東京建物の中計は買いか

2020年7月9日 06:33

 1896年(明治29年)10月に、旧安田財閥の創始者:故安田善次郎氏によって設立された日本最古の総合不動産会社はどこか。答えは東京建物。初の割賦販売方式を不動産取引に適用した。いわば法人初となる不動産担保ローンの導入である。

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 また早々に不動産鑑定事業とも取り組んでいる。1896年といえば日清戦争の直後。ある意味で経済勃興期。だが法制度などは未整備の状態。不動産取引でも詐欺まがいが横行した。東京建物では「そうした状況下で、不動産取引の品質向上・安定化を目的に設立された」とする。

 今回、東京建物を取り上げたのは至2024年12月期までの「新規中期経営計画」が策定・始動された為だ。至19年12月期の中計では、目標の営業利益を上回る524億円と過去最高を記録した。諸々の角度から不動産業界の先行きに疑問符が指摘される中、新規中計でどんな点が標榜され掲げられているのかは興味深い。

 収益面では、連結事業利益(連結営業利益+持分法適用会社の投資損益)750億円。財務面では「ROE8~10%」「D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本額)2.4倍」「有利子負債/EBITDA(税引き前利益に特別損益・支払利息・減価償却費を加味)倍率12倍程度」が掲げられた。収益の堅調な推移、財務面の健全性向上を打ち出した中計である。

 ではどんな形で目標の実現を図るのか。

 重点戦略として「大規模再開発の推進」「分譲マンション事業の更なる強化」「投資家向け物件売却の拡大」「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」「海外事業の成長」を掲げている。総花的、の感は否めない。が、為の投資計画として総額1兆4000億円規模を見込んでいるという段になり「本気度」を感じた。19年までの利益構成比率は「賃貸60%、分譲・売却30%、サービス10%」を「40%、40%、20%」にするという。

 果たしてその下地は、整備されているのか。カギを握るのは「再開発」であり「分譲マンション事業」の先行きに不透明感が強いとされる部門の展開であろう。

 が、東京建物が本社を構える東京駅八重洲口周辺エリアについては「水面下で他業者との連携を図りながらの再開発計画が進んでいる」とされる。他にも中央区・港区・渋谷区でも投資総額2300億円規模のプロジェクトが進んでいる。

 コロナウイルス禍で低迷している分譲マンション事業でも、「中計期間中に約6500戸分の売り上げを見込み、既に土地手当・進行分を含め約80%の達成率を手中に確保している」としている。

 さて、中計に買い向かうべきか。前回の中計(実現)を株式市場は反映した。15年1月の初値で拾い昨年末まで保有していると、投下資金は株価の値上がりだけで2倍弱に増えている。時価は1300円台入口。今年1月29日までジリジリと水準を切り上げ1828円に到達。利食い先行+コロナウイルス禍の影響で3月23日に904円まで水準を下げ、戻り基調。IFIS目標平均株価1716円を目途に中長期構えで臨んでみたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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