植物が増殖するための仕組みは4億年以上前に発生した 神戸大などの研究

2019年11月11日 17:41

 植物はその生涯に渡って増殖を続ける。クローン個体を用いる栄養繁殖でも、被子植物が出す芽においても、その分子的基盤は共通であるらしい。神戸大学などの共同研究グループが明らかにした。

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 研究に参加しているのは、神戸大学大学院理学研究科の安居佑季子研究員 (現・京都大学助教)、石崎公庸准教授らと、京都大学大学院生命科学研究科・河内孝之教授、信州大学理学部・久保浩義教授、近畿大学生物理工学部・大和勝幸教授、マックスプランク植物育種学研究所・Klaus Theres博士ら。

 この研究で中心的に用いられたのはコケの一種でタイ類に属するゼニゴケである。学名をMarchantia polymorphaといい、2017年に全ゲノム配列解析が行われた。培養が容易であり、遺伝子の導入や改変にも向いているということで、近年新たなモデル植物として注目されているものだ。

 植物はその生涯を通じて、成長点を持ち続ける。成長点というのは、芽、幹細胞のことだ。それによって葉や花などへの器官分化を繰り返すとともに、新たな個体を発生させることもできる。

 クローン個体を媒介する無性生殖はその一種で、腋芽が地下茎になるジャガイモ、地上部の腋芽がムカゴとして独立して新しい個体となるヤマイモ、葉の周縁部に新しい個体が生まれるコダカラベンケイソウなど、いずれもこれにあたる。

 今回の研究では、GCAM1遺伝子という転写遺伝子が着目された。これを欠損された変異体のゼニゴケにおいては、杯状体が全く発生しないことがわかった。逆にこの遺伝子が生み出すGCAM1タンパク質を異常亢進させると、未分化状態の幹細胞が増殖した。

 ところでこちらもモデル植物である被子植物のシロイヌナズナでは、RAXs遺伝子を欠損すると腋芽が減ることが知られている。そこで、その欠損シロイヌナズナにゼニゴケのGCAM1遺伝子を導入したところ、腋芽の数は増えた。すなわち、この二つの遺伝子は、4億年以上前にさかのぼる共通祖先から受け継がれた相同遺伝子だと考えられるのである。

 研究の詳細は、Current Biologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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