ウコンの主成分「クルクミン」には薬効がないとする研究、米ミネソタ大学

2017年1月31日 11:57

 米ミネソタ大学の研究チームが、香辛料のウコン(ターメリック)の主成分であるポリフェノール化合物・クルクミンについて、「体内に吸収されない為、薬効は生じえない」とする研究をまとめた。

 これは驚くべき事実である。ウコンの薬効は色々と言われているが、中でも最も有名なのは「肝臓の機能を高める」というものだ。つまり、酒を飲むとき、アルコールの分解を助けることが期待できるというわけである。ウコンを配合した栄養ドリンクはよくあり、たいがいどこのコンビニでも見ることができる。

 それが、研究によれば、「その主要な薬効成分と考えられてきたクルクミンに関していえば、その作用はプラセボ効果に過ぎなかった」というのだ。

 基礎的な知識ではあるが、プラセボ効果とは何か、一応ご説明しよう。「これは薬だ」といって、砂糖の塊でも塩の塊でも何でもいいのだが薬っぽく見えるものを飲ませると、何も飲ませない場合に比べて、病気の治りなどが早い、という性質を人間は持つ(どこの国の誰であろうと共通してこういう性質を持っている)。これがプラセボ効果である。

 だが、特定の薬効を謳って流通している薬がプラセボでは困るので、薬剤の開発をするときは、「薬を飲んだ人と何も飲まなかった人」ではなく、「薬に見えるが薬ではないものを飲んだ人と、薬を飲んだ人」で比較する。さらに、どれが本物の薬であるかは、治験の場に臨む研究者にさえ明かされない。これを、専門用語で二重盲検法(ダブルブラインドテスト)という。

 さて。クルクミンの薬効について、これまで多くの誤解があったのはなぜか。実は、クルクミンには、「タンパク質に対して、実際には何の作用もしていないが、化学的研究の上では何か影響を与えているような観測データを生み出す、特殊な性質」があったのだという。これが、今まで我々がクルクミンに騙されてきた真の要因であるらしい。

 研究の詳細は医学誌「Journal of Medicinal Chemistry」オンライン版に掲載されているので、興味のある方はそちらをご参照されたい。ちなみに、この研究には「今後の展望」のようなものはまったくない。「クルクミンをこれ以上研究することは無意味であり、科学予算の無駄であるから、一切これに関する研究を放棄すべし」というのが研究グループの主張するところだ。

 だがしかし、クルクミンはどうあれ、ウコンには他にも、重要な役割がある。色付けである。ウコンは黄色い。カレーもたいてい黄色い。そしてそれはおおむねウコンの色によるものである。また、ウコンを入れて黄色く炊き上げる、ターメリックライスというものもある。サフランライスも黄色いが、ターメリックライスの方が安いという大きな強みがある。

 また、ウコン全般についてもう一つ指摘しなければならない点がある。ウコンはクルクミンだけでできているわけではない。他にも、有効成分として指摘されている成分が複数種類存在する。ミネソタ大学の研究チームは、それを踏まえ、「ウコンそのものに何らかの薬理作用がある可能性については、これを否定するものではない」としている。


※なお、本記事は、1月31日掲載の記事に関しまして、原論文内容の精査に若干の不備があったことを認め、これを修正の上再掲するものです。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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