捕食者が狙っている間は孵化しないダニの卵 京大の研究

2019年9月26日 11:24

 ケナガカブリダニの卵は頑丈である。捕食者である同種や近縁種のダニに狙われても、ほとんどの場合歯が立たない。しかし、孵化した直後の幼虫は簡単に食べられてしまう。そこでこの卵は、敵に攻撃されている(触れられている)時には孵化が止まる。その一連の事実を、京都大学の大学院農学研究科矢野修一助教と福勢かおる農学部学部生(現埼玉県農業技術研究センター)が明らかにした。

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 ダニというと哺乳類などの血を吸う虫(厳密には昆虫ではなく節足動物であるが)というイメージが強いが、カブリダニの仲間は農業害虫を捕食する益虫であり、人間を刺すことはない。彼らは植物の上で捕食者として暮らしているが、餌が不足するとすぐに共食いを始めるという性質がある。

 その際にもっとも狙われやすいのは、卵から孵化したばかりの幼虫である。いっぽう、前述のように卵は狙われてもただ転がるだけで、捕食されることはほとんどない。卵と言う状態は捕食に対し無力なものだと思われがちであるが、見方によっては頑丈な殻に守られている状態でもあるのであって、必ずしも一概にはそう言えないらしい。

 しかし、天敵が狙っている状況で卵から孵化すればすぐに食べられてしまう。研究グループは、その問題に着目し、ダニの卵は何かに触れられている状態では孵化が遅れるのではないかと考え、これを検証した。

 まず、孵化直前の卵を用意しなければならないので、ほぼ同じタイミングで生まれた複数の卵を用意した。そのうち半数が孵化したところで、残りも孵化直前であると考え、実験開始である。捕食者の攻撃をまね、極細の筆で卵に触ってみたところ、そうしなかった卵に比べて孵化が遅くなることが証明されたという。

 この捕食リスクに対する対処法は、陸上動物の卵ではより広く観測できる可能性があり、動物の卵を使った検証が必要であろうとのことである。

 なお、研究の詳細はScientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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