惑星の誕生現場と考えられていた若い恒星系で新惑星を確認  米国の研究

2019年6月6日 09:10

 誕生してまだ600万年しか経過していないPDS70という恒星は、2012年に国立天文台、プリンストン大学、神奈川大学、ミシガン大学、工学院大学、オクラホマ大学などの研究者を中心とする国際研究チームによって、その周りの原始惑星系円盤に大きな隙間が存在していることが突き止められていた。

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 原始惑星系円盤は、新たに誕生した恒星の周りを、濃いガスが取り巻いて回転することで形成される円盤のことを指すが、太陽も誕生直後にはこのような円盤が存在しており、そこから現在のような惑星系が誕生したと考えられている。

 PDS70は地球から370光年の距離にあり、太陽と比べて直径も質量も小さい。このような恒星の原始惑星系円盤に大きな隙間が発見されたのは初めての事例であり、この隙間は、複数の惑星が存在することを示唆する証拠であると考えられてきた。

 2018年7月にこの恒星系で最初の惑星PDS70bがヨーロッパの研究グループにより撮影され、それに次ぐ2番目の惑星PDS70cがつい最近、米国メリーランド州ボルチモアにある宇宙望遠鏡科学研究所で発見された。先に発見されたPDS70bは木星の4倍から17倍の質量がある巨大惑星で、PDS70cは大きく見積もっても木星の10倍程度の質量であると考えられている。

 また驚くことにこれら2つの巨大惑星は、軌道共鳴関係にあることも判明している。軌道共鳴とは、2つの惑星同士で周期的に互いに重力を及ぼしあうことで、結果的にそれらの公転周期に整数倍の関係を持つようになったことを指すが、恒星PDS70の周りを惑星PDS70bが2周する間に、もうひとつの惑星PDS70cが1周するという不思議な関係が成り立っている。

 2012年に予言されていた若い恒星PDS70の周りにある惑星の存在が、この1、2年で相次いで証明されたわけだが、2012年に観測されていた原始惑星系円盤の中にある大きな隙間が、この2つの巨大惑星によって大量の物質が吸い寄せられることによって形成されたということも、これで証明されたわけである。

 今回の発見は地球に比較的近い場所に、太陽によく似た大きさの若い恒星が存在していたことが幸いしたわけだが、かつての太陽系で起こった惑星系誕生の謎に迫るものになるかもしれない。

 銀河系には、太陽によく似た恒星が約3,500個存在すると言われているが、銀河系全体には1,000億個から4,000億個の恒星が存在することを考えれば、その数は非常に少ない。その意味で、今回のような発見につながったPDS70が地球に近い場所に存在していたことは、人類にとってこの上ない幸運であったと言えるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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