土星の自転周期、その推定が難しい理由は? 米大学が原因を研究
2019年9月10日 19:07
太陽系の惑星で、自転周期の推定が厄介な土星。土星探査による計測結果に伴い異なる自転周期が推定され、科学者を悩ませてきた。米バーミンガム・サザン・カレッジの研究者から構成されるグループによると、原因は電磁場の振動やねじれに由来するという。
【こちらも】土星の1日の長さを正確に推定 カギを握る「土星の環」
■地上から計測困難な土星の自転周期
惑星の自転周期は、大きさや構成要素、公転周期とともに、惑星がもつ重要な事実のひとつである。惑星の記述だけでなく、振舞いや歴史の説明にも役立ち、惑星形成の手がかりを提供する。
土星や木星等のガス惑星は、地球のような固体表面をもたない。そのため、自転周期を計測するためには、惑星で回転する磁場が発生させる電波強度の周期的な変調を確認する必要がある。だが土星特有の問題が計測を困難にする。
木星は高周波の電波パターンを放射するため、自転周期を容易に計測しやすい。他方、土星は低周波の電波パターンを放射するため、地球の大気によって遮断される。そのため、地表から土星の自転周期を計測するのが困難だ。
■探査機からのデータ利用でも厄介な自転周期
土星の自転周期の推定には、探査機からのデータが活用された。1980年から1981年にかけて運用されたボイジャー1号と2号が、自転周期の推定に必要なデータを収集した。電波強度の変調が検出され、10時間40分で自転することが判明した。
ところが、米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同開発した土星探査機カッシーニからのデータから、異なる自転周期が推定された。ボイジャーに遅れること23年後に土星へ到達したカッシーニは、13年間惑星探査を続けた。
その結果、自転周期が2004年には6分ほど変化していることが判明した。これは全自転周期の1%にも及ぶ。また北半球と南半球とでも、自転が異なることが検出した電磁波のパターンから示唆されるという。
■土星の天候が自転周期計測を困難に
たった20年で自転速度が変化した原因は、土星の軸が傾いていることに由来すると、研究グループは考える。木星の軸が3度しか傾いていないのに対し、土星の軸は27度傾いている。この傾斜により、太陽からの放射が両半球で季節によって異なるのだという。
異なる紫外線量は、磁気圏のプラズマにも影響を及ぼす。そのため、夏から冬にかけて両半球の電波周期が変化するという。
研究グループが提案するモデルは、土星の「ありえない」自転周期の変化の謎を解き明かす。これまで推定された周期は土星のコアの自転周期ではなく、実際にはまだ計測されていないという。
研究グループは今後、カッシーニが集めた13年間の土星データと合致するようモデルを洗練させるという。
研究の詳細は、米地球物理学誌Journal of Geophysical Researchにて8月27日に掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る)