野生の馬はすでに絶滅していたことがDNA分析で判明

2018年2月25日 21:31

 野生の馬は、すでに地球上から絶滅していたことが、DNA分析の結果、判明した。

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 その論文が掲載されたのはアメリカの科学誌Science(サイエンス)。論文によれば、野生種と考えられていたPrzewalski(プルツワルスキー)「和名: 蒙古野馬(モウコノウマ)」は、実際は所有者の元から逃げ出した、家畜馬の子孫だという。

 今から約5,500年前、北カザフスタンで馬を食料としていた狩猟民族と、すでに牧畜を行っていたボタイに住む人たちによって、野生の馬を家畜化したと考えられていた。

 それはボタイ遺跡で発見された陶器に、馬肉の脂肪と牛の乳脂肪が遺っているのを発見したからである。つまり、ボタイに住む人たちは、馬の肉を食べ、牛の乳を得るために雌牛を捕獲していたことを示唆している。

 また、ボタイの人たちが馬に乗っていたことを示す証拠も見つかっていた。

 そこで国際研究チームは、ボタイ遺跡で発見されたボタイ馬20頭と、ユーラシア大陸全域に生息する22頭の全てのゲノム(遺伝情報)を解析した。

 そして、すでに解析されている古代馬18頭と現生馬28頭のゲノムの情報の比較を行った。

 そこで明らかになったのが、プルツワルスキー馬には、ボタイ馬と遺伝子的な繋がりがあることである。それはつまり、プルツワルスキー馬はボタイ馬の子孫であり、野生馬ではなく、家畜馬の子孫であったということである。

 この事実から、野生馬は現存しておらず、すでに地球からは絶命していたということも判明した。

 国際自然保護連合(IUCN)はプルツワルスキー馬を絶滅が危惧される生物種と認定し、保護していた。一度1900年代に野生個体の絶滅と判断されたが、各国の繁殖計画などによって、個体数は回復傾向にあった。

 今回の発見は、それらの活動にも少なからず影響が出るかもしれないものである。しかし、今回の研究結果により、もう一つ明らかになったことがある。

 それは他の馬のゲノムの中には、ボタイ馬のゲノムとは別の先祖との繋がりを示す馬も存在したのである。

 これは現代の家畜馬全てがボタイ馬の子孫ではあるものの、ボタイ馬が家畜馬の先祖ではないことを示しており、ボタイ馬を家畜馬の祖先としていた事実が覆されたことになる。

 今回の調査においてゲノム分析を行ったフランス国立科学研究センター(CNRS)の科学者、ルドビク・オルランド氏は「現代の家畜馬の起源は別のところで探さなければならない」と述べている。(記事:和田光生・記事一覧を見る

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