東大・京大など、インフルエンザウイルスの遺伝システムを解明

2018年1月8日 11:47

 ウイルスも遺伝子を持っている。インフルエンザウイルスの遺伝情報は、8本のRNAからなる。それがどのようにウイルス間で遺伝するかという問題を、東京大学、京都大学などの共同研究グループが明らかにした。

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 ウイルスというのは、まず生物なのか。それとも生物ではない何者かなのか。諸説あって定かではないので、ここではそのような疑問があるということを示すに留めておく。生物と類似した特徴としては、ウイルスは遺伝情報を持っている。ただし、その他の生命体がRNAとDNAを持っているのに対し、ウイルスは、これらのうちいずれか片方しか持っていない。RNAだけを持つウイルスはRNAに、DNAだけを持つウイルスはDNAに遺伝情報を持つ。インフルエンザウイルスは前者である。

 ウイルスも繁殖する性質は生命と同じである。その性質を後の世代に伝える必要がある。インフルエンザウイルスが8本のRNAを持ち、その中にゲノムを持つことは分かっていたが、それをどう子孫に伝えているのかについてはよく分かっていなかった。

 今回の研究には、次世代シークエンス解析と呼ばれるゲノムの分析法と、電子顕微鏡による観察が用いられた。通常の子孫ウイルスの粒子には、8本のRNAが「1本と7本」という配置を取っていることが分かった。そして、ウイルス以外のRNA、つまりそのウイルスが感染しているウイルスのRNAは取り込んでいないことが分かった。

 さらに、リバースジェネティクス法と呼ばれるウイルスの合成技法を用いて、7本しかRNAを持たないウイルスを作成しこれを増殖させたところ、予測に反し、その子孫は8本のRNAを持つということが分かった。この8本目の細胞は、感染対象のリボソームRNAを奪って得たものであった。

 以上のことから、ウイルスの遺伝にあたってはRNAを1:7の状態にするプロセスが大きな意味を持つらしい、ということが分かったのである。

 なお、研究の詳細は、Nature Communicationsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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