしに研究していくとしたら、その作業は気の遠くなるような退屈な作業になることは誰にでも容易に想像がつく。

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 だが、つい最近この退屈な作業から科学者たちを解放する画期的な技術が開発された。国立天文台は10日、すばる望遠鏡の超広視野カメラで捉えた56万個にも及ぶ銀河について、人工知能の技術を用いてその形態の分類を試み、高精度で自動分類を行うことに成功したことを公表した。

 銀河は様々な形状をしており、それらを分類して、詳細な分析を進めることで、誕生のメカニズムや進化のプロセスを解明できる。しかしながら、無数に存在する銀河を分析していくには時間がいくらあっても足りない。

 国立天文台によると、今回開発した人工知能を活用した自動分類技術をフル活用しても、まだまだ分析時間は不足するという。そのため広く市民に呼びかけ、人間の目による銀河の分類作業も並行して進めることで、不足する時間を補っていく方針だ。市民の目と人工知能が手を組むことで、銀河の研究効率を飛躍的に高めていく。

 また、この技術を用いて、銀河をS字型渦巻銀河とZ字型渦巻銀河、渦巻模様のない銀河の3つに分類。S字型とZ字型の渦巻銀河、また宇宙全体の渦の分布を調べ、私たちの宇宙が一様で等方的な存在なのか、それともある種の規則性を持った存在なのかを確かめる研究も進めている。その状況は、7月2日に英国の王立天文学会誌で公表している。

 もしも宇宙が一様で等方的な存在であれば、S字型渦巻銀河とZ字型渦巻銀河はどの方向を眺めてみても、ほぼ同じ割合(つまり1:1)で存在しているはずである。だが、先に示したように、宇宙全体の銀河をしらみつぶしに調べ上げていくにはまだまだ時間が足りない。この研究の結論を得ていくためには、やはり市民の目の活躍にも、大きな期待がかかっているのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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