ブランド見聞録:ブランドはマーケットを勝ち抜く経営ツールです:第8回(番外編)ターゲットとしての若者vs.中高年

2012年2月14日 14:55

 最近、トヨタと富士重工が共同で開発したスポーツカーに関する記事をよく目にする。運転の楽しさを訴求して若者の車場離れを食い止めたいということらしいが、本当に効果があるのだろうか…。

 しばらく体調を崩したこともあってコラムをお休みしていましたが、また今月から復帰いたしますので、宜しくお願いいたします。復帰一回目のコラムはブランド見聞録・番外編として、最近マーケットで気になっていることに関して書かせていただきます。

■今の若者は車に運転する楽しさを求めるのか?
 2000年初頭から若者の車離れが進んでいる。そういえば私の周りを見ても、確かに車を持っていない若い世代の方が増えているように思う。

 若者が車に乗らなくなった理由として考えられるのは、●若者層の所得の低下や雇用不安●趣味の多様化●車以外の交通網の発達●レンタカーやカーシェアリングなどの普及●少子化による若年層マーケットの縮小…などでしょう。つまり若者にとって“車が買えない”、さらに“車を買う必要がない”という状況であるということだ。

 このような状況で、トヨタと富士重工が「TOYOTA 86(ハチロク)」「SUBARU BRZ」をそれぞれ3月末から順次マーケットに導入する。価格も200万円台で若者が手の届くように設定したというが、私は若者ではなく、中高年に売れると予想をしている。そして、その息子が乗ったり、数年後にその車が中古市場に出てきた時に、ようやく若者が手に入れたりできるのではないだろうか。本当は最初からそのような戦略を描いているなら納得がいくのですが(笑)。

■若者ではなく、中高年が若かった頃の夢をかなえる!
 200万円台といっても若者にはまだまだ高いし、そもそも今の若者は車の運転が楽しいものだとは知らないではないか。彼らにとって車はエコで、安全で、便利な移動手段の一つであれば良いのだから。

 その一方で、スーパーカーブームなどを経験した中高年にとっては、車は実用性もさることながら、ある意味でステータスであり、そして、多くの方がいつかは自分も“カッコイイ”車に乗りたいと密かに思っていたはず。「500万を超えるスポーツカーは難しいが、この価格ならいける!」やはりこの車に真っ先に飛びつくのは、少し経済的に余裕が出て、長年の夢をかなえたい中高年に間違いないだろう。中高年がスポーツカーに乗っているのは、それはそれで“カッコイイ”ものだ。

 昨年末からトヨタが今回販売する車を後押しするかのように「FUN TO DRIVE, AGAIN」という企業広告キャンペーンをはじめた。これも車の楽しさを再発見しようということだが、多くの若者は“?”と感じ、多くの中高年は“懐かしい”と感じていると推測される。このブランド・マーケティング活動の真のターゲットはいったい誰なのか?若者世代と中高年世代では想像以上に価値観や生き方が異なっていることを再認識しなければならないだろう。

■あなたの会社はターゲットを上手く絞り込めているか?
 同じようなことは中小企業のブランドコンサルティングでもよくある。ブランド戦略を決める際、クライアントはどうしても欲張ってターゲット層を広くしようとすることが多い。そのとき決まって口から出る言葉は「一回使ってもらえば、当社の製品の良さは分かってもらえる」だ。

 しかし、競争が激しいマーケットおいて、その一回使わせることが難しいということを理解してほしい。それ故に自社の製品の特長を客観的に捉え、ターゲットを絞り込み、そのターゲットにリーチする明確なメッセージを発信し、戦略的にブランド構築を進めなければならない。

 さて、もう一つの関心事は「TOYOTA 86(ハチロク)」「SUBARU BRZ」のどちらのブランドが支持されるかということだ。私は「SUBARU BRZ」の方が人気になるのではと考えている。販売台数では多くの広告宣伝費が使え、強い販売網を持つトヨタにはかなわないが、富士重工の方が予想販売台数を上回る率は高くなるように思う。

 それは心臓部であるエンジン部分を富士重工が担当し、この価格帯の走りを重視したスポーティな車において、現時点ではTOYOTAよりSUBARUのブランドイメージの方が良いと感じるからだ。

■今回のコラムの答えは数か月後のお楽しみ!
 いずれにしろ数か月後には答えが出る。私の予想が当たっていることを祈りながら、その頃にまたこの話題には触れようと思う。予想が外れても私は坊主にはなりませんが(笑)。

 次回のコラムからは、中小企業がブランド構築していく上でポイントになることを、順次コンサルタントとしての経験を交えながら述べていく予定です。また番外編として今回のようなマーケットで話題になっていることにも不定期ですが触れていきます。

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