ヒューリックの木造ビル建設が持つ意義

2019年9月17日 11:55

 ヒューリックは不動産業界にあって、売上高ベースで11位に位置する準大手業者。同社はいま新規事業領域とし「3K」を掲げ、注力している。Kはそれぞれ「高齢者」「観光」「環境」の頭文字。

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 そんなヒューリックが2021年竣工予定の「(仮称)銀座8丁目計画」を発表した。「環境」領域に照準を合わせた事業である。地上12階・地下1階の商業施設。敷地面積251.98平方メートル、延床面積2451平方メートル。ポイントは「木造建屋」という点。

 周知の通り15年の「パリ協定」では「世界の平均気温の上昇を2度未満に抑え、1.5度未満とすることを目標とする」ことが宣言として謳われ、実現する為に日本に対しても「30年までに温室効果ガスの排出量を26%削減すること」が求められている。さて日本はどう取り組むのか。

 そうした時代の要請の中で10年に、林野庁の「国産木材利用促進」という観点から、「公共建築物等木材利用促進法」が制定・施行された。

 日本は国土に占める森林面積(森林率)が約67%という、世界屈指の森林大国。木はCO2を吸い酸素を作り出す。また日本の森林は樹齢50年以上を経た伐採期を迎えたものが多い。「木を活かすこと」「木の適宜な伐採」=「温室効果ガス削減」「自然災害からの国土を守る」として過言ではない。

 ヒューリックは独自に「30年までにCO2排出量の45%削減(13年比)」を掲げている。今回の計画は、まさにそうした流れへの「具現化」であり「挑戦」と言える。

 木造建屋は既に「耐火基準」をクリアしている。だが問題は「コスト」。

 ヒューリックの今回の計画でも「ファサード(外観)は全て木製だが、(コストの重さを軽減する為)内部の一部に鉄骨を使う」としながらも、「少子化(人口減少)という進捗の中で、木造戸建て住宅では(木の使用促進に)限度がある。高層建築物や大規模建築物での活用で需要を掘り起こしていくことが不可欠。今後とも木造建屋の活発化を進め、老人ホーム等(高齢者分野)での利用も視野に入れている」と言及している。

 木造ビルでは中長期計画を立て具体的に建設(準備)を進めている住友林業で、こんな話を聞いた。「展開している老人施設に、檜材の香りを漂わせている。入居者からは“気分が和む”と好評」。ビルでも木材の醸し出す香りは、同様の効果が期待できよう。

 ヒューリックに話を戻す。「木造ビル」への思いは「本気」と捉えられる。10月15日に東京・有楽町のヒューリックホール東京で、『“木”がつくる都市の未来 都市部における木材需要の拡大を目指してー中高層ビルの木造化への挑戦―』をテーマとするシンポジウムを行う。基調講演には今回の「銀座8丁目計画」で外観デザインを担当する、建築家で東大教授の隈研吾氏が立つ。

 木造ビルが鉄筋・鉄骨ビルに囲まれた「東京砂漠」に、「潤い」をもたらすことを期待したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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