業務用ロボット、競争時代の夜明け (中)

2020年1月3日 06:32

  業務用ロボットはいまや掃除用にとどまらない状況になっている。

【前回は】業務用ロボット、競争時代の夜明け (上)

 「Nimbo(ニンボ)」という、米国のチューリングビデオ社が開発した新しい警備ロボットの存在を知った。日本の販売代理店:CBCと、ニンボを採用しての巡回警備業務を想定している全日警が現在、国内の4カ所でテストを行っているという。

 ニンボは、2017年にシリコンバレー発のテクノロジーのベンチャー企業:チューリングビデオが開発した自動巡回が可能な警備ロボット。AI機能を搭載。自動で学習し、機能性の自動的なアップデートも可能。不審者・不審物の検出や音声による通報や警告、障害物の自動回避といったパトロールをこなす。

 また世界初の人が乗れるロボットで、電動立ち乗り2輪車「セグウェイ」のように乗車による警備業務もできる。巡回エリアが広い展示会場・倉庫・大規模なショッピングセンターなど人手に頼っていたのでは、時間や労力が掛かる場所に有効。アメリカのショッピングセンターの導入事例では自動巡回による24時間パトロールを実現し、業務の効率化に貢献しているという。

 CBCでは「操作はスマートフォンやタブレット端末などで簡単にでき、警備エリアのマップ作成や巡回ルート変更も容易。これまでの警備や清掃ロボットでは、導入時に巡回ルート作成や設定等々は専門の技術者の手で行われることが多かった。ルートのティーチング(ロボットに記録させる行為)も数週間の時間を要するケースが見られた。更にルートの変更設定に同等の手間と時間を要する点が課題だった。ニンボはそうした課題を解決し、かつ初めての人でも使いやすい・設定しやすい機能に仕上がっている」と至便性を強調している。

 全日警では、現状の警備業界が抱える課題についてこう語っている。

 「全日警の主な警備事業は、オフィス・商業ビルの警備。羽田空港や関西空港などの空港保安警備。東海道新幹線の沿線警備や列車警備。東京ドームや甲子園球場などイベント施設や雑踏の警備が主。これら業務の現場では“少子高齢化による人手不足”や“長時間労働”、東京オリンピックなど国際大会による警備業務の需要増加、警備コストの増加などが挙げられる。業界全体で改善に向けて取り組んではいるが厳しいのが現状。警備ロボットの導入を始めるデベロッパーの事例も耳にしているが、改善できたケースは少なかったというのが現実」。

 またこれまでの警備ロボットは安くても1台およそ100万円。高額な価格が普及の妨げになっていた。対してニンボは半価以下で導入が可能。

 更にロボットの横幅は約60cmと、中小ビルでの導入にも適したサイズ。大規模なオフィスビルや商業施設だけでなく、今後は中小ビルでの普及も進んで欲しいとの狙いから最小クラスのサイズと割安な価格を設定したという。

 「当面は施設警備業務の一部代替及び警備員の補助を想定し、全日警が警備する施設でのみ導入を始める。まだテスト段階では、ロボット単体での販売は計画していない。5年リース契約を主軸に、月々20万円前後の提供を計画中。現状は屋内仕様限定。来年は新機能の拡充を行いながらおよそ300台の普及を目指し、21年までには屋外使用が可能なモデルの投入を計画。1000台の普及を目指す」としている。
 (記事:千葉明・記事一覧を見る

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