サバからクロマグロが生まれる? 生殖幹細胞の試験管内培養に成功 東京海洋大

2020年6月20日 09:24

 ニジマスの精子や卵のもとになる細胞である「生殖幹細胞」を試験管内で増殖させることに東京海洋大学の吉崎悟朗教授のグループが成功した。この技術を使うことで、例えば高級魚であるクロマグロの卵や精子を小型のサバ科の魚に作らせ、養殖用や放流用のクロマグロ稚魚を大量に生産していくことが期待できる。

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 この研究結果は15日のCommunications Biology に掲載される。卵子にも精子にもなれる生殖細胞の培養方法を確立したのは、全動物を含めて初めての報告となる。

 研究グループは、これまでにニジマスの生殖幹細胞を代理の親魚(ヤマメ)に移植し、ニジマスを産むヤマメを2004年に作り出していた。その後様々な魚で検討を行い、異種間での生殖幹細胞の移植が成立することを明らかにしてきた。

 ただしこの方法では、移植実験をするたびに魚を捕獲し殺して精巣から生殖幹細胞を得る必要がある。対象が高級魚や絶滅危惧種などの希少種となる場合、この方法は問題を抱えていた。そのため、生殖幹細胞を試験管内で増殖させる方法の開発を長い間目指してきていた。

 今回、精巣と近い環境を作るために、実際の精巣内で生殖幹細胞を育てる役割を持っているセルトリ細胞を利用することにした。まずセルトリ細胞をニジマスから取り出し、その培養細胞株、つまり試験管内で増殖可能な細胞を作成した。

 そのセルトリ細胞をシャーレの底に敷き詰め、その上に生殖幹細胞を重ねて培養できるかどうかを検討。培養液などの条件に改良を加えた結果、生殖幹細胞のシャーレ上での培養にようやく成功した。

 このようにして得られた培養系で32日間ニジマスの生殖幹細胞を培養したところ、その細胞の数はもとの100倍に増えた。また培養28日目の生殖幹細胞を、精子や卵子を作れない不妊のニジマスの稚魚に移植。移植された不妊ニジマスを2年間育てたところ、培養幹細胞由来の精子や卵を作れるようになり、そこからニジマスが生まれた。生まれてきたニジマスの染色体、DNA、姿形が正常であることも確認している。

 この技術を利用することで、今後クロマグロのような大型の水産業にとって、重要な魚の生殖幹細胞を小型のサバなどに移植して飼育することで、通常大きなスペースを必要とする大型魚の飼育をせずに、養殖用や放流用のクロマグロの種苗を大量に得ることが期待できる。

 また小型の絶滅危惧種の魚で生殖幹細胞を十分量得られないものについては、この培養技術により細胞数を増やして保存し残すことができる。さらにはその生殖幹細胞を代理親魚に移植して絶滅危惧種の個体自体を生み出すことも可能だ。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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