東北大・九州大、鉄分が不足すると貧血が起こる理由の一部を解明

2017年3月8日 08:58

 東北大学、九州大学などの研究グループは、鉄分の不足が貧血を引き起こすメカニズムの一端を解明した、と発表した。

 鉄分が生命維持に不可欠な栄養素である、ということは広く一般に知られた事実であろう。人体において、鉄分の70%は、ヘモグロビンという鉄を含むタンパク質の生成に活用される。ヘモグロビンは、赤血球上にあり、血流によって全身を循環している。

 たとえば、長期間に渡り鉄分が少ないか、あるいはまったく含まない食事を続けた場合、人は鉄分の欠乏から、貧血に陥る。一般的には、鉄分を追加的に経口摂取することで、貧血は回復する。

 ただし、実はこれが全てではない。鉄分をいくら経口摂取しても貧血が治らない人間も存在する。奇病というか、特異体質というか、これは「鉄剤不応性鉄欠乏貧血」と呼ばれている。

 また、もう一つの問題がある。鉄分という栄養素は、重要ではあるが、そう多量に食品の中に含まれているわけではない。赤血球細胞は毎日何百億という数が体内で生産されていて、それらは基本的に鉄分を含んでいるわけだが、活用される鉄分の多くの部分は、体内でリサイクルされたものである。

 従って、血液の状態で体外に流れ出た鉄分を再獲得するのは容易ではない。外傷などによって大量の出血が生じた場合、輸血という手段が必要となるのはそのためだ。また、生理機能の関係上、貧血患者が男性よりも女性に多いこともこれに由来する。

 さて、では今回の研究について述べよう。今回の研究で分かった重要な点は、「体内の鉄分が不足すると、赤血球の数や、その含有鉄分量が減るだけではなく、赤血球の産出プロセスの段階において、遺伝子複写に大きな変動がある」、ということである。

 実は、赤血球を作る際には「ヘム」と「グロビン」という2つの物質の量的バランスが重要で、これがうまく調整されないと、「体内に毒素が発生する」という致命的な事態を招くらしい。鉄分が体内に不足している状態では、ヘムとグロビンのバランス調節が難しくなるのだが、このバランス調整のために、鉄分不足時、遺伝子複写のパターンが変更されるのではないか?という仮説が立てられている。

 この機能についてさらに詳細に調べることで、人体における鉄分の働きについてさらに詳しい事実を明らかにすることができると共に、鉄剤不応性鉄欠乏貧血の治療法の確立にもつながるのではないか、というのが今後の展望である。

 なお、本研究の成果は、haematologica(ヘマトロジカ)誌のオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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