なぜこの世界は物質でできているの? 重力波から物質の起源を検証 東大の研究

2020年2月9日 15:29

 東京大学の村山斉主任研究員をリーダーとする研究グループは、宇宙初期の相転移による物質・反物質の入れ替えが、重力波観測によって検証できることを指摘した。

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■物質と反物質

 あらゆる物質には、電気的に正反対の性質を持つ反物質が存在する。

 反物質の発見のきっかけは、1928年にイギリスの物理学者ポール・ディラックが量子力学と相対性理論を使い、電子の運動方程式を導いたことだった。この方程式の解としてマイナスの電荷を持った普通の電子だけでなく、プラスの電荷を持った「陽電子」も現れる。

 陽電子は、1932年にアンダーソンが鉛板を入れた霧箱の実験で観測に成功した。現在では知られている荷電粒子のほとんどに、反粒子が発見されている。

 物質と反物質が一緒になるとどちらも消滅して、質量が光などのエネルギーの形に変わってしまう。これを「対消滅」という。

 物質と反物質の大きな違いは、物質はそこら中にあるのに、反物質はほとんど見つからないことだ。この宇宙には反物質よりも物質の方が圧倒的に多いようだ。

 もし、物質と反物質が互いに正反対のバージョンというのなら、ビッグバンで宇宙が始まったときに同じだけつくられたはずだ。そうすると、全ての粒子が反粒子と対消滅して宇宙には物質も反物質も残っていないはずだ。

 これを説明する理由として、宇宙の初期に反物質が物質に変化したということが考えられている。しかし、この変化がいつどのようにして起こったのかは謎のままである。

■宇宙初期の相転移

 「相転移」とは、沸騰した水が水蒸気になったり、水を冷やしていくと氷になるといった状態の変化のことである。

 物質の状態は臨界温度と呼ばれる特定の温度で変化する。相転移の例としては、他に金属の超電導体への変化がある。特定の金属を低温まで冷やしていくと相転移が起き、電気抵抗ゼロの超電導体になる。

 超電導体を用いて電磁石をつくると、電気抵抗がなく発熱の問題もないため、非常に強い磁力を発生させることが出来る。

 ビッグバン直後の宇宙は非常に温度が高い状態だったが、膨張に伴って温度が低くなっていく。臨界温度まで温度が下がると宇宙の相転移が起こる。この相転移によって反物質が物質に変化したと考えられる。

 宇宙初期の相転移では、超電導体のように「宇宙ひも」と呼ばれる非常に細い磁場の管が出来た可能性がある。

■今回の研究

 研究グループは、宇宙初期の相転移で出来た宇宙ひもが収縮する過程で、重力波が発生すると考えた。そしてこの重力波は、将来建設用程の宇宙重力望遠鏡で検出できる可能性があると提唱した。

 この研究内容は1月28日、「Physical Review Letters」に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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