現在の技術では火星に移住することは不可能?
2018年8月21日 21:36
映画やアニメなどで、火星などの地球外の惑星で地球と同じような生活をするシーンを観た経験があるだろう。SFの世界で描かれる火星への移住という夢を打ち砕く研究が、Nature Astronomy誌にて発表された。
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論文の執筆者は、コロラド大学ボルダー校のブルース・ジェイコスキー教授と、北アリゾナ大学のクリストファー・エドワーズ助教授。とくにジェイコスキー教授は、火星に関する宇宙科学者のなかでも、権威ともいうべき存在だ。「MAVEN」と呼ばれる、米国航空宇宙局(NASA)が主導する火星の大気を調査するプロジェクトにも参加している。
火星で宇宙服を着ることなく生活するためには、「テラフォーミング」と呼ばれる、惑星の環境を変化させ、人類が生活できるように星を改造する行為が必要となる。火星がテラフォーミング可能かどうかは、宇宙物理学者にとって長年の研究課題である。ジェイコスキー教授らの研究は、このテラフォーミングに関するものだ。
SFでも語られるテラフォーミングについては、20世紀の著名な天文学者であるカール・セーガンによって1961年に提唱された。その後もテラフォーミングの研究は盛んで、テスラのCEOであり民間宇宙ベンチャー「スペースX」の創業者イーロン・マスク氏も、火星への移住構想に熱を入れる。
火星のテラフォーミングを可能にするには、大気の条件が重要になる。火星の大気はほとんどが二酸化炭素から成り立つが、その層が薄く冷たすぎるために液体の水を火星上で保てない。テラフォーミングを可能にするには、二酸化炭素による温室効果ガスを利用して、大気の層を厚くし、温かくする必要がある。
ジェイコスキー教授らによって、テラフォーミングを可能にする2種類のアプローチが検討された。1つは先述のように、人類が呼吸可能なように火星の大気を人工的に作り出すというもの。もう1つは、人類が歩行できるまで火星の大気圧を上げるシナリオだ。
どちらのシナリオでも、大量の二酸化炭素が必要だ。ところが火星の大気中に含まれる二酸化炭素が少なすぎるために、火星の圧力はせいぜい15ミリバールまでしか上げられないという。地球の海面での平均気圧である1000ミリバールには遠く及ばない。つまり現在の技術では火星のテラフォーミングは無理というのが、ジェイコスキー教授らの結論だ。
イーロン・マスク氏が率いるスペースXは2022年に、火星への飛行を開始するという。ジェイコスキー教授らの研究成果が、イーロン・マスク氏の計画をとん挫させるだろうか。「ごめんよ、イーロン!」と米国天文雑誌のAstronomy誌は、今回の報告を受けて茶目っ気たっぷりに記事を締めくくっている。
研究の詳細は、7月30日に発行されたNature Astronomy誌にて掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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