NYの視点:“Xデー”がドルのリスク
2013年9月11日 07:02
*07:02JST NYの視点:“Xデー”がドルのリスク
夏季休暇を終え、米国議会が再開した。今後、米国財務省が資金が枯渇するとしている10月18日に向けて、財政問題が再び表面化する可能性がある。米国の債務は5月19日にすでに上限に達した。これを受けて、米国財務省は異例措置となる政府の緊急借用権を行使し、政府の運営に関わる資金を調達。とりあえずどうにかやりくりしている。
さらに、米国が資金が完全に枯渇する時期を先送りできた理由として、ブッシュ減税の一環となっていた給与税優遇措置が本年から解除されたため税収が増加したこと、最近の住宅市場の改善に伴いファニーメイやフレディマックといった住宅金融公庫などを含む政府支援機関(Government sponsored enterprise(GSE))からの資金の流入が拡大したことが挙げられる。しかし、こういった資金も急速に使い尽くされており、8月31日時点でこの異例な措置において可能な資金は1080億ドルに過ぎないという。
超党派グループが発表した最新レポートによると、米国財務省の資金が完全に枯渇する時期“Xデー”は早くて10月18日、遅くて11月5日。再開したばかりの議会では今のところ、債務上限の引き上げに関する協議はゼロに近い。ルー米財務長官によると、オバマ米大統領は債務の上限問題に絡んだ交渉はしないと強い方針を示している。一方、共和党は債務上限問題にからめて歳出削減交渉を進めたい意向を示し、政府機関の閉鎖もやむを得ないと考えていることを明らかにした。交渉が暗礁に乗り上げる可能性も除外できない。
Xデーにおけるシナリオとしては優先順位を決めて支払いをしていくことが考えられる。しかし、政府関連の雇用や建設に携わる雇用への給与支払いが数週間滞ることになると、経済に悪影響を与えることは間違いない。ただ、最も警戒されるのはテクニカルデフォルトだ。議会では今後数週間、シリアが優先議題になる可能性がある。しかし、5週間という短いタイムラインの中で議会の対応が遅れることは米国の信頼失墜にもつながり、格下げへの懸念も再燃する可能性がある。ガイトナー米財務長官は2011年に議会に宛てた書簡の中で、支払いの優先順位を決めることは極端で非常に無責任な展開だと強く訴えている。
9月末から10月にかけて米国の財政問題や政府閉鎖の脅威が膨らむと、米連邦準備制度理事会(FRB)による資産購入縮小観測を材料に債券利回り動向に伴い上昇してきたドルが伸び悩む可能性がある。《KO》