ブランド見聞録:ブランドはマーケットを勝ち抜く経営ツールです:第7回 技術をブランド化する(3)

2011年9月20日 21:56

 「当社は競合他社に比べ、Bに対しても、Cに対してもブランドの認知率が低く、本来なら企業全体のブランディングから検討するべきなのですが、上層部や他部署との意見調整に手間取りそうで、とりあえず技術ブランディングから始めることは可能ですか?」

■技術ブランディングが実行できない理由
 冒頭に紹介した質問は、私のセミナーに参加された大手自動車部品メーカーの知財部の方からのもので、“技術ブランディング”を実施していく上での問題点を如実に語っています。

 “技術ブランディング”を実施するには、最低でも企業の知財管理部門と、広報・宣伝やマーケティング部門の連携が必要で、企業全体のブランド戦略との整合性を図ることが不可欠です。しかし、その連携ができている企業は少ないでしょう。

 多くの企業で、ブランディングは、広報・宣伝部やマーケティング部の仕事。知財部は特許や実用新案、商標の管理が仕事という具合に分けられています。企業の縦割り組織から生じるセクショナリズムが“技術ブランディング”の実行を困難にしているのです。

 さらに、個人的な意見を述べさせていただくと、知財部は企業経営にとって重要な技術やノウハウを管理しているにも関わらず、現実的には経営の中枢からは遠い存在になっている気がしてなりません。

■乗り越えなくてはならないセクショナリズムの壁
 つい最近の出来事です。中堅の電子部品メーカーの知財部の方から、“技術ブランディング”を実施したという連絡があり、現状および認識されている課題を聞くために、お伺いいたしました。その際に、次回は広報・宣伝を担当している経営企画部の方も同席させるので、ブランド戦略コンサルタントとしての所見を聞かせて欲しいということになったのですが…。

 そして2回目の訪問時、両部門の連携は大丈夫なのかという、私の不安は見事に的中してしまいました。ご要望に応じてまとめてきたコンサルティング所見を述べると、経営企画部の方は「そんなことは言われなくても認識している」「コンサルタントは欠点しか指摘しない」と、いきなり戦闘モードです。最後には「昨年から、広告代理店と相談してWebを中心にブランディングは進めている」と怒り出してしまいました。その怒りは、私だけでなく、知財部の方にも向けられていたようです。

 残念ながら、私がその企業のWebを拝見する限り、先進的な言葉が数多く並べられ、きれいで見やすいのですが、“ブランドとしての独自のメッセージ”は伝わってきませでした。敢えて嫌な言い方をすれば、企業名が変わっても、何ら違和感を抱かないだろうWebの仕様と表現です。おそらく企業としてのブランド戦略自体が明確化されていないのでしょう。

■技術ブランディングの進め方
 通常は以下のような手順で“技術ブランディング”は行いますが、企業の状況やブランディングの目的によって実施内容や手順は異なってきます。

 例えば、前述したように企業としてのブランド戦略が曖昧な場合には、まずそれを明確にしないといけません。ブランド戦略を無視して、技術ブランドの戦略だけを策定しても、どこかで辻褄が合わなくなってしまうからです。

 また、弊社が“技術ブランディング”を担当する時には、可能な限り部署を横断したブランドチームを結成していただき、そこにブランディングに関するノウハウが蓄積されるようにしています。中小企業の場合にはマネジメントクラスの方にも入ってもらいます。

 その理由は、社内の様々な考えや意見を交わすことができ、それぞれが戦略策定への参加意識を持ち、部署間のセクショナリズムを和らげ、策定した戦略を導入する際もスムーズに行えるからです。

 今回で“技術をブランド化する”に関するコラムは終了です。ご質問は弊社Webの問合せメールからお願いいたします。次回は、最近のブランディングの成功例について述べる予定です。

関連記事

最新記事